行政書士もぐもぐ......自分流情報発信  第8号

              平成15年10月3日発行 


            今回の目次
        □ 弁護士法72条改正の動き
        □ 司法書士の業務って最近どう変わったの?



 □ 弁護士法72条改正の動き

 
弁護士法72条では、いわゆる非弁活動を禁止しています。
この条文を素直に読むと、報酬を得る目的で法律事務を取扱えるのは、
弁護士だけということになります。
 しかし、司法書士、行政書士、税理士、弁理士、社労士といった
隣接法律専門職種の人達もそれぞれの士業法に基づき、法律事務を行っています。
 
 これを今までどう解釈していたのかといいますと、
隣接法律専門職種の法律事務は正当業務行為として違法性が阻却されるとか、
特別法(他の士業法)は一般法(弁護士法)に優先するという法理論により、
弁護士72条の適用除外とされていたのです。
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 しかし、一般の国民から見るとこんな分りにくい法律もないわけです。

 そこで、弁護士法72条但書の
「ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」を、
                
「ただし、この法律及び他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」
に改正する案が、法曹制度検討会で煮詰まりつつあります。
             ↓ (法曹制度検討会第5回議事録 平成14年6月18日)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/seido/dai5/5gijiroku.html

  ※ 法曹制度検討会というのは、小泉首相を本部長とする
   司法制度改革推進本部内にある、法案を立案する為の部会です。
                
 今国会に法案上程の予定でしたが、
日弁連の慎重意見を考慮してか、先送りされました。 
 日弁連がいうには、弁護士72条は刑罰規定であるのに、
「他の法律」を追加だけでは、予測可能性が確保されないというのです。
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 日弁連が言うように、「他の法律」を追加しただけでは、
これまでの職域論争がなくなるのか甚だ疑問だと私も思います。

 例えば、行政書士法で、行政書士が官公署へ提出する書類を作成すること、
提出する手続きについて代理することを、業とすることが出来るとしています。
 官公署には、もちろん裁判所や法務局も含まれます。

 では、弁護士法72条但書に「他の法律」を追加されることで、
特定調停申立書、自己破産申立書、登記申請書、といった書類の作成も
行政書士は業として出来ることになると考えていいのでしょうか・・・・・。
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 これまで、行政書士が自己破産申立書や登記申請書を報酬を取って作成したとして、
逮捕されたり、最高裁まで争って罰金を課せられた事件が起っています。
 逮捕された行政書士は悪意でやったのではなく、
行政書士法は弁護士法の特別法だから作成出来るのだと、信じていたのでしょう。

 その意味で、現在の弁護士法72条は、予測可能性が著しく不明確であり、
こんな刑罰規定を適用して逮捕するのは違法だ、と私は考えます。
 「他の法律」の追加は、行政書士法を弁護士法の特別法だと確認する趣旨だとしても、
こんな逮捕がこれから本当になくなるのでしょうか・・・・・。
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 私のこれまでの立場をいいますと、行政書士の出来る法律事務とは、
法的紛争事件(争訟性のある事件)に至っていない法律事務と考えていました。
 その一方、事件性というやや曖昧な概念が入ることに懸念を持ってました。

 一般法と特別法の関係でいくのが、解決としては一番スッキリしますが、
逆に行政書士の業務範囲が広がり過ぎるという難点があります。
 私見になりますが、民事調停、支払い督促、小額裁判、
法人登記申請及び自己破産までなら、
能力担保の可能な、社会経済的に正当な業務の範囲内ではないかと考えています。

 また現に福岡地裁に限ってのことですが、、行政書士作成の自己破産申立書を
一定のルールの下で受理するという対応を既に取っています。

 いずれにしましても、「他の法律」という文言の追加だけでは、
範囲が不明確なままですから、
是非この機会に対象範囲を明確に規定して欲しいものです。
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 最後に、非常に参考になる最高裁判決を記載して置きます。

「形式的には、他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によって
その権利の実行をすることを業とする行為であっても、
みだりに訴訟を誘発したり、紛争を助長したりするほか、
弁護士法72条本文の禁止を潜脱する行為をして、
国民の法律生活上の利益に対し弊害をもたらすことが生じる
おそれがなく、社会経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる
場合
には、同法73条に違反するものではないと解するのが相当である」 
    (平成14年1月22日最高裁第三小法定判決)


   □ 司法書士の業務って最近どう変わったの?

 一般の市民で行政書士と司法書士の業務の違いをはっきり言える人は、
そう多くいないでしょう。
 その上、平成15年4月から改正司法書士法が施行されたので、
ますます分り難くなったのが、司法書士の業務です。
 そこで、今日はポイントを整理して見ます。
 登記申請業務が、司法書士の法定業務であることは同じです。
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 平成15年4月から変わったのは、
簡易裁判所での訴訟等の代理権が付与されたことです。

 列挙しますと、通常訴訟、訴え提起前の和解手続、支払督促手続、
訴え提起前の証拠保全手続き、民事保全手続き、小額裁判、民事調停、
相談、裁判外の和解手続(簡裁の対象となる民事紛争に限る)に関してです。
 つまり、これらは弁護士しか代理人になれない法律事務だったのですが、
司法書士にも遂に解禁されたのです。

 もっとも、これらに関わる訴状その他の書類は、
以前から司法書士が代書出来たわけですが、
代理人になれることで、本人を代理して法廷で陳述したり、
書類の訂正をしたりすることが出来るようになったわけです。
  
 ただし、代理人をやれるのは一定の研修を終了して、
法務大臣から認定を受けた認定司法書士に限られます。 

 最後に、行政書士との違いにちょっと触れます。
行政書士は昨年7月から、私法上の代理権が条文上で付与されましたが、
司法書士にはこのような代理権は付与されていません。
 私法上の代理権が条文に明記されているのは、
弁護士と弁理士と行政書士だけなのです。


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