インターネット行政書士のフロンティア戦略 第 176号   
                令和4年11月16日発行 
      
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
      □
 動産の即時取得、被害者の返還請求権      


 
狩猟、漁獲、採掘などの法律的制限がない土地で人が野生動物、天然の植物や果実
などを取ると無主物先占(むしゅぶつせんせん、民法239条)と云い、取った人に所有権
が帰属します。     

  これを原始取得と云います。  動産の即時取得も原始取得の一種です。

  ただし、盗品や遺失品を占有する者が見つかった場合、前主(被害者)は有償で返還請
求出来る場合がある他、古物商や質屋が占有者の場合には、1年以内なら無償で返還請
求出来る場合があります。

  民法にはこれに関する複数の条文がやや散らばって書かれており、文言の解釈に関す
る判例や一部改正もありますので以下に整理します。


1  民法192条 (即時取得)とその要件
  
   取引行為により動産の占有を始めた者が所有権を取得して前主が所有権を失う場合
 を、即時取得と云います。
  即時取得は、以下の要件(イ~ホ)を全て満した場合に認められます。

  
 イ 対象が動産である

     不動産以外のものを動産と云います。
      
     ただし、自動車、船舶、航空機、建設機械など登記・登録制度があるものは
   即時取得出来ません。  しかし、未登記・未登録・登録抹消の場合は即時取
   得 の対象なります (最判平成14年10月29日判決)。


 ロ 前主が無権利者である (条文には明記されていません)
     
    しかし、無権利者(前主)からの取得以外の場合には適用されない趣旨と
  解されています。 
    即時取得を主張する者が主張・立証することまでは要らないとされています。
     

      ただし、前主(直接の取引相手)が未成年者など制限行為能力者、無権代理人
   の場合、及び前主に錯誤がある場合は、即時取得の対象になりません。


     未成年者や成年被後見人など制限行為能力者、無権代理の本人、錯誤より無効
    な意思表示をした者を保護する規定がある為、それを無意味にしな いためです。

      なお、前主が制限行為能力者、無権代理の本人からの譲受人(転得者)である場
   合には、前主は無権利者であるので即時取得の適用があります
    


 ハ 取引行為により占有を承継した(2004年改正民法 で「取引行為により」が条文に
   明記された
)




    それまでは判例で当然の要件とされており、要件には判例により売買、
  贈与、弁済、代物弁済が含まれ、相続は含まれ
ません


 ニ 占有の開始がある
   
     占有の開始には現実の引渡し、簡易の引渡し、指図による占有移転が含まれ、、
   占有改定は含まれません
(最判昭和57年9月7日判決)。

  a 簡易の引渡しの具体例・・・賃貸してある物を賃借人に売り渡す場合
                     (民法182条2項)

  b 指図による占有移転・・・AがC店に置いてある商品をBに売り渡し後、
                   Bがそのまま商品をC店に保管させて置く場合
                    (民法184条)

  c 占有改定・・・Aが自己所有の建物をBに売却した上、なおこれを借りて
           引き続き利用する場合  
                 (民法183条)
    

 ホ  占有開始の際、平穏かつ公然の占有で、前主が無権利者であることについて占有
   者が善意・無過失である

     なお、平穏と善意については民法186条で法律上推定されます。
   無過失についても民法188条で前主は適法に権利を行使するものと法律上推定され
   ます。

     また、民法192条の善意は、前主の占有を信じていことを云います。
    従って、前主の無権利を知っていた場合や前主の権利を疑っていた場合は悪意と
   なります。




2  即時取得の特則 

     盗品や遺失物については、即時取得が成立する場合でも前主(被害者、遺失主)
  に無償の回復請求権、有償の買取請求権を一定の要件の下で認める特則があります。


 イ 回復請求権が認められる場合・・・ 民法193条

      盗難、遺失から2年が経過していない場合、前主は占有者に無償返還を
    請求が出来ます。
   
      ただし、これには例外があります。

      拾得者が届け出て、警察が公告をした日から3か月経過しても遺失者が見付か
    らない場合は、
   遺失物法
により拾得者が当該遺失物の所有権を取得します(民法240条)。
  
      なお、遺失者が公告から3か月以内に見付かった場合、拾得者は慰労金を請求
    出来ます。


    
 ロ  買取請求権(代価を弁償して)が認められる場合・・・・ 民法194条

      占有者が競売若しくは公の市場、その物と同種の物を販売する商人から善
    意で 盗品や遺失物を買い受けた時は、
被害者と遺失主は代価を支払って返還
    を請求出来ます。
    
       ただし、古物営業法により、占有者が古物商・質屋営業者・公益質屋である
    場合、被害者と遺失主は1年以内に限り無償で回復請求が出来ます。


  ハ 拾得物がペットの場合

      拾得者には警察署や施設への届出義務はないが、遺失物として届出され場合、
    3か月経過後も遺失者が現れない場合には、拾得者がペットの所有権を
    取得します。

       なお、民法第195条で定める動物の即時取得については、判例により
    野生動物の場合に限られ、ペットなどの愛玩動物の即時取得は認められ
    ません




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