行政書士もぐもぐ......自分流情報発信  第6号

              平成15年8月4日発行 

            今回の目次
        □ ヤミ金融対策法の成立に思う
        □ 取り残された経済的弱者



  □ ヤミ金融対策法の成立に思う

 
今国会で、ヤミ金融対策法が成立・・・・・・。

と書きますと、何か画期的な新法が出来たような印象を与えますが、
貸金規制法と出資法の一部を改正したに過ぎません。
 要するに罰則を強化して、ヤミ金の暴利行為を牽制しただけです。

 ヤミ金が跋扈する構造的な問題の抜本的解決までには、
全然踏込んではいないのです。
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 ところで、なぜヤミ金のようなものが大手を振って跋扈して来たのか・・・・?
私は、その大きな原因の一つが金利の二重構造にあると考える者のひとりです。

 まず、金利を規制する法律には、利息制限法、貸金業規制法、出資法の3つ
があります。

利息制限法が一般的な法で、
      元本10万円未満           年20%
      元本10万円以上100万円未満  年18%
      元本100万円以上          年15%  が金利の上限とされ、
    これを超える金利は、無効となります。
  つまり、これを超える金利を払うと過払いとなり、当然返還を請求出来ます。

貸金業規制法は、貸金業者に専ら適用される特別法です。
「みなし弁済」の要件を充たした返済に限って、利息制限法の金利を超えていても
有効とみなすという点がミソの法律です。

 もっとも、地方裁判所で近時、「みなし弁済」の要件を厳格に解釈する重要な判決が
次々に下りており、現在ではほとんど「みなし弁済」が、認められなくなっています。
 つまり、ほとんどの場合、過払いの返還請求が認められるということです。

出資法は刑事特別法で、違反すると重い刑事罰を課す法律です。
貸金業者については年29.2%、日賦貸金業者は年54.75%、個人間や質屋は年109.5%
を超える金利で貸し付けると、懲役5年以下又は罰金1000万円以下
(法人は3000万円以下)の罰則が課せられます。 
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 結局、貸金業者は年29.2%以下で貸せば、刑事的には何ら罰せられません。
それをよいことに、東証1部上場の大手消費者金融会社(通称サラ金)までが、
年27%前後という高金利で営業しているわけです。

 民事裁判で過払いを争うことは出来ます。
しかし、訴訟まで起す人というのはごく一部の人で、
多くの人は知ってか知らぬか、過払いの利息を払い続けているのです。
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 利息制限法の上限金利を超えた金利で、処罰の対象とならない出資法の上限金利
までの金利を、俗にグレーゾーン金利と呼びます。
 刑事罰の対象にはならないとしても、いつ返還請求されてもおかしくない金利
という意味で、限りなくグレーなわけです。
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 グレーゾーン金利があるというのは、おかしいということがずっと以前から
指摘されて来ました。
 今国会にも日本弁護士連合会その他から、
出資法の上限金利を利息制限法の金利まで下げて金利を1本化すべきだ
という意見書が出されています。    クリックすると意見書全文があります。
                            
  http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/data/2003_32.pdf
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 さらにおかしいと思うことがあります。

 サラ金大手は銀行等から融資を受け、それを貸しています。
調達金利は、10年前の年6.98%から年2%前後にまで下がっているのに、
貸付金利が年27%前後から全然変わっていないことです。
 しかも、金利は完全に横並びです。

 この不景気にも拘らず、消費者金融会社の貸付残高はハイペースで増えており、
昨年はサラ金業界全体で20兆円、そのうちサラ金大手5社で7兆にもなっています。
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 その一方で、自己破産の申立件数は昨年で21万件もありました。
6年前は5万件ですから、4倍という異常な増え方です。

 自己破産を申立てる人というのは、ほとんど多重債務者です。

 初め1,2社で始めた借金でも、段々残高が膨らんで来ると、
返す為に他社から借りるということを繰り返すようになります。
 それがスパイラルのようになって、
気が付いたら10数社の合計残高が300万、400万という額になっていた
というのが、一般的なパターンのようです。
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 自己破産をしても生活に大きな影響はありません。
しかも免責が裁判所で認められると、返済が一切免除されるのですから、
申立ての前と後では雲泥の差です。
 そおいう情報が広まったことも、申立増加の背景にあると思います。 

