インターネット行政書士のフロンティア戦略  第76号   
                 平成22年3月23日発行 
    民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                今回の目次
          □ 消費者契約法第10条と保険約款
           ☆ 生命保険契約の失効はこんなに多い
           ☆ 無催告失効約款を無効とした高裁判決



    □ 消費者契約法第10条と保険約款


       ☆ 生命保険契約の失効はこんなに多い
 
日本は保険契約高がアメリカについで世界第二位の保険大国です。 
しかし、一人当たりの保険料になると、日本人はアメリカ人の2倍も支払っています。 
 調査によれば一世帯当りの平均年収が550万円、一世帯当りの平均生命保険料が
44万円となり、年収の8%を生命保険料に負担している計算になります。

 新規の生命保険契約は平成20年で約910万件ありますが、その一方で解約又は失効
が約720万件もあります。  因みに、死亡と満期による消滅が約500万件ですから、
それより遥かに多い膨大な生命保険契約が解約又は失効により消滅しているのです。

 年間に失効している生命保険契約は約210万件で、その内復活を認められるのが15%
ありますから、実質的に失効しているのは約178万件ということになります。

 各社の生命保険約款では、保険料を支払わないまま猶予期間を過ぎると自動的に契約
が失効することになっています。  通常は解約返戻金の範囲内で保険会社が保険料を
立替える自動振替貸付制度が設定されていますから、立替金が解約返戻金を超えない
期間まで失効が猶予されます。
                       
 失効とは保険会社が保険契約者の債務不履行を理由に契約を解除することなのですが、
失効手続きには催告も解除の意思表示も要らないということです。

 この失効の中には、保険契約者が失踪して保険料がストップした場合もあります。
残された妻などが代わって支払えば失効を防げますが、その方法も知らぬ内にいつの間
にか失効していたというケースも相当あるのではないかと予想されます。

 生命保険とは残された遺族の生活を保障する為に考えられた制度です。
であるとすれば、保険会社には失効を未然に防ぐ配慮義務があって然るべきです。
 保険契約者が失踪して行方不明というケースでは死亡又は失踪宣告により復活が
困難になる確率が高いとしたら、保険契約者が任意に支払いをストップしているケース
と一律に扱うのは信義則に反していると云わざるを得ません。


   ☆ 無催告失効約款を無効とした高裁判決
 私は以前、たった1通の「お立替のお知らせ」だけで生命保険契約を失効させるのは
信義則に反するのではという問題提起を、下記メルマガで行いました。
  http://lantana.parfe.jp/melmaga/break71.html

 その直後のことです。 東京高裁が無催告失効条項を消費者契約法第10条に反し
無効であるという判決を下しました。   以下は判決全文です。
  http://www.baobab.or.jp/~ggmx/shinchiyaku/z198/kouzahunou.html
 これは生命保険約款の無催告失効条項に初めて消費者契約法第10条を適用した
画期的な判決です。  
                       ж

 消費者契約法第10条にはこう規定されています。
「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、
消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、
民法第1条第2項に規定する基本原則に反し消費者の利益を一方的に害するもの
は、無効とする(同法10条)。」

 後段要件にある民法第1条2項に規定する基本原則とは、信義則のことです。
信義則による判決はこれまでも結構ありますが、信義則違反だから無効ということに
なりませんでした。  

 しかし、信義則に反し消費者の利益を一方的に害するものは無効とする消費者契約法
第10条が制定されたお陰で、裁判官は本条を適用して特約条項を無効とする判示が
堂々と出来ることになった訳です。

 消費者契約法が施行されて9年になります。  最近、これ以外でも消費者契約法
第10条を適用して特約を無効とする判決が目立つようになりました。

 大企業も賃貸業の大家さんも契約書や約款の条項が一方的に消費者の利益を害
していないか十分吟味して掛からないと、安心出来ない時代に入ったのです。



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