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                   内容証明郵便でブレイク !        行政書士田中 明事務所

                   
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                <悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法>


    マルチ勧誘者の嘘には取消権で対抗せよ!

  平成16年11月から特定商取引法でも取消権が認められています。 業者に不実の告知又は故意の
事実の不告知があって誤認して契約した場合、取消が出来ます。 これにより一層消費者の保護が厚く
なったのはいいのですが、問題は原状回復の範囲です。 クーリング・オフの場合のように明文の規定が
ないのです。
                    
  私は、クーリング・オフの場合に準じて処理されるべきものと考えます。 というのは、クーリング・オフ
制度だけでは消費者保護に不十分との認識の下、クーリング・オフ制度を補完する趣旨でこの取消権を
導入したものと考えるからです。
  さて、クーリング・オフの効果とは、このようなものです。
  ・業者は損害賠償又は違約金の請求が出来ない。
  ・業者は引取費用を負担し、また代金返還の手数料を負担する。
  ・工作物の取付工事は、業者の負担で原状回復する。
  ・消費者は履行済役務の返還義務を負わない。
  ・業者は入会金や履行済役務の対価の返還義務を負う。

  要するに、消費者は商品を返還するだけでよく、その他の原状回復は業者の負担で行うということです。 
クーリング・オフ制度というのは、民法の不当利得制度に比べるとまことに消費者保護に徹した制度といえま
す。
                
 もっと具体例に即して検討して見ます。

[事案]  Aは、連鎖販売取引の説明会場で、勧誘者に「2ケ月でも元が取れる」「商品は唯一厚生省で認可
  された医療機器(実際は、認可を受けていない)」と説明され、業者の社員が横で黙って聞いていたという
  ケース。
   Aは、契約から4ケ月が経過して勧誘者の嘘に気付いた。
  その時までに、Aはコミッション(販売手数料)として8万円を業者より受領しており、クレジット代金として
  12万円をクレジット会社に支払い済であった。 

  勧誘者の不実の告知は、特定商取引法で定める禁止行為であり、違反者には重い罰則が適用されます。 
社員が勧誘者の違反行為を黙って聞いていたのは、業者の故意又は重過失に当りますから、Aは契約の取
消が可能になります。

  そこで、Aはコミッション8万円を返還する必要があるでしょうか・・・・・。
コミッションというのは、連鎖的に新規契約者が増えたことでAに入った特定利益です。  のコミッションは
返還する必要はないと、私は考えます。

  つまり、契約が取消されてもAが本来取得出来るコミッションは、業者の会計に累積されて来ます。 結局、
それと相殺するのが合理的と考えるからです。
                     
  なお、クレジット会社へ支払った12万円については、本来Aは返還請求出来るはずです。   しかし、クレ
ジット会社がおいそれと返還して来るとも思えません。
                     
  ここまで来るともう戦略的な対応しかありません。 私の考えでは、この12万円については返還請求せず、
支払い停止の抗弁のみを主張し、後はクレジット会社と業者間の精算方法に委ねるというものです。
 当事務所で支払い停止の抗弁の内容証明郵便を随分書いて来ましたが、現在のところ、クレジット会社か
らクーリング・オフや取消が無効だとして訴訟を提起されたという事例はありません。
  もし、既払いの12万円を返せとクレジット会社に請求したら、逆にやぶ蛇にならないとも限りません。 既払
い金の請求放棄が、案外やぶ蛇を防止しているのかもしれません。
いずれにしても、原状回復の範囲の問題に方程式はありません。 ちなみに、原状回復の問題は、錯誤と
並んで民法の難問なのだそうです。




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