 もっとも、自己破産により当然クレジットカードの利用は出来なくなり、
また信用の回復までには相当の年月を要することになります。
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 さて、問題は自己破産者の増加よりも、
むしろその予備軍である多重債務者の増加にあると、私は考えます。

 多重債務者の数は、150万人から200万人はいるといわれます。
自己破産者は21万人ですから、多重債務者の内の10%〜14%が
支払不能ということで、自己破産になっているわけです。

 逆説的な言い方になりますが、自己破産になった方がどれだけよいか・・・・。
支払不能にまで至っていないことが、逆に毎月の返済地獄から開放されず、
悲惨な生活を続けているというのは、何という皮肉でしょう・・・・・。
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 債務整理を弁護士などに依頼したり、簡易裁判所で調停をしたりしている人は、
まだ恵まれています。債務の一部免除が受けられるからです。

 一方、そんな手段を知らないのか、何も取らずにいる人は、本当に悲劇です。
消費者金融業者からは脅迫的な督促を受け続け、
返済の工面に明け暮れるどん底生活を強いられています。

 運良く債務整理や調停を利用出来た人でも、
生活面のどん底さはそれほど変わらないでしょう。
 10万円〜15万円というの毎月の返済額を、手取収入の20万円〜30万円の
中から2、3年間も払い続けねばならないのですから。

 これが、多重債務者の生活実態です。

 こおいう悲惨な多重債務者の増加に拍車を掛けているのが、
サラ金業者の安易な貸し増しや高金利なのです。


  □ 取り残された経済的弱者
 
 ヤミ金がターゲットにしている客層の多くが、自己破産者や多重債務者です。
驚くべきことに、こおいった人達の個人情報が漏洩していて、
名簿を売っている名簿業者まであるそうです。

 自己破産者はクレジットの利用が出来なくなった人達であり、
多重債務者は生活破壊の一歩手前をさ迷いつつ、途方に暮れている人達です。
 なのに、弁護士など法律家のアドバイスを受けることも思い至らず、
独りで解決しようとして、ついついヤミ金に手を出してしまうのです。
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 彼らを救済することは、出来ないものか・・・・・・?
  
 これまで、借りた金は返すのが当り前であり、
多重債務になるのは無計画な借り方をするからだと、
むしろ業者側を弁護して見る傾向が無きにしも非ずでした。

 その考え方にも一理はあります。
 しかし、自己破産者や多重債務者の実態をよく分析してみると、
債務者の無計画性だけを一方的に責めることは出来ません。
 
 自己破産を申立る人の82%が、月収20万円未満で
負債も400万円以下(その半分は200万円以下)という人が、
約5割
だそうです。

 つまり、そもそも支払能力の低い低所得者層が、
やむにやまれずサラ金から借りては生活費に補填している内に、
いつの間にか返せない程の額に膨らんでいたというのが、
真実の姿なのです。

 そして、返さねばという気持ちが強い真面目な人達だからこそ、
ついついヤミ金に足が向いてしまうのです。
 彼らは実に気の毒な、早急な救済を必要としている経済的弱者です。
                        
 業者の安易な貸付と高金利が改善されれば、
かなり多重債務者の発生を止めることは出来るはずです。
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 不思議に思うことは、これだけの大きな問題がありなから、
政府に全く動く気配が見られないことです。

 色々と憶測が働かざるを得ません。
金利を利息制限法の上限に一本化すると、サラ金業界からの税収が
激減するからだとかいった・・・・・・。

 今日は、話が長くなってしまいました。

 9月から、いよいよ政治の季節に入ります。
 民主党は、前々から利息制限法の上限に一本化すべしと主張しています。
政権の交代が起こる前に、小泉さんもやるべきことをやって欲しいと思うこの頃です。


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