インターネット行政書士のフロンティア戦略 第139号
平成29年9月8日発行
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。
今回の目次
□ 高齢者学事始め その3
日本の高齢者はなぜキレやすいのか
高齢者学とは私が勝手に作った言葉ですが、要するに高齢者特有の問題を整理して、
行政書士の仕事に繋げることを考えようというものです。
これまでの老人のイメージと大分違うキレやすい高齢者が日本で増えています。
それはなぜかを考えてみます。
欧米では「歳を取ると、より性格が穏やかになり優しくなる」というのが定説で、それを実証
するデータも多いのです。
脳科学的には、「歳を取るほど、脳の前頭皮質が薄くなりより皺になることなどから、気が
長くなり穏やかになる」からだとか、
「歳を取ると神経質ではなくなり、感情をコントロールしやすくなり、同時に誠実さや協調性が
増し、責任感が高まり、より敵対的でなくなる」からだと云われています。
そして、欧米では、幸福度が若い頃に高く中年に低くなり高齢になってまた上がって来る
Uカーブを示すというのです。
しかし、今の日本では怒りやすい高齢者が増えており、高齢になっても幸福度が上がって
来ない人が多いようなのです。
私が任意後見の仕事で3年間接している70代前半のAさんをその観点から見てみます。
有料老人ホームに入居して2年になりますが、他の入居者と親しくしようともせず、部屋に籠
って映画のDVDを見たり世界文学の本を読むのが唯一の趣味です。
高学歴の人なのですが幸福度が高いとは思えませんし、一度キレたことがあります。
これからは私見になります。
私が小学生だった昭和30年代の日本には、欧米に多いという穏やかで優しい高齢者が周り
に多かったように思えます。 私の父と母のそれぞれの祖父祖母もそういう印象でした。
私は祖父から何かある度に白い封筒に入ったお小遣いを貰った記憶があります。
私の祖父や祖母の学歴は高等小学校よくて旧制中学か女学校まででした。 戦前ではそれ
が普通だったのです。
その点、Aさんは団塊の世代よりやや少し前の世代ですから、大学進学率はまだ10%位の頃
で同世代から見れば羨まれるエリートです。
そんなAさんがなぜ幸福度が高くないのかです。
ある識者によれば、都市化、過疎化、核家族化、少子化などが社会的孤立感を深めさせ、
承認欲求が満たされる機会が殆どなくなったからだと云います。
Aさんは大手企業の会社員で、50歳代をバブル崩壊後の不況下で過ごし60歳で退社してい
ますが、その前後にうつ病を発症しており、今も完治していません。
学歴的には役員として残ってもおかしくないAさんですが、不況がその夢を断ったのです。
Aさんのような人は日本に沢山いる筈です。
Aさんは昭和40年代~昭和50年代の奇跡の高度経済成長を支えた企業戦士の一人であり、
会社の為に自己本位の生活を犠牲にした人生だったと思います。
それが定年を迎えると、それとは真逆の生活が待っていたのです。
私から見ると、Aさんはもう少し老後の生活設計をしておくべきだったと思います。
しかし、企業戦士時代は全てを会社に吸収されているような生活ですから、その余裕もなかっ
たのでしょう。
日本人の高齢者の幸福度の低さは、企業戦士だったことと深い関係があるのではと私は
考えます。
企業戦士というのは謂わば過剰適応なのです。 会社に全てを捧げることが快感になっ
てしまっているのです。
欧米では夏休みを1ヶ月も取ります。 日本人なら何をしたらいいのか分からなくなるような
長期休暇の中で、欧米人は幸福とは何かとか定年後にどう過ごすかを考えたりするのだろうと
思います。
しかし、日本ではそんな時間もなく働かされて定年を迎えます。
仕事をすることが楽しみであった日本人は、退職後にその楽しみがなくなるのですから、心が
空洞化するのも当然です。
定年後は、会社本位の生活から自己本位の生活への転換という真逆の生活が待っています。
定年後に何をやるか考える余裕も持てなかった人は、自己本位の生活つまり自分のことを考え
ればいい生活に不適応になってしまうのです。
この不適応感こそが、低い幸福度とキレやすい高齢者の正体なのかもしれません。
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