インターネット行政書士のフロンティア戦略 第95号
平成24年4月30日発行
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。
今回の目次
□ 無催告失効約款に関する最高裁の判断
保険会社の無催告失効約款が消費者契約法第10条により無効とした東京高裁判決
が出たのは、平成21年9月30日のことです。
原告の保険会社は最高裁に上告受理申立をして受理されたものの、判決が中々出ま
せんでした。
もし保険会社が敗訴することになれば全ての保険会社の事務管理システムに大変な
影響があるということで最高裁の判断が待たれていたのです。
その判決が遂に平成24年3月16日に出ました。
判決は原判決の破棄、差し戻しでした。 →判決全文
保険会社の勝訴とはいえ、判決理由を読みますと、保険料払込みに係る督促実務に
決して少なくない影響を与えると思われる判断がちゃんと示されていました。
「・・・・本件各保険契約の締結当時、保険料支払義務の不履行があった場合に契約
失効前に保険契約者に対し保険料払込みの督促を行う態勢を整え、そのような
実務上の運用が確実にされていたとすれば、通常、保険契約者は保険料支払債務
の不履行があったことに気付くことができると考えられる。
本件約款において、保険契約者が保険料の不払いをした場合にも、その権利保護を
図るために一定の配慮をした上記イのような定めがおかれていることに加え、
※ 上記イ → 失効までの猶予期間の存在、解約返戻金の範囲での自働貸付制度等
上告人において上記のような運用を確実にした上で本件約款を適用していることが
認められるのであれば、本件失効約款は信義則に反し消費者の利益を一方的に
害するものに当たらないと解される。
保険料払込みの督促を行う態勢を整えるなどの実務上の運用が確実にしていた
かなどの消費者を配慮した事情について審理判断することなく、
消費者契約法第10条により無効であるとした原審の判断には、判決に影響を及
ぼすことが明らかな法令の違反である」
最高裁は、保険料払込みの督促を行う態勢を整えるなどの実務上の運用を確実に
行ない保険契約者が保険料の不払いに気が付くようにすることが必要と云っているの
です。
そのような運用が確実な場合ならば無催告失効約款は無効にならないとしている
のです。
これは保険会社に督促を行う態勢づくりを暗に要求していると取れますことから、
原告勝訴でも実質は敗訴に近い影響を与えそうに思えます。
差戻審では、保険会社には督促により不払いについて注意喚起し、保険契約者が
気付いていたかなどの立証責任が求められるのでしょう。
過去に当事務所に相談があった事例に
「お立替えのお知らせ」が1回届いただけで、それも保険の素人の私が読んでも
いつ失効するのか分からない複雑な書き方をしていた。 保険会社から督促の電話
が1本も掛かって来なかった。 こちらから保険会社に出向いた時に初めて失効して
いると告知された」というのがありました。
このケースでは督促というものが全然なく、いつ失効するかを気付かせるような
配慮をしていないのですから、実務上の運用を確実に行っていないことになるのだ
ろうと思われます。
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