情報のコーディネーター  第97号
         
    平成27年2月23日発行
          窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                   今回の目次
             □ 岩田靖夫先生の死を悼む
     


  哲学者の岩田靖夫先生(1932~)が1月28日に肺炎で亡くなりました。 享年82歳でし
た。終戦の時13歳だった先生は 生まれも育ちも東京で、焼け野原になった東京を知っ
ている世代なのです。

  最も多感な時に激しい時代の変化を経験されました。   しかし、先生は空襲とか
戦争の話を本に一切書いていません。   理由は分かりませんが余りに阿呆らしくて
書く気にならないのかもしれない。

  司馬遼太郎(1923~1996)という作家は、学徒動員で陸軍の戦車隊に入り終戦を22歳
で迎えていますが、「終戦の時、日本は何てバカな国になったのだろう。  以前はそん
なことはなかったのではないか。  私の小説群は22歳の自分への手紙です」と文化功
労者(平成15年)に選ばれた時に云っています。

  一方、クリスチャンであった岩田先生の哲学のテーマは、「善く生きる(人間らしい生)」
「幸福とは何か」であり、「倫理の復権」に生涯を掛けた哲学者でした。

  さて、「倫理の復権」とはどういうことなのでしょう。

  畑が違いますが、零戦設計者の堀越二郎氏(1903~1982)は、こう云っています。
「大正昭和の政治家・軍人の上層部は、よき伝統の治める者の道徳を忘れ、さりとて産
業革命いらいの西欧の新しい倫理(人道に裏づけられた合理主義、科学性、責任感)を学
ぶことをせず、おそらく近代文明国のなかでもっとも質の劣る指導層に転落したように思
われる」(「伝承零戦」第1巻 P.21)

  堀越氏は西欧科学技術文明の基底にある「西欧の新しい倫理」を指導層が分かってい
なかったと云っているのです。  

  岩田先生が復権を唱える「倫理」とは、それよりも広く西欧精神史の基底にあるエキス
でした。  そのエキスはソクラテスとイエスという2つの源流から発していました。
  先生には、このエキスそのものが日本人に本当に受容されていないと思えたのです。

  「和魂洋才」と云いますが、先生から見ると「魂」が和に偏り過ぎた結果が敗戦だったの
です。
  先生が語った西欧の「魂」(倫理)とは、「無知の知」であり、「自己絶対化の放棄(自己の
ドクサの危うさの自覚)」であり、「寛容と忍耐という倫理」でした。

  晩年の先生は大乗仏教に接近され、「自己をなくす」という境地に達していました。
先生の「よく生きる」(ちくま新書)、「人生と信仰についての覚え書き」(女子パウロ会)は、
先生の特徴である平易な文章で先生の到達点を語っている名著です。

 
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