インターネット行政書士のフロンティア戦略  第 167号   
                      令和4年2月21日発行 
           
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                         今回の目次
                □
自動車業界のパラダイムシフトとは何か



  トヨタが昨年12月、2030年までに4兆円規模のEV関連投資(内2兆円はバッテリー
開発)を行い、EV30車種で年350万台を販売する計画(従来の計画は250万台)を発
表しました。

  その一方で、トヨタはHVや水素自動車の開発と販売も継続するとし、欧米のメー
カーとの違いを示しました。


  ボルボは2030年までに全車種のEV化、フォルクスワーゲンは2030年まで70車種
EV500万台(全体の5割)の販売、アメリカは2030年までに新車の5割をEV化、EUは
2035年までにHVを含むガソリン車の新車販売の禁止、を目標に掲げています。

  トヨタが前面EV化を打ち出せない理由として、次のことが考えられるとされます。

 ・  トヨタが年間950万台を販売している170カ国の中で欧米以外はガソリン車に
  依存する国が圧倒的に多く、トヨタはこれらの国に輸出する為にCO2の排出を削
  減するエンジンの開発に力を注いで来た経緯がある。

 ・   バッテリーの生産は膨大な電気を消費する。 石炭を燃やし発電している火
  力発電所からは多量のCO2(別名を温室効果ガス)が排出されている。  
    このままではCO2の削減に繋がらない。

 ・  バッテリー充電施設を全国的に設置する必要がある。 それを誰の負担で建
  設するかという問題がまだ未解決である。

 
  そもそも、EV化の狙いは、地球温暖化の元凶とされた自動車排気ガスに含まれ
るCO2の削減にあった筈です。
  
  なので、石炭を燃やし多量のCO2を排出している今の火力発電所のままでは、
EV化の目的は達成されないことになります。

  この点に関しては、CO2の出ない水素やアンモニアを燃やして発電する技術が
開発されつつあり、日本政府も1000億円規模の支援を表明しています。


  さて、トヨタの豊田社長が2、3年前に「自動車業界で100年に1回(フォードが1908
年に大量生産を開始して以来)のパラダイムシフトが起きようとしている」と、話した
ことがあります。

  その時はEV化のことかと思いましたが、その具体的な中身はそんな単純なこと
ではないのです。

  井上久雄氏に拠れば、その中身は以下のようなものだと云います。

1 「CASE」の進行に伴い、ソニーを始め自動車産業以外のIT企業からの新規参入
 が増えている。

  「CASE」とは、クルマに見られる次の変化を意味する。
   C・・・・Connected   ソフトエアで固められたクルマ、ネットに繋がりソフト
                ウエアの新機能を即座に使えるクルマ  
   A・・・・Autonomous  ネットの指示で自動運転する無人のクルマ
   S・・・・Shared      シェアして使用するクルマ
   E・・・・Eelectric    バッテリーで動くクルマ


2  バーチャルエンジニアリングという開発手法が台頭している。

  パソコンの画面上で自動運転車を設計するソフトウエアの開発でドイツのIPG
 社が抜きん出ており、この会社の製品なくして自動運転車の開発は出来ない
 とまで云われている。

  EVはソフトウエアがエンジン車より複雑で、開発期間を短縮する為にはバー
 チャルエンジニアリングを使う必要がある。


3  量産部門を持たない開発会社(エンジニアリング会社)と完成車メーカーの
 分業により開発のスピードを高めている。

 
  日本の自動車産業は500万人の雇用を支えています。  その多くは関連の
部品メーカーや販売会社の従業員です。  EV化に伴い部品の数は半減します
から、部品メーカーは今のままでは生き残れません。

  脱炭素も重要ですが、EV化による労働者のシフトという解決すべき大問題が
あるのです。


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