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                   内容証明郵便でブレイク !     行政書士田中 明事務所

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                悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法


      商行為に翻弄される消費者

  クレジット会社から商行為を理由に支払い停止の抗弁を拒否されることがあります。  
最近では、オリコが新風舎との自費出版契約を商行為(商業出版)だとして支払い停止の
抗弁を拒否しています。 
  新風舎との共同出版だから商業出版として商行為になるというのが、オリコの理屈なの
ですが、これは考えれば考える程妙な理屈です。 そもそも共同出版というのは何を意味
するのでしょうか。
  要するに、出版費用を折半する形態らしいのですが、出版契約書にそれらしい記載は
ありませんし、実際に新風舎が費用を負担しているところが見られないらしいのです。
結局、共同出版とは名ばかりで、実質は出版費用の全額を著作者が負担する自費出版
形式なのです。
                         
  また、仮に出版費用の折半が本当だとした場合、それで著作者の出版契約が商行為に
なるのでしょうか。 商法第502条には、出版が営業的商行為として列挙されています。
ですから、著作者の契約が「出版」に該当すること、つまり出版事業を営利の目的で反復
継続して行うことが必要なのです。
  思いますに、出版とは複製し頒布する行為であり、新聞社や出版社の事業は問題なく
それに該当します。 しかし、著作者が出版契約を締結する行為は、複製と頒布の権利を
出版社に許諾したに過ぎず、これだけで出版を業として行ったことにはならない筈です。
  著作者が出版を事業化して自分の本を反復継続的に出版するということなら、商行為と
なると思います。 しかし、共同出版といっても、単に出版費用を負担するだけであって
出版事業そのものに関わってはいないのです。 
  著作者が出版社の取締役とか経営を担う地位に就いて客観的に「出版」を業としている
場合でないと、共同出版は営業的商行為とは云えないと私は考えるのです。
                        
  次に、商業出版という言葉は、自費出版と対比して使われる言葉ですが、商業出版で
あれば商行為になるという理屈もおかしいのです。 商業出版とはプロの作家などの本を
出版する場合をいいますが、要するに出版費用を出版社が負担し、本の売上げから印税
を作家に支払うというものです。
  では、作家が出版社と締結する出版契約が営業的商行為になるのでしょうか。
作家は出版事業そのものに加担していませんし、自分の本の出版と販売を出版社に委託
しているに過ぎません。 やはり、作家の出版契約も営業的商行為とするのは無理のよう
です。
                         ж

 次に 医師、弁護士、芸術家は営利の目的がないとして商法上の商人ではないとされます。 
商人の典型である会社が営業に使用する為自動車を購入すれば附属的商行為になります
が、非商人の場合には附属的商行為が成立する余地はありません。
  しかし、絶対的商行為が成立することはあります。 例えば、貴金属や絵画や株式を値上
がりを期待して購入する場合です。 また、営業的商行為についても、営利性のある事業を
企業化して行えば成立します。
                       
  さて、作家ですが、流行作家ともなれば印税収入は相当なものです。 
印税というのは、本の売上に比例しますから、売れれば売れるほど増えることになります。
  しかし、作家が最初から売れるような作品を書くというその創作行為は、投機購買には
ならないでしょうし、出版という事業とも違います。 結局、作家を商人とするのは難しいと思い
ます。
  ただ、事業者と見なされる余地はあります。 作家は原稿を書くという同種の行為を反復
継続して遂行しているからです。 ですから、例えば、仕事場とする為にマンションを購入する
契約は営業の為にしたとされクーリング・オフは出来ないことになるでしょう。
  また、流行作家ともなれば、助手なども雇用して生計を維持する為の労務の範囲とは云え
ないでしょうから、消費者契約法の事業者に当たることになると思われます。
                        



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