インターネット行政書士のフロンティア戦略 第 180号   
                令和5年12月14日発行 
      
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
          □
 貸主の「運行供用者責任」について


  知人から借りた車を運転していて交通事故を起こして他人の生命や身体に被害を与
た場合、被害者は運転手の他に車の貸主や所有者に対し「運行供用者責任」(自動
損害賠償責任法第3条、略して自賠法)を基本的に請求出来ます。

  ただし、請求出来る範囲は治療費や慰謝料といった人身被害に関する項目に限ら
れ、
物損被害に関する請求は含みません。

  しかし、最高裁平成9年11月27日判決に拠れば、常に請求出来るという訳ではなく、
運行供用者責任に当るとされない事実関係が認められる場合には請求出来ないと判示
しています。


  同判決で運行供用者(自動車を自分の管理下で運行し利益を得ている人、所有者や
運転手として雇用していた雇用主など)に当らないとされる事実関係とは、以下の通り
です。

 イ 借主は長時間乗り回す意図の下で2時間後に確実に返還するかのように装い、貸主を
  欺いて借りていた。

 ロ 借主は返還期限後に貸主に電話して返還の意思がないのにその場しのぎの約束をし
  て返還を引き延ばしていた。

 ハ 貸主は借主から電話があった際、車を直ぐに返還するよう求めており、使用の継続を
   許諾したものではない。

  
   このような事実関係の下では、事故当時、車の運行は借主が支配しており、貸主は何ら
 その運行を指示、制御し得る立場になく、運行利益も貸主に帰属していたとは云えず、
 運用供用者には当たらないとしたのです。

   この際、貸主は「運行支配・運行利益を有していなかった」ことを立証する必要がありま
 すが、被害者は貸主が加害車両の所有権または使用権を有していたことを主張・立
 証す
れば足りるとされています。

   要するに、上記判決事案では、貸主は借主に車を騙し取られたも同然、つまり泥棒運
 転に近い状態にあったとして貸主の責任を否定したのです。

   
   自賠法の運用供用者責任は被害者保護を目的とした規定ですから、貸主は原則とし
 て責任を負いますが、ただし、貸主が積極的に努力をして借主による運行を黙認・追認
 していたとは云えない事実関係があった場合には責任を負わないとしているのです。   



 最後に、運用供用者責任を負う人として貸主の他に次の人も該当しますので書いて
おきます。

 イ  運転代行業者に自車を運転してもらった顧客
 ロ  バス、タクシー、社用車を所有する法人
 ハ  レンタカー、代車を保有する法人
 二  事故を起こした盗難車の所有者
 ホ  無断で自動車を借りていた場合でも、無断で自動車を借りられる状態(例えば
    いつでもキーを持ち出せる管理状況にしていた)所有者
 

  尚、加害者が社用車の利用中など業務中に交通事故を起こした場合には、被害者
は加害者と雇用関係にある使用者に対し、使用者責任を追及出来ます。
 
 その際、被害者は加害者の故意・過失を立証する必要があり、物損と人身に関する
損害の賠償を請求出来ます。


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