インターネット行政書士のフロンティア戦略 第118号
平成26年9月4日発行
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。
今回の目次
□ 司法書士受難の時代
最近、司法書士が後方から支援した過払金返還本人訴訟(地裁)が、民事訴訟法第
54条1項に違反するとして却下された事案があります(富山地裁平成25年9月10日判決、
確定)。
同判決の要旨を、以下に整理して書きます。
イ 訴状、答弁書又は準備書面等の作成は、他人から嘱託された趣旨内容の書類
を作成する場合であれば、司法書士の業務範囲に含まれる。
ロ 紛争の当事者からの委任を受けていかなる趣旨の内容の訴訟行為を行うべ
きかを判断し訴訟行為を策定する事務は、弁護士の固有の業務とされる。
ハ 司法書士がいかなる趣旨内容の書類を作成すべきかを判断しその判断に基づい
て書類を作成する場合は、弁護士72条に違反するものと解される。
ニ 裁判所に提出する書類が原告本人の名前で作成されていても、当事者が非弁護士
に対して訴訟行為を策定する事務を包括的に委任しその委任に基づき非弁護士
が策定したものと認められる場合には、非弁護士である司法書士が実質的に訴
訟行為を代理して行っているものと考えられる。
上記過払金返還本人訴訟(地裁)では、実質的に司法書士が訴訟行為をしているのと
同じだと認定されて、民事訴訟法第54条1項(弁護士代理の原則)に違反するとして却下
されたのです。
これから云えることは、司法書士が出来るのは他人から嘱託された趣旨内容の裁判
書類の作成までであって、本人訴訟の支援(原告から包括的に委任されて司法書士が
主体的に訴訟行為を行う場合)は、司法書士法第3条1項4号に基づく裁判書類作成業務
ではないと云うことです。
上記訴訟の司法書士は、本人から印鑑を預かり裁判書類を本人に確認することもし
ないで、印鑑を押印して裁判所に提出していました。
司法書士が作成した裁判書類が実質的に依頼者名義の書面となるのは、依頼者が
当該書面を依頼者自らの主張書面として裁判所に提出することを決意して署名(記名)
押印することが必要だということです。
過払金返還訴訟は、近年の司法書士業務の中でドル箱の感があったと思います。
そして、多くの司法書士は依頼者から包括委任させて本人訴訟の形式で対応していた
と思われますが、本判決によりこのような本人訴訟支援行為が出来なくなたのです。
要するに、司法書士法第3条1項4号で司法書士の業務とされる裁判書類作成業務
というのは、依頼者が主張する内容(事実、意思及び思想内容)を司法書士としての
法律判断に基づいて法律的に整序し、法的書面として構成する義務のことなのです。
そして、地裁以上の訴訟代理人に司法書士はなれないのですから、依頼者は司法
書士作成の裁判書類の内容を確認し自ら押印して自己の責任において作成した裁判
書類(依頼者名義の書面)として提出することになるということだと思います。
行政書士と弁護士間の業際問題を考える上でも大変参考になる判決と思います。
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