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                   内容証明郵便でブレイク !    行政書士田中 明事務所

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    立つ鳥跡を濁さない遺言書を作ろう

  遺言書を作る人は5%くらいと言われます。   遺族の95%は遺産分割協議の方法での相続であり、遺産分割
協議書に相続人全員の印鑑を貰って銀行口座の解約や相続登記申請をしていることになります。                 
  相続人がそれほど多くなく日頃から交際もあって争いもない場合なら遺産分割協議手続きも簡単に済ますこ
とが出来ますが、相続人の1人が遠方にいて幾ら連絡をしても返事を貰えないとか、行方不明者や不在者がい
たとしたら忽ち遺産分割の手続きは頓挫してしまいます。  

  実を云いますと、遺言書にはそんな遺族の困惑を回避する効用があるのです。 先の例で言うと、非協力的な
相続人や行方不明者を最初から外した遺言書を作成するのです。 
  遺言執行者も遺贈者の誰かに決めて置きます(なお、遺言執行者には行政書士もなれます)。   こうして置け
ば遺言執行者と遺贈者の印鑑だけで口座の解約も遺贈登記申請も可能となります。    今では銀行も郵便局
も遺言執行者の印鑑だけで口座解約に応じてくれるようになっています。
                        
  さて、遺言書により遺産を贈与することを遺贈といい、遺贈の相手を受遺者といいます。  受遺者は相続人であ
ってもなくてもよく、全くの赤の他人であってもいいのです。  ただ、相続人以外に遺贈する場合、相続人には遺留
分がありますから(ただし、兄弟姉妹には遺留分がありません)、それを考慮しないで遺言書を作ると後で遺留分減
殺請求権を行使されることがあります。  
                 
  ところで、受遺者が遺言者より先に亡くなっていた場合には、民法で遺贈の効力は生じないとされています。    
つまり、受遺者が相続人以外の場合なら受遺者の妻や子が代襲して貰えるわけではないのです。     結局、
受遺者が貰えるはずだった財産は遺言者の相続人に帰属することになります。    それを避けたいと思ったら
「受遺者が先に死んだ場合は、その妻又は子に遺贈する」と、遺言書に補充して置くことが必要です。
                 
  次に、遺言者より先になくなった受遺者が相続人だった場合には判例に拠ればその妻や子が指定分をそのま
ま貰えるのではなくて、他の相続人と共同相続することになります。
ですから、これを回避したければ、やはり「指定の相続人が先に死んだ場合は、その妻又は子に遺贈する」と、遺
言書に補充して置けばいいわけです。                        
  しかし、遺言書とは遺言者の意思で作るものでも回りの者がとやかく言うべきものではありません。   遺言書
はいつでも取消しが出来ますから、受遺者が先になくなったら遺言書を作り直してもいいのです。

                         
  公正証書遺言は公証人役場で作ります。    しかし、公証人は遺言執行の現場には関心がありませんし、戸
籍謄本を取って相続人を調査する訳でもありません。
  その為、受遺者が外国人だったり相続人に在留邦人がいるのに、「マンションの売却代金を誰々に遺贈する」な
どという登記実務を複雑にするだけの文言を平気で使っていたりします。   もし、在留邦人の在留証明書が入手
出来ない場合は忽ち遺言執行は頓挫してしまいます。    最終的には、不在者財産管理人選任を家庭裁判所に
申立てねばなりません。
  そんな迂遠な手続きを回避する為の方法としては、公証人役場に行く前に相続人をよく調べてスムースな遺言
執行を可能にするような立つ鳥跡を濁さない賢い遺言書の原案を作ること以外はないと考えます。  
                                             2011.3.5




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