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  商人と商行為について
  消費者契約法に基づく取消、特定商取引法のクーリング・オフ、割賦販売法の支払い停止の抗弁は、
消費者保護を目的とする規定である為、消費者と事業者間の契約(消費者契約)に限って適用されます。 

  個人が事業(営業)として又事業(営業)の為に取引する場合や商人の商行為にも適用されません。
では、個人が事業者とされる場合、個人が商人とされる場合とは一体どんな場合なのでしょうか。  

以下では、商人とは何か、商行為とは何かについて商法や会社法から整理して見ました。
     
参考 →商事売買と買主の検査・通知義務        ブログ 法は自ら助くる者を守る

< 商人について >     
  商法第4条では、次のAとBの2つを商人と定義しています。

A 商人とは →「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」をいう(商法第4条1項)。
    ※ 商行為の概念を基礎とする商人で、本条の商行為とは絶対的商行為と
      営業的商行為を差します。


   「業とする」 → 営利の目的で同種の行為を、継続的・計画的に行うこと。
   「自己の名をもって」 → 自己が権利義務の帰属主体になること。

   なお、営利の目的の有無は、客観的に社会的観念から決められるべきとされ、
     医者、弁護士、芸術家などは、営利の目的はないとされ、商人とはされません。


  ※ 信用保証協会、信用金庫、信用組合、住宅金融支援機構、年金福祉協会は
     商法上の商人に当たりませんので、個人と取引しても商行為となりません。    
      ただし、事業者と取引した場合は「当事者の一方のために商行為となる行為」
     ですから、商法第3条により商行為となります。

      
 イ 法人は、対外的活動が営利性を有する場合 
 商人となります。

    公益法人も付随的事業に営利性がある場合には、その限りで商人となり得ます。
    営利事業を営んでいる公法人・公団・営団も商人です。

 ロ
会社(外国会社を含む)は、自己の名をもって商行為をすることを業とする者として商人
   該当 します。

    なぜなら、会社がその事業としてする行為及びその事業の為にする行為は商行為

    とされているので
(会社法第5条)、

    会社は自己の名をもって商行為を
することを業とする者として商法上の商人に該当

    (商法第4条1項)、その行為はその事業のためにするものと推定されるからです。
     (商法503条2項、同項にいう「営業」は、会社については「事業」と同義と解される
)
                              
   
   
   会社の行為は商行為と推定され、これを争う者において当該行為が当該会社の事業
     のためにするものでないこと、すなわち
当該会社の事業と無関係であることの主張立証
     責任を負う
と解するのが相当である」 
         (最高裁平成20年2月22日判決)。
→ 判決全文 

     
※  この最高裁判決は、会社法で会社が商人であると明記されていない為、
       解釈により会社は商人であるとあらためて判示したのである。


 B 以下の2つは商行為を行うことを業としない者であっても 商人とみなす(商法第4条2項) 
     ※ 商行為の概念を基礎としない商人なので、擬制商人といいます。

  1 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者
     ※ 農家が店舗で自家農産品を販売すれば →商人となります。
     
※ ネットショップで物品の通信販売業を行う者も →商人となります。
    
 ※ 農作物の無人販売店→店舗に該当するかは事実認定の問題

  2 鉱業を営む者
     ※  なお、会社法の成立により旧商法第33条〜第500条は、削除されました。
        民事会社(旧商法52条2項、商行為を目的としない営利行為を行う会社)の規定が
        削除されたに伴い、旧商法第4条2項3号も削除されています。

                        
<商行為について>                
 商法では商行為の類型として次の3つを規定しています。
  ※ 絶対的商行為と営業的商行為は、以下の行為のみに限定する趣旨とされます。

T絶対的商行為
(商法501条)

   1回の取引でも商行為と扱われます。   
 取引自体に営利性が現れているので、事業を営んでいる者か否か反復継続するか否かを
 問わず
1回の取引でも次の行為類型に該当する行為を行えば商行為となります。
   
