インターネット行政書士のフロンティア戦略  第67号   
                 平成21年4月10日発行 
    民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
          □ 権利義務・事実証明業務を開拓せよ
             ☆ 権利義務・事実証明に関する文書とは
             ☆ 弁護士法第72条との関係



     □ 権利義務・事実証明業務を開拓せよ

    ☆ 権利義務・事実証明に関する文書とは
  行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て権利義務又は事実証明に関する文書を
作成することが出来ます(行政書士法第1条の2)。

  尤も権利義務又は事実証明に関する文書の作成は、弁護士法第3条でいう
「その他一般の法律事務」に当たりますから、弁護士の業務であるのは当然です。 
しかし、弁護士法第72条但書の「他の法律に別段の定めがある場合(つまり行政書士
法第1条の2の存在)はこの限りでない」により、行政書士でも作成が出来るのです。

  もちろん、無報酬ならこれらの文書は誰でも作成出来ますが、
他人から報酬を取って作成出来るのは弁護士と行政書士だけなのです。

 また、弁理士、公認会計士、税理士は、行政書士となる資格を有します。
しかし、行政書士と同じ範囲でつまり網羅的にこの業務をやって報酬を取るには、
行政書士登録をする必要があるのです。
                        
  こう見て来ると、権利義務又は事実証明に関する文書の作成業務に関しては、
行政書士には代理権もあり、弁護士と殆ど変わりない権限があると云えます。
  これだけの権限が与えられている分野であり、研鑽を積めば業務の拡大が
期待出来るフロンティアがここにあります。
 
  ところで、権利義務と事実証明の用語は、刑法第157条の公正証書原本等不実
記載罪と刑法第159条の私文書偽造罪の条文の中で使用されており、
解釈と具体例については判例があります。

 そこで、今日はこの辺りを整理して見ます。
                        
 まず、権利義務に関する書類とは
 → 権利の発生、存続、変更、消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示
  を内容とする書類をいいます。  これには私法上のものと公法上のものがあります。
  財産関係に関する証書の他、婚姻・養子縁組の届書のような身分関係に関するもの、
  民事・刑事の訴訟に関する文書でもよいとされます。

    また、権利義務の成立要件になっている文書の他、単に権利・義務の存否を証明する
  性質の文書や権利義務に変動を与える可能性を有する文書も含まれるとされます。

<例>  契約書、示談書、内容証明郵便、会社設立時の原始定款、遺産分割協議書、
   就業規則、自賠責保険金請求書その他各種の請求書、境界確定書、念書、覚書、
   辞令書、借用証書、債権譲渡通知書、領収証、株主総会議事録その他各種議事録、
   催告書、各種の請求書・申込書、告訴状、行政手続法に基づく聴聞又は弁明の為の
   意見陳述書その他添付書類、情報公開法に基づく開示請求書・・・・・・etc 

 次に、事実証明に関する書類とは
 → 実社会生活に関わる交渉を有する事項を証明するに足る文書をいいます。

   つまり、世の中に存在している事実又は存在していた事実で法律上の効果を発生
 させない事実を単に書面化した文書が、事実証明に関する文書だということです。
   
<例.> 実地調査に基づく各種図面(位置図、案内図、現況測量図等)、会計帳簿、家系図、
   相続人関係図、営業所の見取図、郵便局に対する転居届、画書の箱書、推薦状、
   新聞広告、寄付金の賛助者名簿、事故発生状況報告書、遺言書原案、財産目録、
   葬儀収支計算書、原始定款を改訂した定款、各種の連絡文書・・etc

 ※ なお、営業所の見取図を営業許可申請書の添付書類として作成すれば、「官公署に提出する
  書類」となりますし、会社設立時に作成する定款は、権利義務に関する
文書とされますから、
  権利義務の文書か事実証明の文書かは固定的に捉えられない面があります。

                          
  このように凡そこの世に存在する文書というのは、社会的に無価値なものを除き、
権利義務又は事実証明に関する文書に該当すると考えてもいいと思います。
  逆に、文書を権利義務又は事実証明に関する文書だと積極的に見做すことで、
そこから行政書士業務を開拓出来ることになります。


    ☆ 弁護士法第72条との関係
 
  行政書士は、弁護士法第72条の「法律事件」には関われません。
この「法律事件」とは何か。  同法第3条で「法律事務」と云っているのに対し、
同法第72条では「法律事件」と明記し明らかに区別して使用しています。

  この事実を重視する罪刑法定主義の観点や隣接法律専門職との調整を考慮する
観点等から、紛争性(事件性)のある法律事務が「法律事件」だという解釈(事件性
必要説
)が、法務省、総務省、検察庁等の実務の現場では支持されています。
 
  次に、事件性の程度ですが、「訴訟など弁護士法第72条に列挙される事項と
同程度
に紛争が成熟していること」とされ、また「紛争性は抽象的な予見可能性
では足りず、具体的な蓋然性が必要である」とされます。
                       
  要するに、「訴訟事件、非訟事件、及び審査請求、異議申立て、審査請求等行政庁
に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関し鑑定、代理、仲裁若しくは和解
その他の法律事務・・・・」(弁護士法第72条)と同程度に紛争が成熟しているか又は
同程度の紛争に成熟する具体的蓋然性がある場合でなければ、
法律事件にはならないということです。

  もう少し具体的に述べます。
示談交渉は、法律事件でない限り行政書士でも可能ということになる筈です。
例えば、交通事故に関する損害保険会社への保険金請求事務は、既に行政書士が
やっています。 

  加害者が責任を自認している場合に行政書士が損害保険会社と過失割合や賠償額の
交渉を代行をすることは、紛争性が具体的でなく法律事件に当たらないとされるからです。

  そうだとしても、事故発生状況報告書などの文書作成つまり代行が主で、行政書士は
示談交渉の代理までは出来ないと考えるのが一般です。

  しかし、事件性必要説に拠れば、弁護士の独占とされるのは法律事件なのです。
この解釈からすれば、事件性のない交通事故案件なら行政書士も示談交渉の代理が
出来ると考えてもおかしくない筈です。

  尤も、加害者が途中から賠償責任を否認したり訴訟や調停で争う意思を表明して、
紛争性が蓋然化することがままあります。 そうなったら、行政書士は速やかに離脱
する必要があります。

  文書作成と提出のみにつまり示談交渉の代行に限定していれば、いつ起こるとも
限らない状況の変化に対応しやすということなのかもしれません。



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