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内容証明郵便でブレイク ! 行政書士田中 明事務所
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悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法
競売と時効中断の関係
時効中断の効力は原則として相対的効力しかありません(民法148条)。
例外として、連帯保証人がいる場合には、連帯保証人に裁判上の請求をすると
主債務の時効を中断することになります。
では、物上保証人に対し競売がなされた場合、主債務の時効は中断するのでしょうか。
民法第155条に拠れば、主債務者に通知した後でないと時効中断の効力は生じないと
しています。
この「通知した後でないと・・・・」の意味については、「執行裁判所が競売開始決定をした
上、同決定正本を債務者に送達した場合には、時効の利益を受けるべき債務者に差押
えの通知がされたものとして、民法第155条により債務者に対して消滅時効の効力を生じる」
としています(最高裁昭和50年11月21日判決)。
なお、時効中断の効力がいつ発生するかについては、「主債務の消滅時効の中断は、
民法第155条により競売開始決定正本が債務者に送達された時に生じる」とされます
(最高裁平成8年7月12日判決)
また、競売開始決定正本を債務者に送達されても、民法153条の催告としての効力が生ず
るものではないとしています(最高裁平成8年9月27日判決)。
→つまり、競売開始決定正本の送達から6ヶ月以内に債務者に訴訟を提起しても、時効中断の効力
が生じる時は訴状を裁判所に提出した時であり、競売開始決定正本の送達時ではありません。
そして、「競売が取り下げられた時は、差押えが権利者の請求によって取消された時
(民法第154条)に準じ、時効中断の効力は初めから生じなかったことになると解するの
が相当である」としています(最高裁平成11年9月9日判決)。
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では、債権者が連帯保証人の不動産の競売を申立た後、信用保証協会が代位弁済
(平成9年12月25日)して債権届出書を競売裁判所に提出し、競売は平成11年9月29日の
配当期日に終了したが、信用保証協会は平成16年9月9日になって連帯保証人に対して
提訴したという場合、 連帯保証人は代位弁済日から5年経過しているとして時効援用で
きるでしょうか。
最高裁は求償権の消滅時効は配当日から改めて進行を開始したというべきであるとし、
提訴の時点で消滅時効はいまだ完成していないとしました。
「競売開始決定正本が主債務者に送達された後に、主債務者から保証の委託を受けていた
保証人が代位弁済した上、債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記
を受け、差押債権者の承継を裁判所に申し出た場合、上記承継の申出について主債務
者に対し民法第155条所定の通知がされなくても、保証人が主債務者に対して取得する求
償権の消滅時効は、上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至る
まで中断すると解するのが相当である」(最高裁平成18年11月14日判決)。
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参考までに民法第147条の時効中断事由について、具体的に整理して見ました。
( )内は時効中断の効力が発生する時点です。
1請求
・裁判上の請求(訴状を裁判所に提出した時、応訴の場合は →権利を主張した時)
・支払督促(債務者から異議の申出があった場合 →支払督促の申立時)
・和解・調停の申立(不調の場合に1ヶ月以内に訴を提起すると →申立時)
・破産開始決定の申立(債務者又は債権者が申立書を裁判所に提出した時)、
・破産手続参加(債権届出書を提出した時)
・内容証明郵便による催告( 6ヶ月以内に裁判上の請求その他上記の申立を
した場合 →内容証明郵便の送達時)
2差押・仮差押・仮処分
・執行官が差押に着手した時 →時効中断の効力が生じます。
・動産執行は申立した時に →時効中断の効力が生じます(最判昭和59年4月24日)。
→ 差押えるべき動産がない場合でも時効は中断する。
→ しかし、債務者が所在不明で執行不能の場合は着手したとは言えず
時効の中断は生じない(大判明治42年4月30日)
・抵当権実行としての競売申立(競売不動産を差押した時、
ただし、物上保証人に対する競売申立は→債務者に正本が送達された時)
3承認
支払猶予の懇請、手形書換の承諾、利息の支払、一部弁済、反対債権による相殺
行政書士田中 明事務所