インターネット行政書士のフロンティア戦略  第103号   
                 平成25年2月12日発行 
      
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                  今回の目次
           □ 脅迫罪、強要罪の成立要件について

  最近、顧客の弁護士から「150万円を14日以内に振込まない場合は、刑事告訴も
検討する」という脅し文句の記載された内容証明郵便が届きました。

  私が顧客の依頼で行なった業務は、時効援用の内容証明郵便を作成・送付です。
しかし、送付後に免責的債務引受契約書という本人の覚えのない書面が債権者から提
示され、時効が完成していないことが分かりました。

  結局、相手方から提訴されたが、頼める弁護士が見付からず本人訴訟で対応して
全面敗訴となり、控訴審でやっと弁護士を付けて和解したが和解金額は高額で実質
敗訴というべきものでした。

  私は本人訴訟を推奨したことなど一切なく、顧客は本人の意思で本人訴訟を決断
したのです。

  それなのに敗訴した腹癒せか、顧客は私が原因で弁護士に委任する機会を奪われ
莫大な損害を受けたと言いがかりを付け、150万円の請求を弁護士にさせているのです。
もちろん、150万円の法的根拠など全くありません。

  問題なのは、150万円を無理やり支払わせる為に「刑事告訴を検討する」という言葉を
弁護士ともあろう者が書いて来ていることです。

 調べて見ると、どうも脅迫罪、強要罪に当たる可能性があるではないですか。
以下でその理由を整理致します。

「人またはその親族の生命、身体、自由、名誉、又は財産に対し、害を
加えるべきことをもって脅迫する」ことが、脅迫罪刑法第222条です。

「人またはその親族の生命、身体、自由、名誉、又は財産に対し、害を
加えるべきことをもって脅迫し、又は暴行を用い、人をして義務なきことを行わせ、
又は行うべき権利を妨害する」ことが、強要罪刑法第223条です。

  まず、「害悪の告知」があるかですが、、それは「人を恐怖させるに足りる程度のもの
で、四囲の状況に照らして判断される」(最高裁昭和35年3月18日判決)もので、害悪が
告知者によって左右されるものとして告知されることが必要です。

 そして、脅迫罪は危険犯ですから、被告知者が現実に畏怖することまでは必要なく、
通常人の感受性を基準として畏怖が生ずる程度の害悪の告知があればよいとされます。
 
  判例では、「告訴の意思が不確定であるのに、ことさらに告訴すべきことを通知する
のは害悪の告知に他ならない」(大審院大正3年12月1日判決)、

「他人を畏怖させる意思で、畏怖させるおそれのある害悪の通知をすれば、たとえ
害悪の発生を望まず、またその他人に畏怖心を生じさせなかったとしても、脅迫罪
が成立する」(大審院大正6年11月12日)

「他人から財物または財産上の利益を受ける権利のある者でも、その権利を実行
する手段として、害悪の通知をすれば、脅迫罪の責任は免れない」
(大審院昭和5年5月26日判決)と、判示しています。

  私は正直、「刑事告訴を検討する」という言葉を見て、恐怖心を覚えました。
これは明らかに「害悪の告知」です。
 告知者が人に対する害悪の告知になると認識・認容していたとすれば、脅迫罪の
故意に欠けることはないと思われます。

  そうすると、相手は畏怖させる目的で私の身体、自由、名誉、財産に対し害を加え
ることを告知し、告訴の取下げを条件に金銭の支払いをさせようとしていると取れ
ます。  強要罪は未遂でも成立するのです。

  ストーカー行為を禁止する為にそう書くならまだしも、民事責任の有無の検討
もしないでそのように書いてしまうというのは、軽率だったでは済まされない筈です。



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