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                   内容証明郵便でブレイク !   行政書士田中 明事務所

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                <縮こまるな、大いなる志を抱いて道を拓け!>

   
現場のニーズに呼応した法改正を求む

  ADR法(正式名称を「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」といいます)が、平成19年4月1日から
施行されています。    ADR法の趣旨は裁判所以外での紛争解決について利用者にもっと広い選択の幅を保
証しようというもので、法務大臣の認証を受けた紛争解決事業者が報酬を取って和解の仲介調停、あっせん)を
実施します。   認証の第1号は日本スポーツ仲裁機構という機関で調停費用は25000円と大変廉価です。

  さて、行政書士が個人として報酬を取るには利用者からの委任があって代理人としてADRに関与出来ることが
前提です。    司法書士、弁理士、社会保険労務士、土地家屋調査士の四士業にADR代理権が付与されてい
ますが、税理士、不動産鑑定士、行政書士については施行後の手続実施者(行政書士会等)の実績等から見極め
てからということになっています。    しかし、隣接法律専門職種を二つに分けたのは一体どんな根拠によるの
でしょうか。   私から見ると法律と現場の実態が乖離しているとしか思えないのですが、そんな法律はまだ沢山
あります。   現行法上、和解(示談)の代理は弁護士と司法書士の独占業務とされており、行政書士は出来ない
とされています。
 
  今、改正貸金業法によるグレーゾーン金利の廃止により弁護士や司法書士のところには物凄い件数の過払い
返還請求と任意整理の依頼が舞い込んでおり、債務整理(任意整理)バブルと云っていい状況を呈しています
  任意整理とは裁判外でする私的和解のことで、利息制限法で再計算した残元本を3年以内で分割返済し将来
利息はカットというのが和解の一般的なケースのようです。   
費用は1社4万、成功報酬が減額総額の20%以上というのが相場のようです。 
                   
  唯でさえ台所事情の苦しい多重債務者からこんなに取っていいのかと素朴に思うのが自然ではないでしょうか。    
業者との交渉も難しいものではなく、既に固まったパターンがありこちらの事情を説明する能力や粘り強く交渉す
る能力があればいいのです。  この交渉は法律的知識よりむしろ社会経験や他の実務経験が活かされるので
あり、そんな経験を豊富に持った人は行政書士にだって沢山いるはずです。   行政書士は契約代理が出来ま
すが、この方が任意整理よりはるかに高度な知識を必要とします。
 
※ なお、債務整理で法外な報酬を請求する弁護士がいて依頼者との間でトラブルになっています。  
  日弁連も動いて、「債務整理事件処理の規律を定める規程」を平成23年4月から施行します。  
  債務整理の解決報酬金は1社当たりの上限を5万円(施行規則では2万円以下)、
  元金減額の場合の報酬は減額分の10%以下、過払い金の返還の報酬は返還額の25%以下と
  定めるという。

  

  最後に提携弁護士という存在について触れます。   東京に100人位いるという提携弁護士とはいわゆる整理
屋と提携している弁護士のことで、弁護士は名義を貸した整理屋から高額な手数料を貰っています。   実際の
債務整理は整理屋という無資格者がするわけですが、多重債務者を食い物にする整理屋と結託して自分では何
もせず手数料だけを稼いでいるのが提携弁護士なのです。 
  業者は当然弁護士法違反ですが、肝心の弁護士の方は中々立件が難しいようで提携弁護士が一向に減らない
と云います。   業者も業者で、業者停止など懲戒処分を食らって食べるのに困った弁護士を物色して提携して
いるといいいます。   こんな弁護士と提携している業者を非弁提携業者といい、大抵チラシなどで「債務を1本
化しませんか」と、多重債務者を誘っています。     こんな業者に引っ掛かった人はまことに悲惨で、利息制限
法での再計算も何もないとんでもない和解をしていて、毎月15万円も支払っているのに元本が全然減らないとい
うことになっているのが普通なのです。
                        
  今後消費者の権利保護という観点から法改正が現場のニーズに添った形で進められて現場との乖離は段々
解消して行くはずです。    その過程で弁護士法とか司法書士法とかの垣根がますます不明確になって行く
のではないかと思われます。   
  いまでさえ隣接法律専門職種との職域の調整はかなり困難と云われており、これを解消すには社会経済的に
正当な業務の範囲内での相互乗り入れを認めるという形を取らざるを得ないのではと私は思うのです。     
消費者にとって何の利益もない士業間
ヤクザっぽい縄張り争いとか摩擦をなくするにはそれしかないのではと
思う次第です。 

                                                2011.3.5


                   行政書士田中 明事務所