トップ>  エッセー集パートT題目  >    情義的保証人は動機の錯誤を主張せよ!         サイトマップ    

                   内容証明郵便でブレイク !        行政書士田中 明事務所

                      エッセー集 パートT             → HPトップ
                悪徳商法に絶対負けない消費者になる方法

   
     情義的保証人は動機の錯誤を主張せよ!

  親戚や友人の債務者から連帯保証人になってくれと頼まれてしぶしぶなる連帯保証人を、
情義的保証人といいます。 債務者は依頼する時、迷惑は掛けないからとか安心させることを
言うのが普通です。

  これまでは、連帯保証契約を解消するなんて難問中の難問でした。本人が自分で印鑑を押
していれば、本人に意思が推定されるという最高裁の判決がある為、
連帯保証契約は有効に成立していると自動的に認定されてしまっていたのです。

  しかし、経済状況が破綻寸前なのにそれをひた隠しにしていて、連帯保証契約の締結
から半年位で倒産してしまったという場合は、大分事情が異なります。 債務者が破綻必至と
分っていて連帯保証人になる訳もないからです。  連帯保証人は債務者が破綻寸前の
経済状況にないと信じたからこそ連帯保証人になったのですから、連帯保証人になる動機に
錯誤があったと言えます。
 今考えるこれが一般の常識に最も近いと思うのですが、最近までこんな判決にお目に掛かる
ことはまずありませんでした。
                 参考 → 泣かない連帯保証人になる方法
                           ж

  しかし、ここに画期的な判決(東京高裁平成17年8月10日判決)があります。

 [事案]  債務者はシステム金融から1000万円超の債務があり、破綻必至の状態にあり
    ながら、義兄にこれを隠して連帯保証人になってもらい、2500万円の融資を信用金庫
    から受け、4ケ月後に不渡りを出して倒産した。

  判決では、「融資の時点で破綻状態にある債務者のために保証人になろうとする者は 
存在しないというべきであるから、保証契約の時点で主債務者がこのような意味での
破綻状態にないことは、保証しようとする者の動機として、一般に、 黙示的に表示されて
いる
ものと解するのが相当である。」し、判示しています。
  
  信用金庫も調査すれば容易にこの状況を知り得る立場にあり、たとえ2000万円の融資を
実行したところで、借入金の返済には追いつかず、早晩、破綻必至の状況であることは
分ったはずなのです。

  こうして、連帯保証契約は動機に錯誤があり、その動機は表示されているとして、
要素の錯誤により無効とされたのです。
                            ж

  さて、この判決は弁護士にとっても寝耳に水だったようです。 「目から鱗が落ちた思い」と
いうのが、率直な感想のようです。 ご参考までに、赤裸々な所見を載せているある法
律事務所のブログを、以下に載せます。
      http://osaka-futaba.cocolog-nifty.com/futaba/cat5451052/index.html
                            ж

  情義的連帯保証人というのは無償の慈善行為ですから、得るものは何もありません。
債務者が破産すれば、債権者は連帯保証人に請求して来ます。
 私の個人的な意見としては、破綻するような債務者に融資するというのは、貸し手にも
責任があり、回収リスクを情義的連帯保証人に転嫁することは正義に反すると考えます。

  よって、債務者が破産した場合には、連帯保証人に解除権を認めるような抜本的な
法改正が必要と思います。                 
  それから、もうひとつ連帯保証人に有利な制度があります。 サービサーです。
金融機関は不良債権をサービサーにどんどん売却しています。 売却損は直接償却され
ますから、節税効果があります。 サービサーへの売却価格というのが、簿価の3〜5%と
言われます。 ですから、連帯保証人はサービサーと交渉してかなりの値段で買戻すことが
可能になったのです。



                    行政書士田中 明事務所