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みなし弁済規定を空文化した最高裁判決
消費者金融会社の無担保融資貸出残高は平成17年3月末で15兆5000億円あり、その内、グレーゾーン金利に
よる貸出残高は12兆円で全体の76%(件数では80%)に当っていました(金融庁の資料より)。
消費者金融大手4社は平成18年の最高裁判決(グレーゾーン金利を原則無効とした)を受けて平成19年3月期決
算で膨大な過払金引当金を計上し合計で1兆7000億円という巨額の赤字を発生させています。 消費者金融会
社の収益は殆どグレーゾーン金利依存の構造になっていたのですから、このような事態は想定の範囲内と云えます。
平成19年4月〜平成20年1月に掛けては金利を年18%に引下げており、今は全ての消費者金融会社が過払金返
還請求の嵐に見舞われています。
このような事態を齎した最大の要因こそ平成18年の最高裁判決だったのです。 最高裁平成18年1月13日シ
ティズ事件判決は「利息制限法の上限を超える利息を強制を受けて支払った場合、債務者の自由な意思により支
払ったとは云えず、みなし弁済規定の適用要件に欠ける」と判示したのです。
もう少し噛砕いて説明しますと、消費者金融会社は当時横並びで27%超の約定利息を取っていました。 融資
額が50万円なら利息制限法の上限金利は18%ですから9%の部分は無効の筈ですが、業者は貸金業規制法第43条
1項のみなし弁済規定を盾に9%部分を任意の弁済として有効だと主張していたのです。
しかし、最高裁はこのみなし弁済を全否定したのです。 判決理由ではこう云っています。
イ 約定利息の支払いを怠ると期限の利益を当然に喪失するとする特約条項がある。
↓
ロ それがある為、支払義務を負わない制限超過部分の利息の支払いを事実上強制することになる。
↓
ハ このような特約の下で債務者が利息制限法の上限を超える利息を支払っても債務者の自由な意思により支払
ったとは云えない。
これにより、貸金業規制法第43条1項の「みなし弁済規定」は空文化されたとされます。 どういうことかと云い
ますと、債務者の支払いというのは殆どがATM又は銀行振込を利用しています。 ATM又は銀行振込の場合、債
務者が弁済をすると利息制限法の上限を超える利息が自動的に利息に充当される仕組みになっていました。
このような天引による利息支払いがみなし弁済にならないという判決は2年前に出ていました(最高裁平成16年2月20
日第二小法廷判決)。
最高裁平成18年1月13日シティズ事件判決は、期限の利益喪失特約の存在を理由に特段の事情がない限り債務
者の自由な意思による弁済ではないとすることで完全に止めを刺したのです。
ところで、特段の事情とはどのような事情なのでしょうか。
債務者が制限超過部分の利息を利息の支払いに充当させるという認識を持って窓口に持参し支払ったという場合が
考えられますが、そんな債務者は殆どいません。
ATM又は銀行振込による通常の弁済がみなし弁済にならず、期限の利益喪失特約の故に自由な意思による弁済
ではないとされれば、利息に充当された制限超過部分の利息は不当利得となり返還義務を負うことになります。
つまり消費者金融業者は制限超過部分の利息を取れなくなったのです。
消費者金融大手は改正貸金業法の施行を待たずに平成19年4月〜平成20年1月に掛けて金利を年18%まで引下げて
おり、これが「みなし弁済規定」の空文化を何よりも物語っています。
2011.2.4記作成 2016.7.18一部改訂
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