行政書士もぐもぐ......自分流情報発信  第57号
             平成20年4月1日発行 

            今回の目次
        □ 会社は商人である
        □ 消費者契約法の事業者について



    □ 会社は商人である

 会社が商人であるとは、当たり前の話ではないのと思われるかもしれません。
しかし、商法には会社が商人であるとは書いていないのです。 
その結果、最高裁が平成20年2月22日付判決の中でそう判示しなければならなかった
という次第です。     → 判決全文 

  事案は1億円の貸付金の時効を巡るものですが、5年の商事時効が認められるには、
会社の貸付行為が商行為と認定される必要があり、
その前提として会社が商人であるとされる必要があったのです。
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  最高裁判決では、会社法と商法から次のように解釈しています。
会社法第5条には、「会社(外国会社を含む)がその事業としてする行為及び
その事業の為にする行為は
商行為とする
とあるので、
商法第4条1項
「自己の名をもって商行為をすることを業とする者」により
会社は商人になるという訳です。

 
また商法503条2項では、「商人の行為は、その事業のためにするものと推定する」
とあるので、会社の行為は商行為と推定され、これを争う者において当該行為が
当該会社の事業のためにするものでないこと、すなわち当該会社の事業と無関係である
ことの主張立証責任を負う
としたのです。

  結局、商事時効を否認する方が会社の貸付行為が会社の事業の為にするものでない
との立証に失敗しましたので、貸付行為は商行為とされ、5年の消滅時効が適用されて
敗れたのです。
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  このように商事債権か通常債権かを巡って最高裁まで争われることがあるのです。
この会社の代表は友人に情誼から貸付けた通常債権だと主張したのですが、
情誼から貸付けたということが会社の事業と無関係であることの立証がなされたということ
にはならないと最高裁に判断されてしまったのです。

 会社名義ではなく個人貸付けにしていればと思いますが、もう後の祭りです。



     □ 消費者契約法の事業者について

  消費者契約法は、消費者と事業者間の契約に適用されます。
まず、法人その他の団体が事業者とされます。
法人であれば営利性に関係なく事業者になりますので、商人の概念より広いのです。

  これは法人であれば同種の行為の継続反復性があり、同種の行為に関する情報・交渉力
の点で消費者と格差が生じていると見るからです。

  次に、個人が事業として又は事業の為に契約の当事者となる場合も、事業者とされます。
個人自営業者からフリーライターまで含まれることになります。
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  もっとも、この場合でも商法502条但書の趣旨が適用されると思います。
つまり、専ら賃金を得る目的をもって物を製造し又は労務に服する者は、事業者には
当らないことになります。

  形式的に営利取引に見えても企業化しているとは云えない場合です。
内職商法の単純入力業務を自宅のパソコンで行う者は当然として、自宅でエステ業を
一人で営む人や自宅でマッサージ師をする人などは場屋取引(じょうおくとりひき、営業的
商行為)には当らない以上、事業者にならないと考えます。
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  フリーカメラマンは、撮影が営業的商行為となりますが、一人でバイト的にやっている
場合なら事業者ではないと思います。

  屋号のある理髪店の自営者はどうでしょうか。 古い大審院判決によれば場屋取引
でないとされていますが、これは髪結い時代の理髪店だとして否定する人もいます。

  しかし、従業員を使わず家族のみでやっている理髪店なら、専ら賃金を得る目的で労務に
服する者と云えると考えます。
  ある程度の機械器具を入れないとやれない精米業を、主として自己の労力を用い、機械を
補助的に使っているとして、商行為としない判例があります。



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