※ 消費者でも貴金属や絵画や株式などを値上がりを期待して購入する
     (有償取得が要件)と  → 投機購買(絶対的商行為)に該当します。


  ・投機購買とその実行行為(1号) 
     →物を仕入れて高く売り差額を利得するいわゆる売買取引です。  
      動産、不動産、有価証券に限定されます。
      (例) 小売業、卸売業、製造業者の原料買入・製造加工・製品販売

  ・投機売却とその実行行為(2号)
     ※  1号と2号を投機売買といい、有償取得が要件である。
  ・取引所においてする取引 →証券取引法、商品取引法に規定あり。
  ・手形その他の商業証券に関する行為→ 証券上に署名することで権利を発生・移転させる行為。
  ・担保附社債信託法の規定する商行為
 U営業的商行為(商法502条)

    次の行為類型に該当する行為(企業としての性質を持つもの)を営業として、つまり営利の目的で
  反復・継続してなされた時に初めて商行為
となります。
    ※ 「反復・継続」 → 反復・継続して行う意図で行為すれば、最初の行為から商行為となります。

    ただし
専ら賃金を得る目的をもって物を製造し又は労務に服する者の行為は、
  商行為には該当しません(商法第502条但書)。

   
 ※  個人が生計維持のために行うものであって企業化されたものとはいえないものについては、
      商法の適用を排除したのです。

    (例) 精米業→ 主として自己の労力を用い、機械器具は自己の労力を補助する程度に
             過ぎない時は、もっぱら賃金を得る目的と認められ商行為にはならない(判例)。


  ・投機貸借とその実行行為・・・・貸家営業、貸衣装、貸自動車など、目的物は動産と不動産のみ。
  ・他人の為の製造加工・・・・注文者から製造加工を有償で引受ける行為です。   注文者が材料を
                   負担するか、又はその費用を負担します。
    
<例> 機械その他の注文生産、染色業、クリーニング業、和洋服仕立業、種々の修繕業。
    ※ 相当の資本を投じ主として機械力を利用する設備経営の下に精米を請負う場合 
               → 加工業として商行為になる (大審院昭和18・7・12判決)

  ・電気・ガスの供給・・・・自己が産出する石炭、石油、ガスを使用して製造した場合
  ・運送・・・・船舶、鉄道、自動車、航空機など、旅客と貨物の両方を含む。
  ・作業・労務の請負・・・・
作業の請負は、土木建築業者、建設業者、造船業者が行う場合です。
    ※  なお、労働者供給事業は禁止されているので、労務の請負は厚生労働大臣の
       許可を得た人材派遣業業者に限られます。

  ・出版・印刷・撮影
  ・客の来集を目的とする場屋(じょうおく)の取引
    旅館、飲食業、美容院、浴場、劇場、料理店、エステ店など
 
    公衆の来集に適する物的・人的設備を有するサービス業の多くが該当する。

    
なお、理髪業は、客との間に請負又は労務に関する契約があるに留まり、施設の
      利用を目的とする契約がないとして場屋の取引ではない(大審院昭和12・11・26判決)。
  ・両替その他の銀行取引・・・・受信・与信の両方を伴う銀行など。 
   ※ 質屋営業は該当せず(判例)。
   
※ 貸金業の届出が受理された者がなす場合でも、金融行為自体は商行為ではない
                                
  (最高裁昭和30・9・27判決)
  ・保険・・・・営利保険に限ります。 相互会社による保険は含まない。
  ・寄託の引受・・・・倉庫業者
  ・仲立・取次・・・・代理商(媒介代理商)、仲立業、取次業
  ・商行為の代理の引受・・・代理商(締約代理商)
  ・信託法・無尽業法の規定する商行為


 V 附属的商行為(商法503条)

   商人がその営業活動に利用する為に行う行為
   → ですから、その前提として事業主体が商人と認定される必要があります。
  ・商人がその営業の為にする行為は、商行為とする(商法503条1項)。
  ・商人が行った行為は、営業の為にするものと推定する(商法503条2項)。
                                ↓
     よって、商人の行為の商行為性を否定しようとする者が立証責任を負います。
    (例) 小売店が電話回線を増設する契約を結ぶ、喫茶店がエアコンを設置する等。

