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エッセー集 パートⅡ
<縮こまるな、大いなる志を抱いて道を拓け!>
クレジットカードの不正使用からガードする判例理論
キャバクラぼったくり店からの過大請求に対しては、これまで警察が被害届を受理してくれなかったり、
クレジット会社が支払停止の抗弁に応じてくれないなど被害者救済に弱い面がありました。
しかし、東京地裁平成27年8月10日判決は、クレジットカード規約の解釈により会員本人の免責を導き
出すという真に画期的な判決であり、クレジット会社に対し支払停止の抗弁を主張する際に大いに利用さ
れ得る判例理論と考えられます。
本事案は、顧客が精算時にクレジットカードを渡した後で代金が100万円であると知り、話し合って5万
円で合意し現金で支払って店を出たが、従業員は既にクレジットカードで決済しており、後になってクレジ
ット会社から78万円の請求が来たというものです。
同判決では、クレジットカード規約にある「盗難、詐取、横領又は紛失に係るクレジットカードが第三者に
より不正使用された場合、・・・・・・一定の要件の下で会員の損害をクレジットカード会社が補填する」という
規定に関し、ここに列挙された事由は例示的なものであって、それ以外の態様により会員の正当な意
思によることなく占有が移転されるなどしたクレジットカードが不正使用された場合についても当該規
定が適用されるとします。
そして、顧客が請求額を78万円と認識せずにクレジットカードを交付したことは、顧客の正当な意思によら
ない占有移転であり、従業員が78万円の利用があったとしてクレジット決済したことは不正使用にあたるか
ら、上記規定の適用があり会員の立替金の支払いは免責されると判示しました。
本判決の伏線としては、長崎地裁佐世保支部平成20年4月24日判決があります。
本事案は息子が無断で父のクレジットカードの識別情報を利用してネットでクレジットカード決済したという
もので、決済時に本人の暗証番号が要求されていなかったケースです。
判決では暗証番号の入力を必要とするなど会員以外の者による不正利用を排除するシステムの構築が
求められていたのに、それをしなかったクレジット会社には帰責性があるとし、重過失のない会員に責任が
ないとしました。
詳細 →第三者の不正使用とカード規約の解釈に基づく免責
本判例理論により支払停止の抗弁をクレジット会社に主張する場合、警察が被害届を受理したかは問わ
れないことになります。
また、ピザ、マスターカード、JCBなどの国際ブランドの場合、販売店に不正があった場合に立替金を加盟
店から取り戻すチャージバック制度があり、クレジット会社が一方的に不利になる訳ではありません。
2016.7.29記
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