インターネット行政書士のフロンティア戦略 第106号
平成25年6月18日発行
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。
今回の目次
□ 自筆証書遺言は封をせず受遺者に保管させよ!
被相続人が自筆証書遺言を残して亡くなったら、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認
を受ける必要があります。
検認の申立義務は遺言書の保管者、または保管者がない場合は遺言書を発見した
相続人にあります(民法1004条第1項)。 つまり、相続人以外の者が発見しても申立
義務はないのです
そこで、検認や遺言執行が円滑に実施される為には、遺言書を秘密に隠して置くのでは
なくて受遺者等に保管を委ねることが遺言者に求められているのです。
具体例で申しますと、相続人が兄弟姉妹で日頃から連絡がないとします。 全財産を
相続人ではない世話をしてくれた遠戚の人に遺贈する遺言書を作った場合、その受遺者
に遺言書の保管を委ねるべきだということです。
もしその遺言書が自分で保管していて誰も知らないとしたら、相続人により発見されない
限りは兄弟姉妹による遺産分割協議により遺産分割が実施されて受遺者は貰えなくなります。
つまり、折角遺言書を作っても保管者がいないとすれば、事実上遺言書が存在していな
いのと同じことになってしまう危険があるということです。
さて、検認とは、相続人に対し遺言の存在とその内容を通知し、遺言書の形状、加除
訂正の状態、日付、署名など検認日における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造
・変造を防止するための一種の検証手続です。
検認期日に関する通知書は、家庭裁判所から相続人全員に発送されます。
封印のある遺言書は、相続人又はその代理人の立会いの下でしか開封出来ませんから
(民法第1004条3項)、相続人の誰か一人は検認期日に出席する必要があります。
しかし、封印されていない遺言書の場合なら、検認期日には申立人が出席すればよく、
相続人全員が欠席しても検認手続きは実施されます。
これからすれば、むしろ受遺者が相続人以外の者である場合には、遺言書に封印をしない方
が受遺者にとって利便性があると云えます。
検認終了後は遺言書に検認済証明書が付せられ、追って検認調書が交付されます。
参考 →検認の申立、裁判所のHP
検認は遺言書の現状をありのままに確認するだけの証拠保全手続きであり、遺言
内容の真否・有効無効の判定まではしません(大審院大正4年1月16日判決)。
従って、検認を受けても遺言書の効力を後で争う余地は残されています。
つまり、遺言が有効になるには、作成時に意思能力と遺言能力があったことが要求されます。
例えば、遺言者が作成当時に痴呆症に掛かりとても遺言能力があったとはいえない ことが立証
されれば、遺言書は無効になります。
意思能力 →是非の判断が出来る能力、7歳〜10歳くらいの子供の精神能力とされる。
遺言能力 →遺言の意味やその法律効果が理解出来る能力をいい、中でも「どの財産を
誰に贈るか」を理解する能力が一番重要です。
遺言能力については → 公正証書遺言が無効とされるケースとは?
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