   ※ なお個人の金融業者の貸付行為については 
       → 金融業者であるというだけでは商人であるとはいえず、その貸付行為を
         商行為と推定すべき根拠はない(最高裁昭和44・5・2判決)。

<一方的商行為の場合でも双方に商法が適用されます>

 
当事者の一方にとってのみ商行為である行為を一方的商行為といいますが、この場合でも
双方に商法が適用されます(商法第3条1項)。
   
例えば、銀行から消費者がローンを借りる場合などです。  ローン契約は商行為となり

ローン債権には商事時効の5年が適用されます。

<開業準備行為でも附属的商行為になることがあります>

 
イ 商人資格の取得時期はいつか
     商法の定める一定種類の営業(商法第4条1項、商法501条、商法502条)又は
   一定形式の営業(商法第4条2項)を開始した時に商人資格を取得するとされます。


   「特定の営業を開始する目的でその準備行為をした者は、その行為により営業を
    開始する意思を実現
したものであって、これにより商人たる資格を取得するので
    あるから、その準備行為もまた商人がその営業の為にする行為として商行為と
    なる」 (最高裁昭和33年6月19日判決)。


 ロ 営業の開始は開業準備行為で足りるか

     開業準備行為も営業そのものに属する行為であるから、附属的商行為として営業の
   開始となる(通説)。

 ハ どの程度で営業の開始(商人資格の取得)があったとされるのか
     開業準備行為自体の性質から営業意思の存在を客観的に認識されうることが必要で
   あるが、取引の相手方が開業準備行為であることを知悉している場合には商行為性が
   認められる(判例)。

   「 その準備行為は相手方はもとよりそれ以外の者にも客観的に開業準備行為と認められ
    るのであることを要する
と解すべきところ、単に金銭を借入れるごとき行為は、特段の事情
    のない限り、その外形からはその行為がいかなる目的でなされるものであることを知ること
    が出来ないから、その行為者の主観的目的のみによって直ちにこれを開業準備行為であ
    るとすることは出来ない。 

      尤も、その場合においても、
取引の相手方がこの事情を知悉している場合には開業準備
    行為としてこれに商行為性を認めるのが相当
である」 (最高裁昭和47年2月24日判決)。   

     つまり、営業開始前であったも商人資格を取得したとされれば開業準備行為は附属的商行為
    となります。
          ↓
   (例)   料理店の開業前に締結した店に設置する冷凍庫のリース契約は、リース会社が料理店
      の開業準備行為であると知悉していた場合なら附属的商行為となります。

                              

さて、特定商取引法、消費者契約法、割賦販売法は消費者保護を目的としている法律ですので
 購入者が「営業のため若しくは営業として」行う契約には適用されません。  
 除外規定が適用される場合又は適用されない場合を以下に整理しました。

(1)特定商取引法第26条第1項(適用除外規定)

  訪問販売、通信販売、電話勧誘販売に関し、事業者が「営業の為に若しくは営業として
  締結する取引」
には → クーリング・オフを始め全ての規定が適用除外。

   ※  事業者が営業活動に関連して行う取引については、私的自治又は業界の商慣習
     に委ねるのが相当として適用除外としたのです。


   ※ 営業の為にする取引に該当する為には、その前提として事業主体が商人
     (商行為を営む者)と
認定される必要があります。
    (例) 個人飲食店が製氷機のリース契約を締結したリース契約は、「営業の為に締結
       する取引」に該当します。

   
  逆に事業者がする取引でも、営業の為に若しくは営業として締結する取引」ではないと
   される場合は、クーリングオフが可能となります。

                            ↓   
  例1 商人が貴金属や会員権の利殖商法を行った場合
      → 営業の為に締結する取引ではないので、クーリング・オフが可能です。
        ※ 1988年の改正で「商行為」から「営業の為に若しくは営業として」とされたのは、
          利殖商法を消費者保護の適用範囲に含める為です。


