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                悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法

  「営業の為に若しくは営業として」に関する大阪高裁判決
            
 旧訪問販売法では、「商行為となるものに係る販売」の場合にクーリング・オフの
適用を除外するとしていました。   それが特定商取引法に引継がれた際に「商
行為となるものに係る販売」は、「営業のために若しくは営業として締結するものに
係る販売」に文言が修正されました(施行は平成13年6月1日です)。
 このように文言が修正された背景には、貴金属や会員権などの利殖商法被害が
商人に多発して社会問題となり、商人であっても本業と関連性のない利殖商法なら
クーリング・オフにより保護されて然るべきと考えられたからです。 
 つまり、商人が貴金属や会員権を営業の対象としていない限り、その利殖に係る
契約を締結しても営業のため若しくは営業として締結したとは云えないとしてクーリン
グ・オフの適用が認められることになった訳です。

 ところが、今でも申込者が法人や個人事業者であると、もうそれだけで販売業者や
クレジット会社・リース会社から「商行為になるからクーリング・オフが出来ない」と主
張されるケースが圧倒的に多いのです。
 しかし、それを一刀両断にする高裁判決がここにあります。
「 各種自動車の販売・修理及びそれに付随するサービス等を業とする会社であって、
消火器を営業の対象とする会社ではないから、消火器薬剤充填整備、点検作
業等の
実施契約が営業のために若しくは営業として締結されたということはで
きない
」(大阪高裁平成15年7月30日判決)。     判決全文
     
 つまり、購入者の本来の営業活動と現実的な関連性がある契約であることが、
営業のために若しくは営業として締結する取引の要件であると解釈されたのです。

 この判例に従うと、例えばラーメン屋がSEO対策用ソフトを購入してもソフトを営業の
対象としていないい以上、商行為にはならないことになります。

 実は今、全国で訪問販売のホームページ制作会社によるソフトのリース提携商法
被害が多発しています。   ホームページが未完成の内に販売会社が倒産した、その
他販売店に債務不履行があるのに、リース会社からは対抗出来ないと云われてリース
料の請求に晒されています。
 しかし、このリース提携商法ではリース契約締結時に大きな問題があるのです。  
リース契約に関する商談が全くないままホームページ作成契約に関する長々とした話
が終わった頃を見計らって、顧客管理情報ソフトとかアクセス解析ソフトなどをを勝手に
リース物件に選定してリース会社から電話でインストールしましたかと聞かれたらハイと
答えて下さい」などと云います。 
 実際にソフトが渡されるのはリース会社の電話から暫く経った後です。  客は希望も
していないし使い道もよく分からないこのソフトのリース契約をホームページの作成契約
と一体的な契約なのだと錯覚させられて締結しているのです。
 販売店はリース契約がホームページ作成契約とは別個の契約であることや瑕疵担保
責任免責条項や中途解約禁止条項など申込者に不利な特約があることを一切隠して
いるのです。 
 これは限りなく詐欺に近い商法というべきものです。

 さて、先の高裁判例を応用してクーリング・オフが出来るでしょうか。
1 リース契約を訪問販売の形で締結している →特定商取引法が適用されます。
2 販売店はリース会社との業務提携関係により、リース契約の一部を代行している 
 →リース会社に表見責任が成立する(長崎簡易裁判所 平成17年12月27日判決)
3 顧客管理情報ソフトとかアクセス解析ソフトなどのソフトを営業の対象としていない
  → 営業のため若しくは営業として締結したとは云えない(商行為ではない)
4 リース契約書にクーリング・オフ解除の規定が記載されていない
  →いつでもクーリング・オフが可能

 これらが揃えば、申込者がソフトを営業の対象としていない限り、クーリング・オフが
適用されることになると考えられます。
 さらに、営業のため若しくは営業として締結したとは云えない(商行為ではない)と
いうことになれば、リース契約は消費者契約ということになり、消費者契約法による
取消も可能になります。
 販売店はリース会社から消費者契約締結の媒介(勧誘することを含む)を委託された
第三者・代理人(受託者等)に当りますから、販売店の不実の告知などを理由に取消す
ことが出来るのです。
 (消費者契約法第5条)
 クレジット契約では既に同法第5条の適用が行政解釈で認められています。
リース契約が消費者契約というのは違和感があるかもしれませんが、これはリース会社
に洗脳させられていた結果に過ぎません。   これほどに大きな影響力を持った大阪
高裁判決をなぜ今まで知らなかったのかと思うところです。
 
                行政書士田中 明事務所