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                   内容証明郵便でブレイク !     行政書士田中 明事務所

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                悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法


      悪用されるクイック・リース
             
  リースという新しい契約形式がアメリカから日本の風土に移植されて46年になります。
日本では未だにリース契約を規制する法律が整備されていません。
  その為、中小零細事業者をターゲットにする悪徳リース提携販売業者が妖怪のように
闊歩して、リース契約の知識に乏しいユーザーを食い物にしています。                       
  リース契約には、ユーザーの選んだリース物件をリース会社が販売店から買ってそれを
ユーザーに貸すという賃貸借契約に似た外形がありますが、実質はファイナンスだとされ
ます。  つまり、ユーザーはリース会社からリース物件の購入資金を融資されている
のだとされます。  
 その結果、リース会社は瑕疵担保責任を免責され、ユーザーが中途解約する場合には
残 リース料全額の支払義務を負うなど、リース会社に有利な契約内容になっています。
 ユーザーは騙されていてもリース物件に瑕疵があってもリース料全額を泣く泣く払わざる
を得ず、丁度支払い停止の抗弁が創設される以前のクレジット契約と同じ悲惨な状況が、
リース契約のユーザーにはまだ見られるのです。
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  目敏い悪徳販売業者によりこのリース契約が目を付けられています。
販売業者はリース会社と提携関係を結んで、リース契約書を持参して営業に歩きます。
販売業者がリース物件の納入からリース契約書の作成代行までやって、リース会社は
ユーザーに納入と意思を確認するだけです。 これをクイック・リースといいます。 
                       
  このクイック・リースは本来クレジット契約を結ぶべきものにまで広がっています。
例えばホームページ作成とプログラムソフトのクイックリースがそうです。 ホームページ
作成という役務はリースに出来ないので、ソフトだけを契約書に記載して月額25000円の
60回払いというリース契約にしています。 
  契約後、ホームページの作成とかSEO対策の方は全くサポートがなく、ソフト自体も150
万円の価値は到底ないということになって、騙されていたことに気付かされるのです。
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 IP電話機のクイック・リースでトラブルが急増したのは、5年前のことです。
さすがにこの時は経済産業省も動いて個人・家庭用に限り、ユーザーにクーリングオフを
認める通達を出しました。
  長いことユーザー敗訴の厳しい判決を出し続けていた裁判所も、販売業者とリース会社
の一体性を重く見て、長崎簡裁平成17年12月2日判決のようにリース会社に表見責任を
認めたものが現れました。
  そして、法務省もやっと重い腰を上げて、100年振りの民法大改正に乗り出しました。
ファイナンスリースを典型契約として規定する条文を新設するようです。
しかし、自由放任だったクイック・リースがどの様に規制されるかは、まだ不透明です。
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 民法の大改正までは、騙されてもユーザーはじっと耐えるしかないのでしようか。
しかし、リース契約の形態としては、ファイナンスリースが予定していないリース提携販売
が殆どで、中でも手続きを簡略化したクイック・リースが主流になっています。
 近年、クイック・リースにファイナンスリースと同じ法理論を当て嵌めるのは無理と認識
されて来たのか、クイック・リースのユーザーに有利な判決や通達が発せられるようにな
りました。 
 それらを抜粋して以下に載せます。

1 長崎簡裁平成17年12月27日判決
  <IP電話機のリース提携販売で販売店に詐欺があったケース>
  「リース会社が販売店に契約締結の代理権を授権していなくても表見代理が成立し、
 リース会社が販売店の詐欺を知らなくても契約者は詐欺に基づく取消をリース会社に
 対抗出来る」

2 名古屋高裁平成19年11月19日判決
  通信機器のリース提携販売でリース会社は消費者契約法上の事業者とみなせる
 
と判断し、消費者によるリース契約の取消を認めた。
          
3 平成19年4月12日の特定商取引法の施行についての通達
  リース提携販売のように「契約を締結し物品や役務を提供する者」と「訪問して契約の
 締結について勧誘する者」など一定の仕組みの上での複数の者による勧誘・販売等
 であるが、総合して見れば一つの訪問販売を形成していると認められるような場合
 には、これらの複数の者はいずれも訪問販売業者等に該当する。

4 盛岡地裁遠野支部昭和63年5月18日判決
 <節電効果がない節電器のリース提携販売のケース>
  「重大な瑕疵についてまでリース会社が免責特約を主張するのは、信義則に反し許され
 ないというべきであり、ユーザーは賃貸借に準じて右瑕疵が補修されるまでリース料の
 支払いを拒み得るものと解するのが相当である」

5 福岡高裁平成4年1月21日判決
 <警備機器のリース提携販売、リース料に警備料が含まれているケースで警備会社が
  倒産したケース>
  「警備会社が警備業務を履行しなくなったときにも警備料の一部の支払を余儀なくさせる
 ことになることを知り或いは知り得べきリース会社が、ユーザーに残リース料相当損害金
 の支払を求めることは、通常のリース対象価額から算定される適正なリース料に相当する
 損害金を超える部分については信義則に反し許されないと解するのが相当である」

6 札幌地裁平成2年3月26日判決
 <小型電子計算機のリース契約の目的物件にソフトウエアも含まれるケース>
  「ソフトウエア引渡義務が履行されないときは、ユーザーからリース会社に対する既払
 リース料の返還請求は認められる」




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