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                   内容証明郵便でブレイク !     行政書士田中 明事務所

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                悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法


      ネットショップと開業準備行為

 インターネツトで商品を購入することの抵抗感は近年殆ど払拭されています。
今ではドロップシッピングという在庫の要らない販売形態のネットショプを簡単に持てることも
あって、専業主婦でサイドビジネスとしてネットショプを開業する人が増えています。
 さて、ネットショップもれっきとした店舗であり、通信販売を行えば商人と見なされます。
ですから、専業主婦であっても開業後は特定商取引法の保護が受けられません。
ここに法の隙間がある為、悪徳業者が目を付けない訳がありません。
 商人資格を取得するのは、営業を開始する意思が実現された時とされます。
それは自分ひとりで営業を開始する意思を実現したと思っただけでは足りず、第三者が
見て客観的に営業を開始する意思が実現されていると分かる時でなければなりません。
                       
 では、ネットショップの場合、何時から商人資格を取得するのでしょうか。
といいますのは、ネットショプの場合、サイトの立上げ→検索エンジンへの登録→SEO対策
→上位表示という手順を踏まない限りインターネットから顧客がアクセスして来ることはない
からです。
 ですから、サイトを公開しただけではまだ不特定多数の人がアクセス出来ない状態なの
ですから、客観的に営業を開始する意思が実現されたとはまだ云えないと思うのです。
 サイトの立上げから3ヶ月位経過して、検索エンジンにキーワードを入力して上位表示
を達成した時に誰でもサイトを見れる状態になる訳ですから、商人資格を取得するのも
その時からだと考えるのが自然ではないでしょうか・・・・・。

 なお、営業を開始する意思が実現された時とされるには具体的にどういうことがあれば
いいのかについての判例がない為、法の隙間となっているのも事実です。
                       ж

 次に、サイトが上位表示される前はまだ開業準備段階だとしても、開業準備行為は営業
を開始する意思を実現したものと考えるのが判例の立場ですから、商品を仕入れる契約は
開業準備行為としての商行為になる場合があります。
 ですから、サイトを立ち上げたばかりの時にSEO対策のサービス提供契約を締結すること
も商行為とされる危険があります。
 これについては、次の最高裁判例が参考になります。

「 その準備行為は
相手方はもとよりそれ以外の者にも客観的に開業準備行為と
 
認められるのであることを要すると解すべきところ、単に金銭を借入れるごとき行為
 は、特段の事情のない限り、その外形からはその行為がいかなる目的でなされるもの
 であることを知ることが出来ないから、その行為者の主観的目的のみによって直ちにこ
 れを開業準備行為であるとすることは出来ない。  尤も、その場合においても、

 取引の相手方がこの事情を知悉している場合には開業準備行為してこれに
 商行為性を認めるのが相当である
」 (最高裁昭和47年2月24日判決)。 
        
         
 つまり、SEO対策のサービス提供契約を締結する行為が開業準備行為であるという事情
を相手方が知悉している場合には商行為を主張されて、専業主婦が電話勧誘販売で契約
していたとしてもクーリング・オフは出来ないことになってしまう可能性があるということです。 
                          ж

 特定商取引法は消費者保護の為の特別法ですから、商人や個人事業者は適用除外
されています(特定商取引法第26条第1項)。 
 なぜ「商行為」でなく「営業の為もしくは営業として」という文言になっているのでしょうか。
1988年の改正で「商行為」が「営業の為もしくは営業として」に改訂されたのですが、当時、
利殖商法による被害が事業者の間に多発していて、これら事業者を消費者として救済する
要請があったからとされています。
 つまり、事業者がした契約でも本業と無関係な契約の場合、「営業の為もしくは営業として」
契約したのでないことを立証すれば、事業者であっても消費者として特定商取引法の保護
対象になることを明確にする為であったのです。
                        
 逆に、消費者がした契約のつもりでも「営業の為もしくは営業として」契約したとされる場合
があります。  例えば専業主婦が店舗を構えて連鎖販売取引をする場合や業務提供誘引
販売の契約に基づき事務所で内職をする場合とか、ネットショップのサイトを実質オープンして
いない個人が開業資金として銀行から融資を受ける場合などです。
 つまり、これらの個人は営業開始の意思が第三者にも客観的に分るような形で外に現れ
ていることから、もはや商人資格を取得して事業者と扱われるべき存在だということです。
                        



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