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連帯保証人は時効の利益を放棄した後に主債務の時効援用が出来るか。
中小事業者が銀行から融資を受ける場合、会社が借主で代表取締役が連帯保証人
となるのが通常です。 会社が破綻して代表取締役も夜逃げをして5年が経てば
主債務と連帯保証債務に消滅時効が完成します。
しかし、時効制度が必ずしも周知されていないこともあって、時効援用すれば解決
するのに債権者から請求された連帯保証人が「支払う」と云ってしまうことがあります。
これを「時効の利益の放棄」と云いますが、この場合であってもまだ連帯保証人は主債
務の時効を援用出来るというのが判例です(平成5年10月4日東京高裁判決)。
判決→全文
それまでは、「時効完成後に弁済した債務者は、信義則上時効を援用することが出
来ない」とする判例があるだけでした(最高裁昭和41年大法廷判決)。
この判例の趣旨は、債権者は債務者が消滅時効を援用しないから払ったものと信じた
のに、それを後になって撤回することは信義誠実の原則に反する」というものです。
しかし、上記東京高裁判決では、主債務の時効完成後に承認をした連帯保証人が
主債務の時効援用が出来るどうかはそれと別の問題だとしたのです。
つまり、主債務者は時効援用すれば債務を免れますが、援用は相対的効力しかなく、
債権者は連帯保証人に請求出来ます。 しかし、連帯保証人は弁済しても主債務者に
求償がもはや出来ません。
そこで、保証債務は主債務が消滅した場合これに付従して消滅する性質の債務である
ことから、連帯保証人は主債務の消滅時効を援用して債務の履行を免れることが出来る
とするのが相当であるとしたのがこの判例なのです。
ところで、主債務の消滅時効の完成後に連帯保証人を被告とする提訴があり欠席した為
敗訴判決が確定した場合、連帯保証人はなおも主債務の時効を援用出来るのでしょうか。
この場合も連帯保証人が時効の利益を放棄したのと同じと考えて連帯保証債務の存在
は確定されますが、時効の利益の放棄は相対的効力しかなく、債務者が被告とされていな
い以上主債務の存在が確定される訳ではありません。
判例にも、「 主債務者が時効利益を放棄していても、保証人は主債務の時効を援用して
自己の保証債務の消滅を主張することが出来る (大審院昭和7年6月21日判決)というの
があります。
結局、債務の承認又は時効の利益の放棄が相対的効力しか持たないことから、この
ような結論になって当然なのです。
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