   例2 自宅で理髪店を営む者が多機能電話機のリース契約をした場合
       →  理髪店の屋号が契約書に記載されてあっても、業務用に利用されることが殆どなく

        自宅用
のものであると認められる時は、「営業の為にする取引」に当たらない
                     
(越谷簡裁平成8年1月22判決)。

   例3  自動車の販売・修理の会社が訪問販売業者と締結した消火器剤充填整備、点検作業
     等の実施契約は、消火器を営業の対象とする会社ではないので
営業の為若しくは
     営業として締結したものではない
(大阪高裁平成15年7月30日判決)。 判決全文
       → 申込者が会社であってもクーリングオフが可能です。   
 

 
個人事業者の取引でも消費者救済の観点から行政指導や法令により「営業の為又は
   営業として」ではないとされる場合があります。


  ・開業前に商人資格を取得していない消費者や商人とみなされる者でも店舗等により
  物品販売を業としていない者が自動販売機を購入する場合

    → 最初の1台目の購入に限りクーリング・オフが適用される
(昭和54・5・29 通産省通達)。
   ・連鎖販売取引の場合 店舗等によらないで行う個人はクーリング・オフ可能。
  ・
業務提供誘引販売取引事業所等によらないで行う個人はクーリング・オフ可能。

  ※  パソコン、軽貨物自動車、ステンドグラス製造機、などを購入して行う場合であっても、
    委託業務を行う為の補助的機材として利用する場合は、個人的労務の補助手段として
    利用するに過ぎないので、事業所等に類する施設とはいえない。

                         
  営利的取引と本法の適用についてのまとめ

  ・  形式的に営利を目的として反復継続する取引に当るように見えても、商法502条但書に
   照らして個人的労務の範囲内の業務又は本人が使用する程度の小規模の機材を購入して
   行う取引は、「営業として締結する取引」には該当しないと解すべきである。 

  ・  契約締結以前に当該取引に関し商人資格を取得していない場合、その開業準備行為は、
   「営業の為に締結する取引」には該当しないとすべきである。

     
 例  クリーニング店を営む者が自動販売機を購入する場合など
       
 (2)消費者契約法第2条第1項

  個人が事業として又は事業の為に契約の当事者になる場合には
   
 →その個人は消費者ではなく「事業者」とされますから、法人と取引すれば消費者
      契約法の適用がありません。
     ※ 法人その他の団体は当事者となる全ての契約において「事業者」とされます。

  「事業」 → 一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行のことです。
          ※ 営利の要素は必要でなく、営利の目的も問われません。

  「事業として」 →  社会通念上それが事業の遂行とみられる程度の社会的地位を
              有するかどうかによって決定するほかはないとされます。
              フリーライターのような専門的職業も含まれる場合があります。
                            ↓
    
ただし、個人的労務の範囲内の業務又は本人が使用する程度の小規模の機材を購入
    して行う取引は、「事業として契約の当事者になる場合」には該当しないと解すべきである。 

(3)割賦販売法第35条の3の60第2項1号(適用除外規定)

  
  クレジット契約が「営業の為に若しくは営業としての取引に当たる場合には割賦販売法
  の適用が除外される為、支払い停止の抗弁が出来なくなります。


   経済産業省が「営業の為に若しくは営業として」についての公権的解釈を公表して
  います。  
  公権的解釈
 
  それに拠れば、「営業の為に若しくは営業として」の要件として、「営利の目的」と
  「事業性」の二つが必要です。

   
 「営利の目的」 →儲ける目的(利益をあげる目的)
    
「事業性」  →反復・継続して行う意思をもって(事業の一環として)行うこと

                              
最新更新日令和5年5月23日

 ★ 販売業者やクレジット会社から、商行為だからとか事業者間契約だからとクーリング・オフの
    適用や支払い停止の抗弁を拒否されるケースが増えています。

           
  権利行使は、内容証明郵便で  

      
 自分は商人なのか、自分の行為は商行為なのか、よく分らない方は
       
是非当事務所までご相談下さい。
            当事務所まで是非ご相談下さい。      
 
  
               
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