インターネット行政書士のフロンティア戦略  第98号   
                 平成24年7月16日発行 
     
民事法務のフロンティアに鉱脈を目差すインターネット行政書士のマインドと戦略。

                 今回の目次
           □ 事業者は訪問販売業者と絶対契約するな

     
  
  ホームページリース・クレジット提携商法に代表される最近の詐欺的商法は、販売会社が
コンサルティングやメンテナンスの特約を最大の売りにして事業者に訪問販売を掛けて来ます。
 
  販売業者はホームページの作成に付随してSEOなどのコンサルティングをしますからと勧誘し、
商談の最後の方で「ソフトウェアとセットになっています」などと云って高額なソフトウェアのクレ
ジット契約又はリース契約を取付けるのがこの商法の特徴です。

  簡単に云えば、業者は1万円程度の価値しかない汎用ソフトウェアを100万円〜200万円と
いう法外な値段で買わせてクレジット会社又はリース会社から代金相当額を騙取する目的の
為に顧客を道具として利用しているのです。

  販売業者はホームページを完成させずに倒産してしまうことが多く、契約者は最も重視して
いたコンサルティングが債務不履行となったのに、リース会社やクレジット会社への支払だけが残
って騙されたと気付きます。

  もし契約者が消費者ならクレジット契約の場合、法律による保護が近年大変厚くなっており
状況ががらりと変わります。

支払い停止の抗弁という従来からの権利が使える他、改正割賦販売法によりクレジット契約の
クーリングオフ 及び不実の告知・不利益事実の不告知による取消が可能となり、既払クレジット
代金の返還まで認められています。

  実際には既払クレジット代金の返還までは中々行かないのですが、未払クレジット代金は免責
となるのが一般的です。

  しかし、被害者が事業者となると、救済がなかなか一筋縄で行かないのです。
契約書を見るとサービス特約の記載がなく、クレジット会社又はリース会社は営業の為の取引
であるとして弁護士を付けて訴訟を提起して来ることがあります。

  もちろん、事業者の契約であっても法律では「営業の為に若しくは営業として」の取引でないこと
を主張・立証すれば、支払い停止の抗弁が認められることになっています。
 
「営業の為に若しくは営業として」が成立する要件として「営利目的」と「事業性」の両方が必要
とされています(経済産業省の公権的解釈)。
判例としては、大阪高裁平成15年7月30日判決があり、自動車の整備会社が消化器を訪問
販売業者から購入しても
営利目的がないとしてクーリングオフを認めています。

  しかし、この判例をホームページクレジット提携商法に当て嵌めるのは難しく、結局詐欺による
取消か暴利行為による無効を主張することになりますが、クレジット会社はまず認めず平行線
を辿ります。  
 裁判になった場合には、残元本の何割カットで和解しているようです。

  ただし、リース契約の場合は、規制する特別法がないだけ訴訟になり易いのかと思うとそうでも
なく、リース会社はリース契約を解除して一括請求をして来るものの訴訟までは中々起こして来
ないのです。
多分、世論で悪徳提携リースの問題が認知され、全国の弁護士会が国会に立法制定の請願
を行っていることと無関係ではなさそうです。

  結論になりますが、兎に角、事業者が訪問販売業者とクレジット又はリースの契約をすると、
拗れに拗れて裁判になっても勝つことは容易でないと肝に銘じるべきです。

  被害に遭っている事業者の殆どは零細個人事業者なのですが、つまり情報という点では業者と
大きな格差があり、商人が本来持っているべき注意力・判断力が身についていないという点では
実質的に消費者と変わりありません。

  しかし、例えば自宅兼用の賃貸マンションの一室で従業員を一人も使わず看板も掛けずに
ネイルサロンを営業して客から報酬を得ている主婦であっても、消費者保護の規定はまず適用
されないのです。

 つまり、事業者は規模に関係なく大企業と同じに扱われるのが法律の建前なのです。

大企業ならば、法務部で契約の前に契約書の内容をチェックしています。
これからは零細事業者もこれに習って日頃から法律の専門家と顧問の契約を結んで、契約に
サインする前に必ず相談する体制を構築することが必要です。

そして、消費者と違って保護が弱いのですから、訪問販売業者との契約は絶対避けるべきです。
これが最大の予防法務になります。

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