エッセー集
 パートV            題目  トップ
                       < 情報は力なり!  >


    肩こりを癒す酢

  日本人は何かと料理に酢を使う民族です。 誕生日にはちらし寿司が、花見や運動会には
のり巻きやいなりというのが、子供の頃からの定番でした。 少し変わった行事がある日とか
祝い事がある日には、大抵酢を使った料理が出たのです。 日本人にとって空気のようにあっ
て当たり前の食材が酢なのです。
 さて、酢は酒を酢酸菌で発酵させて作ります。 放置した酒が自然に酢に変っていることはあ
る訳ですから、人類との付き合いは当然古いのです。 紀元前5000年頃のバビロニアに既にあ
ったいう記録があり、古代ギリシャのヒポクラテスは病人に酢卵を飲ませたという話が伝わって
います。  日本には3世紀の応神天皇の頃に中国から移入されました。

 こんなに歴史の古い酢ですが、優れて健康にいい食材であることが科学的に究明されたのは
近年のことです。
  ドイツのクレプス博士は、クエン酸サイクルの理論(発見は1937年)でノーベル生理学・医学
賞(1953年)を受賞していますが、クエン酸サイクルとはクエン酸が8種類の酸に化学変化しながら
エネルギーを生み出しつつまたクエン酸に戻ってくるというサイクルをいいます。
 人が食べ物を摂取すると糖分や脂肪分が体内で燃焼して炭酸ガスと水とピルビン酸になります
が、クエン酸サイクルはクエン酸がこのピルビン酸と反応することで起こります。 そして、酢は
体内でほとんどがクエン酸に変化するのです。 
  クエン酸サイクルが円滑に機能しないとピルビン酸から乳酸という疲労物質が出来ます。
乳酸が筋肉の周辺に溜まってくると、肩こりを起し血液が酸性になるのです。 酢を摂取すると
クエン酸が乳酸を分解してくれクエン酸サイクルが正常に機能し始めるという訳です。
酢には体調維持の特効薬のような効能があるのです。

 その他では、血圧上昇の抑制、動脈硬化の予防、体の酸性化防止、カルシウムの吸収促進
など効果があるとされます。
 ところで、サーカスの団員は酢を飲んで体を柔らかくしているという逸話がありますが、酢に
体を柔らかくする効能はありません。 筋肉の凝りを改善する効果があるだけです。
 欧米では今日本の寿司がブームです。 酢という食材を使った寿司という料理が、クエン酸
サイクル理論と二人三脚となって世界を席巻しそうな予感がして来ます。
                                            



                        2008.5.16