インターネット行政書士のフロンティア戦略  第77号   
                 平成22年4月30日発行 
    民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                今回の目次
          □ 消費者保護に役立つ民法の深堀り
           ☆ 保険料の第三者による支払い
           ☆ 無権代理と追認



    □ 消費者保護に役立つ民法の深堀り

       ☆ 保険料の第三者による支払い
  まず、保険契約者以外の者による保険料の支払いについてです。
生命保険会契約は保険会社(保険者)と保険契約者が契約の当事者となり、被保険者
の死亡を条件に保険金受取人が生命保険金を請求する権利を取得する契約です。

  一般には夫が保険契約者兼被保険者となり妻が保険金受取人となるのが通常と思い
ます。  要するに、生命保険というのは自分が死んだ後に残された妻子の生活の安定
を保障する制度なのです。

  さて、稀なケースですが夫が突然失踪して生死不明のままということがあります。  
この場合、失踪宣告の手続きも必要ですが、生命保険契約の失効ということも視野に
入れておく必要があります。  

  といいますのは、生命保険の約款が一方的に保険会社に有利な規定になっており、
保険料の支払い催促の通知(保険専門用語で書かれていて素人には分かり難い代物
です)が届いても家族は見過ごしてしまい易く、気が付けば保険契約が失効していたと
いうことがあるからです。

  ところで、夫が保険料を支払えない場合、失効させない方法は妻が支払うことです。  
これを「第三者の弁済」といいます(民法第474条)。  
 第三者の弁済は、出来るというのが原則で、例外的に債務の性質が許さない時や
当事者の意思に反しては出来ず(同条1項但書)、利害関係のない第三者の場合は
債務者の意思に反して弁済出来ない(同条2項)、というだけなのです。

  生命保険の約款で第三者の弁済を禁じておらず、そもそも第三者の弁済が許され
ない性質の債務でもないし、妻は利害関係のある第三者なのですから、
夫の意思に反しても妻は弁済が出来るということになるのです。

  この場合、妻は妻の名義において夫の保険料を支払うことになります。 夫が生死
不明のまま7年が経過すると失踪宣告が下ります。  この日まで保険料を支払ってい
れば、夫は失踪宣告の日に死亡したと看做されて生命保険金が支給されることになり
ます。


   ☆ 無権代理の追認
  次は、債務者か誰かが勝手に連帯保証人の署名を代筆していた場合です。
本人が誰にも代筆の代理権を授権していなかったとしたら、無権代理による代筆となり
本人が追認しない限り連帯保証契約は無効
です(民法第113条1項)。 
  
  債権者が代筆権限を立証することは至難の業といわれます。  ですから、事後に連
帯保証人の自署を要求することや連帯保証意思の確認をすることは債権者の当然の
責務です。  債権者がそれを怠っていれば無権代理による契約無効を堂々と主張出
来ますし、債権者は重過失がありますから表見代理も無権代理責任も発生しません。

  ところで、連帯保証人とされている者が債務者に代って一部を弁済してしまった場合、
無権代理の追認になるのでしょうか。
 
追認は相手方に意思表示をすることが必要ですし(民法第113条項)、 判例では
法定追認を規定する民法第125条は無権代理行為に類推適用されない
(最高裁昭和54年12月14日判決)としています。

 結局、本連帯保証契約は無権代理による無効な契約であったのですから
支払義務がなかったのであり、連帯保証債務が存在しないにも拘らず
連帯
保証契約が有効に成立しているのだと誤信して支払ったことになり、
弁済は民法第
705条の非債弁済に該当するこ
とになります。



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