情報のコーディネーター 第83号
平成25年4月15日発行
窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。
今回の目次
□ ルビコン川を渡った日銀
黒田新総裁になって最初の日銀金融政策決定会合(4月4日)では、2%のインフレター
ゲット(物価目標)に向けて質量ともに異次元のレベルで金融を緩和する金融政策のレ
ジームチェンジ(体制変換)が決定されました。
2年でマネタリーベース(資金供給残高、市中の現金と日銀当座預金の合計)を2倍
にします。 これにより、2012年末で138兆円あった残高が2014年末に270兆円に
まで増えます。
質の方では、「満期までの期間が5年以上の国債」、「償還期間40年の国債を含む
全ての国債」を買い入れの対象にするほか、ETF(上場投資信託)も2倍に買増します。
「日銀券ルール」(日銀券の発行残高を上回る国債を持たない)は撤廃されたのです。
また、日銀の当座預金の金利(0.1%)も廃止されました。
日銀から銀行に資金が供給されそれが市中に出回れば、お金の価値が下がって
物の価値が上がるだろうというインフレ期待に繋がって、消費者は物価が上がる前に
買おう、企業は上がる前に設備投資しようという気になって全体の景気が上向く筈で
あると考えているのです。
しかし、この異次元の金融緩和策に懸念がない訳ではありません。
まず、資金が株式と不動産に流入することでバブルになり、やがてバブルは崩壊
(平成2年)するのではという心配です。
この時のバブル崩壊以降は、「地価は上がる」ものという土地神話が完全に崩れて
地価は下がり続けています。 土地に投資した多くの人々は膨大な損害を蒙った
のです。
次に、国債の発行残高が800兆円にもなる中、金融政策の手段とはいえ国債の買
入れは、財政赤字を穴埋めする為の日銀融資つまり財政法で禁止する「財政ファイ
ナンス」と変わりないと受け止められないかという心配です。
なお、「財政ファイナンス」とは政府の財政赤字に対し日銀が国債を直接引き受けて
資金を供与することを云いますが、これは始めてしまうと通貨の増発に歯止めが
効かなくなり、悪性のインフレを招くおそれが強いことから財政法で禁じられている
のです。
しかし、日銀が金融政策の手段としてつまりデフレ脱却の為の金融緩和策の一つ
として民間から国債を買い入れで資金を供給するのであれば、財政の赤字の穴埋
めの為でない以上、「財政ファイナンス」にはならないとされます。
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