インターネット行政書士のフロンティア戦略  第97号   
                 平成24年6月15日発行 
     
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                 今回の目次
           □ 信用情報の登録期間について
               ☆ ブラックは何時まで登録されるのか
               ☆ ブラック以外の信用情報とは
               ☆ 支払い停止の抗弁と「異動」登録


      
     
☆ ブラックは何時まで登録されるのか

  平成21年12月1日施行の改正割賦販売法では、過剰与信の防止及び過量販売の防止
の見地からクレジット会社に対し指定信用情報機関を利用して顧客の支払能力を調査す
る義務を明文化し(割販法35条の3の3第3項)、支払能力を超える与信契約の締結を禁止
しています(割販法35条の3の4)。

  指定信用情報機関に加盟したクレジット会社等はクレジット契約等に係る個人情報を
指定信用情報機関に提供することになりますが、その情報は一体どれくらいの期間に
わたって登録されるのかというのが今日のテーマです。

A まず、指定信用情報機関にはどのようなものがあるのか。 
  代表的なものに以下の3つがあります。    
          
 イ 株式会社シー・アイ・シー( CIC ) ・・・・・・・・・クレジット会社系が加盟
 ロ 株式会社日本信用情報機構( JICC )・・・・・・消費者金融会社系が加盟                      
 ハ 全国銀行個人信用情報センター( KSC )・・・・銀行系が加盟


B  そもそもブラックとは何か。
                                
  ブラックという名称は俗称です。   指定信用情報機関が保有する登録情報の中で
ブラックに相当する情報は、事故情報(CICでは「異動」、JICCでは「延滞」と云う)
と呼ばれるもので、CRINで相互交流される情報のことを差します。

 事故情報には次のようなものがあります。
  1 長期にわたる支払の遅れ(通常は3ヶ月以上支払がないこと
)
     ※ 入金により延滞が解消された場合であっても、「延滞」の登録は直ちに消えません。
  2 任意整理(弁護士仲介の和解)、民事再生
    なお、破産開始・免責決定の登録はKSCのみである。
  
C 事故情報は何時まで登録されるのか。

 <CICの場合>
  
「異動」は契約期間中及び残債務がなくなってから5年間抹消されません。
 
 支払の遅れが入金などで解消されても、「異動」は以後5年間抹消されません。
   
※ なお、補足内容の欄に「解消」と表記されます。
   
※ 延滞に至らない「遅延」の登録は、解消から2年で抹消されます。
  時効援用により債権が消滅した場合でも、「異動」は5年間抹消されません

 
<JICCの場合>
  
「延滞」は支払の遅れが継続する期間載せます。   
  支払の遅れが入金で解消されると、「延滞」は1年間載せた後に抹消されます。   

  時効援用により債権が消滅すると、「延滞」は直ちに末梢されます


 
< KSCの場合>
   延滞情報は延滞開始から5年間載せてから抹消されます。
   不渡情報を5年を超えない期間、破産・民事再生手続開始決定等を
   10年を超えない期間載せてから抹消されます。


  
従来、CIC もJICCも事故情報は5年間登録すると抹消されていました。
 しかし、改正割賦販売法の施行後からはCICの登録期間がそれよりずっと長くなり、
 その間はカードの使用停止と新規クレジットの与信禁止を覚悟しなければなりませ
 んので、クレジットの契約にはくれぐれも慎重を期すことが求められています。
  
 

 
    ☆ ブラック以外の信用情報とは


  ブラック以外の登録情報としては以下のものがあります。

  ・支払い継続中の契約の内容、 支払を完済した場合のその事実
  ・保証会社等による代位弁済の事実、 債権譲渡の事実
  ・加盟会社から情報の照会があった事実
  ・本人が登録を申告したコメントの内容 (例 〇〇株式会社と協議中、 運転免許証を紛失、
     自分の衝動買いを防止したい、 自分の名義が他人に冒用される恐れがある )
  ・貸金業協会から登録を依頼された情報 (例 貸付自粛 )

   加盟会社は新規の申込み時やカード更新時に指定信用情報機関に照会して、事故情報
  の有無を確認することになっています。    
   その照会記録も登録されますが、6ヶ月経過後に抹消されます。
  この照会記録が一時的に何社も登録されていたりすると、加盟会社によってはカードを発行
  してくれないことがあります。
  

      ☆ 支払い停止の抗弁と「異動」登録

  支払い停止の抗弁を内容証明郵便で通知してクレジットの支払いを停止したのに、クレジット
会社が6ヶ月位後にCICに「異動」の登録をしていたというケースが最近起こっています。
  販売店 サンテックス株式会社(平成23年2月倒産)、 商品 グリーストラップ浄化装置   
  クレジット会社  オリコ、セディナ、ファインクレジット
             参考グリーストラップとグリーストラップ浄化装置の関係

  このケースは、販売店の倒産によりメンテが債務不履行となったことが、「営業の為若しくは
営業として」の契約でないので支払い停止の抗弁事由になると購入者が主張したのに対し、
クレジット会社は商行為になるので割賦販売法の適用がないと主張して、見解が対立したまま
平行線を辿っている場合なのですが、

  ブラックにしてしまうのは筋違いも甚だしいことであって、指定信用情報機関制度の悪用、又は
クレジット会社による権限濫用以外の何ものでもありません。   
ここまで発展して来たクレジットシステムを破壊する自殺行為と云っていいもので、
クレジット会社のこのなりふり構わないやり方の裏には客を脅かして一括で払わせようという魂胆
があるとしか思えないのです。

 各クレジット会社の「個人情報の取扱いに関する条項」では、「申込者は、支払い停止の抗弁の
申出を行った場合、その情報が個人信用情報機関にその抗弁に関する調査期間中登録され、
個人信用情報機関の会員に提供されることに同意します」と記載されております。

 この条項の趣旨は、和解などにより解決するまで「支払い停止の抗弁の申出」として登録
するが、延滞としては登録しないということだと考えます。

 しかし、上記クレジット会社は申込者と一度も和解交渉することなく、ただ「商行為になる」と
主張して督促を続けた後に「異動」登録を行っており、この条項に違反したことをしているのです。
 
  支払い停止の抗弁を行使した客はこれまで延滞をしたことのない優良顧客であり、支払能力
がないのではありません。  
しかし、CICの登録情報では「異動」とただ記載されるので、自己破産などで支払能力がなくなって
支払が遅れた人との区別が付かないのです。

  その結果、この客から新規申込みを受けたクレジット会社の審査担当者がCICに照会して「異動」
登録を見て支払能力のない客だと誤認して不決裁にしてしまうということが現に起こっているのです。

  平成21年12月1日の改正割賦販売法で指定信用情報機関制度を創設した趣旨は、過剰与信・
過量販売の防止を図る為にクレジット会社に指定信用情報機関を利用して支払能力を調査させる
為でした。

  しかし、その一方でクレジット会社がこの制度を悪用して優良顧客の利用を過剰に制限したり、
又は債権回収の為の手段とされる危険があるということです。

  支払い停止の抗弁の行使があったというだけで「異動」というのは、規約違反であり、
他人の権利を侵害する不法行為です。

経済産業省による行政指導を望むところです。



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