インターネット行政書士のフロンティア戦略  第153号   
                      令和2年2月19日発行
           
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                         今回の目次
                   □
営業譲渡と債務の承継について



  行政書士を15年やって来て、営業譲渡について相談されたことが殆どなかったので、譲渡人
の弁済義務はどうなるかなども考えたことがありませんでした。
 
  最近、信用保証協会の代位弁済後の時効援用について相談を受け、営業譲渡が絡んで
いることが分かって、営業譲渡による債務の承継について勉強せざるを得なくなりました。
 
  私が理解したことを整理すると以下の通りです。

1  平成18年(2006年)5月1日施行の会社法では「事業譲渡」の用語が使用されているが、
 商法で使用されている「営業譲渡」とはほぼ同義である。
  
2 「営業譲渡」とは顧客関係も含んだ営業活動ごと譲渡することであり、営業より生じた債務
 も移転するのが通常である。

3  といっても、譲受人は譲渡人との合意により債務を承継するのであって、譲渡人が支払義
 務を免れる免責的債務引受の場合には債権者の同意も必要になる。
  債権者の同意を得ていない場合は、併存的債務引受になり、譲渡人と譲受人の双方が
 支払義務を負う。

4  債権者の同意を得ずに債務を旧会社に残し事業を新会社に移転しても(いわゆる債務逃
 れ的な事業譲渡)、平成27年(2015年)施行の改正会社法から債権者は譲受会社に対し債務
 の弁済を請求出来ることになった。

5  事業を譲渡した譲渡会社又は個人事業主は、競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)を負う
 (会社法第21条、商法第16条)。  これは強行規定である。

6 事業譲渡に対する会社法と商法の適用関係については
 
   会社対会社・・・会社法
   個人事業主対個人事業主・・・商法
   会社から個人事業主に事業譲渡・・・商法17条及び商法18条
   個人事業主から会社に事業譲渡・・・会社法22条及び23条


  私が受けた相談(相談者をAさんとする)というのは、個人事業主時代に銀行から借りたローン
を友人の会社に譲渡し、本人は友人の会社に雇われ、それまでの個人事業は廃業したが、
信用保証協会の代位弁済以後、Aさんは友人の会社から一部弁済に当てる金額を受取って
毎月支払っていたというものです。

  当事務所でこれまでよくあった相談は、会社が借りた債務を連帯保証人として支払っていた
ケースでした。  このケースでは会社が5年以上支払いをストップしている場合、連帯保証人は
時効援用が可能になります。
 
  しかし、今回の相談のケースでは、免責的債務引受が成立していない限り本人は主債務者とし
ての弁済義務を免れず、しかも一部弁済の度に時効は中断していたことになります。

 Aさんは営業譲渡などをせず、個人事業を法人化して連帯保証人になり一部弁済していたとい
うのなら時効援用の可能性はあったかもしれません。


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