行政書士もぐもぐ......自分流情報発信 第25号
平成16年12月6日発行
今回の目次
□ 印鑑と民事訴訟法
□ 反証と証明責任
日本では、契約書に署名と印鑑を貰うのが通常です。
押印するのは、慣習でそうしているだけで、
印鑑がないと契約書が無効というわけではありません。
しかし、いざ訴訟に舞台が移されると、印鑑が俄然重い意味を発揮します。
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ます、民事訴訟法第228条第4項に、
「私文書は、本人又は代理人の署名又は押印があるときは、
真正に成立したものと推定する」とあります。
※ なお、改正前の民訴法では、第326条に同条項がありました。
改正民訴法の施行日は、平成10年1月1日です。
しかも本人の印鑑かどうかは、印鑑登録証明書によって簡単に立証出来ます。
次に、昭和39年5月12日の最高裁判例では、
「私文書の作成名義人の印影が、その名義人の印影によって
押印された事実が確定された場合、反証がない限り、
その印影は本人の意思に基づいて押印されてものと事実上推定され、
文書全体の真正が推定される」とされているのです。
つまり、本人の印鑑と印鑑登録証明書があれば、裁判所は契約書を
本人の意思に基づき作成された真正な文書と推定してくれるわけですから、
債権者にとって、印鑑の意味は極めて大きいというわけです。
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さて反証とは、本人が契約内容を知らないのに、印鑑を預けていた他人が
勝手に押印したなどと、本人が契約意思を否認する主張をいいます。
これでよく問題になるのが、連帯保証人の保証意思の否認です。
連帯保証人本人はそのことを知らないで、
印鑑を預かっていた債務者などが無断で印鑑を押していたという場合です。
しかし、債権者が連帯保証人に意思確認をしていなかったという事実が
あれば別ですが、反証は中々難しいのが現状なのです。
結局、印鑑があるという事実により、連帯保証契約は有効とされて、
多くの連帯保証人は泣かされているのです。
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請求する者が債権の存在(契約の成立)を立証する責任があるというのが、
訴訟の本来の建前です。
それが、印鑑がこのように扱われている結果、
債権者の立証責任が転換されているのです。
金融機関は印鑑と印鑑登録証明書を貰ってしまえば、訴訟で勝てる可能性が断然高いと言えます。
しかし、債権者が連帯保証人に対する意思確認を怠っていたとしたら、
この立場は忽ち逆転してしまうことになります。
連帯保証人から、「その話は聞いていない。代行して署名・押印した妻の思い違いだ」
などと主張されたらどうでしょう・・・・。
債権者が、本人に意思確認をしたことを立証しない限り、連帯保証人に反証ありとして、
連帯保証契約の成立を否定される可能性が一気に高まるはずです。
以下は、意思確認がないとして連帯保証契約を否定した判例です。
岡山地方裁判所 平成15年3月3日判決
□ 反証と証明責任
先の岡山地裁判決は、証明責任により原告の請求を棄却したものです。
証明責任というのは、審理を尽くしたが裁判官が心証を形成出来ない時に判決を下す為に
使われます。これによって、裁判の決着をつけるのです。
まず判決文というのは、主文、事実、争点、裁判所の判断の4つに大きく分かれています。
争点を見ると、「被告は連帯保証したか」ということが書かれています。
連帯保証人が保証意思を否認し、それを反証したが、
成否については真偽不明の域を出なかったので、
連帯保証契約の成立に関する証明責任を、債権者が負わされたのです。
債権者はここに来て、契約成立の本証を求められたのです。
本証とは、事実の存在について確信を裁判所に抱かせることであるのに対して、
反証とは、その存在について真偽不明に陥らせることで足りるとされます。
結局、連帯保証人の反証により連帯保証契約に関し真偽不明の状態にされたのに対して、
債権者は本人への意思確認を立証出来ず、
連帯保証契約の不成立という不利益を蒙ることになったのがこの判決なのです。
これまで、連帯保証人に対する意思確認が等閑にされている傾向にありましたが、
それが如何に恐ろしい結果をもたらすかという証明がここにあります。
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