インターネット行政書士のフロンティア戦略  第68号   
                 平成21年4月15日発行 
    民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
          □ 権利義務・事実証明業務を開拓せよ その2
             ☆ 事件性不要説の破綻
             ☆ 非弁との分かれ目



     □ 権利義務・事実証明業務を開拓せよ その2
             
    ☆ 事件性不要説の破綻
 弁護士法第72条の「法律事件」の解釈を巡っては、事件性必要説と事件性不要説が
あります。 学者の通説或いは法務省、総務省、検察庁の実務が事件性必要説に立っ
ているのに対して、日弁連だけが未だに事件性不要説に立っています。

 さて、平成16年4月1日の改正では、弁護士法第72条但書に「及び他の法律」が付加
されました。
 この結果、行政書士法所定の行政書士業務は、弁護士法第72条の適用から外れる
と解釈する人もいます。

 しかし、日弁連は「本条は刑罰法規であることから、他の法律で法律事務の内容を
明確に特定されなければ、かえって疑義を生じさせる。  少なくとも規制対象となる
範囲・態様について予測可能性を確保する為には、制限的に列挙する方法、例示を
列挙した上「正当業務行為」として特定する方法などその具体化を検討すべきである」
と批判しています。
 
 結局、今なお議論が燻っているのです。
しかし、仮に事件性不要説に立ったとしても、隣接法律専門職の業務は事件性の有無
に関係なく正当業務行為だとして整合性を図らねばならないだろうと考えられます。

 弁護士法第73条に関しては、最高裁判決(平成14年1月22日)があって、
みだりに争いを誘発・助長する恐れがなく、社会的経済的に正当な業務の範囲内
にあると認められる場合であれば、弁護士73条に違反せず」と判示しています。
                    → 判決の詳細
 弁護士法第73条の趣旨→ 弁護士でない者が業として他人の権利を買受て実行するのを禁止。
                          
この判例が、弁護士第72条の解釈にあたりキーとなる判例とされているからです。
                          
 余談になりますが、日弁連が事件性不要説を捨てない為、弁護士事務所が生産性を
上げられず困っているといいます。
 どういうことかと云いますと、弁護士が何もかも一人でやらねばならないので弁護士の
年平均の受任件数が30件程度でしかないのです。

 その結果、報酬が100万円以上の案件なら受けるが、消費者トラブルなどの低額案件は
受けられないという状況なのです。  パラリーガルを沢山使って生産性を上げたりすると、
弁護士会から非弁だと睨まれたりするらしいのです。

     参考 → 西田研志弁護士著「サルでもできる弁護士業」(幻冬社)
                          
 このように、日弁連の事件性不要説は自ら弁護士の首を絞めるという笑えない結果を
招いているのです。
 西田研志弁護士に拠れば、欧米の弁護士がやらなければならない仕事は裁判業務
だけに絞られていて、その他の法律事務は自由化されているといいます。


     ☆ 非弁との分かれ目
 我々行政書士は実務家であり、依頼者のニーズに応えて粛々と業務を遂行して成果
を上げねばなりません。
法務省、総務省、検察庁の立場(事件性必要説・正当業務行為説)又は判例から見た
非弁との分かれ目について整理すると以下の通りです。

 <非弁でないもの>
 1 交通事故に関する損害保険金請求の手続き
  ・過失割合や賠償金額で対立があっても、加害者が事故の責任を認め示談で解決
  する意思を示している場合 →事件性はない。  
                         ↓                   
  ・依頼者の主張をまとめた書面を代理作成して送付する行為
   → 行政書士法所定の事実証明・権利義務に関する書類の作成である。
      示談交渉の主体は当事者であるから、示談交渉の代理ではない。
                         ↓
  ・双方の意向を確認して和解契約書を作成する行為
          →権利義務又は事実証明に関する書類の代理作成である。

 2 行政書士が自ら成年後見人となって申立をすること及び成年後見人として
   その業務を行うこと →正当業務行為である。

 3 内容証明郵便や告訴状の代理作成
   →行政書士法所定の権利義務又は事実証明に関する書類の代理作成である。
    ※ 司法書士の訴状作成が司法書士法所定の業務であるのと同様、書類作成に限っては、
      事件性の有無は問題にならないとする解釈があります。

      
 4 相続人間に争いがない場合に相続人に対し分割方法や相続に関する法令や判例
  について説明する行為、及び助言説得を含めて相続人間の合意形成をリードし、
  遺産分割をまとめる代理行為及び遺産分割協議書を作成する行為
   →権利義務又は事実証明に関する書類の作成代理である。

 5 当事者間に意見や主張の相違があり一時的に対立したとしても、法的なアドバイス
  を行いながら協議し、双方の合意形成が達成できる見通しがつき最終的に書面に纏め
  上げる行為
   →権利義務又は事実証明に関する書類の作成代理である。
     ※ 民法第108条但書の双方代理であるとする解釈があります。

 <非弁とされるもの>
  ・損害賠償額やある事実の法的評価(当事者の行為が法的にどの程度の過失があっ
   たかなど)について訴訟や調停に準ずる程度に紛争が具体化した事案への介入
  ・行政書士が代理人となり直接単独で相手方本人と示談交渉をすること
    ※ なお、本人が同席しての示談交渉なら非弁ではないという考えがあります。
  ・行政書士が成年後見に関する相談を受け報酬を取って申立をすること
  ・事件性のある債権(通常の手段では回収困難である場合、最高裁昭和37年10月4日判決)
   の取立てを行政書士が業として行うこと。

 <行政書士の業務でないとされるもの>
  ・ 行政書士の登記申請代理 → 正当業務行為でもなく、本来の業務に付随する正当な行為
     でもなく、司法書士法違反である(最高裁平成9年5月23日判決)




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