情報のコーディネーター  第66号
         
    平成22年10月17日発行
          窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                     今回の目次
          □ 消費者金融の正体
             ☆ グレーゾーン金利依存の収益構造
             ☆ 最高裁判決に葬り去られたグレーゾーン金利



   □ 消費者金融の正体

       ☆ グレーゾーン金利依存の収益構造
  消費者金融業者の無担保融資の貸出残高は、平成17年3月末で15兆5000億円あり
ました。   その内、グレーゾーン金利による貸出残高は12兆円で全体の76%(件数で
は80%)に当ります(金融庁の資料より)。

  消費者金融大手4社は平成19年3月期決算で合計1兆7000億円という膨大な赤字を
計上するのですが、前年までは各社の経常利益は1000億円を超えていました。
これだけの利益を稼いでいた収益構造を単純化して書きますと

 融資残高を1兆円とすると金利は年27%ですから →営業利益は2700億円
 人件費その他固定費が1700億円とすると     →経常利益は1000億円になります。

  平成19年4月〜平成20年1月に掛けて大手4社は、最高裁判決(グレーゾーン金利を
原則無効とした)を受けて金利を年18%に引下げています。
 そうすると  融資残高1兆円 金利年18% → 営業利益は1800億円となり
         固定費が1700億円なら    → 経常利益は100億円まで低下します。

  つまり、消費者金融業者の収益というのは殆どグレーゾーン金利に依存した構造に
なっていたということです。

  今、消費者金融各社は過払金返還請求の嵐に見舞われています。 平成17年3月
期の決算が膨大な赤字となったのも、膨大な過払金引当金を計上した結果です。 

  貸出残高の76%がグレーゾーン金利の貸出だったのですから、これから何年も過払
金返還請求が発生し続けることになります。  経常利益1000億なんて話は夢のまた
夢になったのです。
 

     ☆ 最高裁判決に葬り去られたグレーゾーン金利
  利息制限法の上限金利から29.2%(出資法で罰則が課される金利)までの金利を 
グレーゾーン金利といいます。 

  消費者金融業者にグレーゾーン金利の27%での貸出がなぜ可能であったかと云えば、
出資法の罰則が適用されない範囲であったことと貸金業規制法のみなし弁済が完全
否定されていない状態がずっと続いていたからです。

  その間、消費者金融業者は融資残高を年々拡大させて行き、その陰では悲惨な
事態が発生していました。  つまり、高金利という泥沼に嵌まり込んで抜け出せなく
なってしまった悲惨な人々(借りて来ては返すも残元本は減らず逆に増え続けると
いう自転車操業に陥っている)が年々増加の一途を辿っていたのです。

  平成15年の資料に拠れば、多重債務者が150万人〜200万人、自己破産者が
年に20万人、経済苦・生活苦による自殺者が年に8000人と発表されています。
                       
  さて、利息制限法の特別法である貸金業規制法第43条1項の「みなし弁済」規定
は、昭和58年(1983年)に議員立法で成立したものです。
  「みなし弁済」とは、利息制限法の制限金利を超える金利を債務者が任意に支払
った場合は有効とするというものです。

  前々から債務者の中には任意に支払った訳ではないとして過払い返還訴訟を
提起する人はいましたが、下級裁判所の判断は「みなし弁済」の要件を緩く解釈
するものと厳格に解釈するものとに分かれていました。  
 
  上告までは争われず結局「みなし弁済」に関する最高裁判決がないという状態が
長く続いていたのです。
  しかし、東京地裁がATMでの返済に「みなし弁済」の適用を否認する画期的な
判決を出した頃から変化の兆しが見られます。

「  ATMで返済すると、元本、利息、遅延損害金にそれぞれいくら充当したという受領
 明細書が発行されるが、これでは、事後的に債務者が約定金利による利息の額を
 知るに過ぎず、債務者が約定金利による利息としての認識で任意に支払ったとは
 いえない
(平成9年2月22日東京地裁判決)。

  それから7年程経過した平成16年から平成21年に掛けては重要な最高裁判決の
ラッシュとなり、グレーゾーン金利は葬り去られて行くことになります。

判決要旨を簡単に整理しますと
 平成16年2月20日判決 →天引利息に「みなし弁済」は適用されない
 平成17年7月19日判決 →取引履歴の開示義務がある
 平成17年12月15日判決 →リボルビングによる返済に「みなし弁済」は適用されない
 平成18年1月13日判決 → グレーゾーン金利の延滞で期限の利益を喪失する特約
                   の下では「みなし弁済」は適用されない
 平成19年2月13日判決 → 過払い金は年5%の利息を付けて返還すべきである

  この中で最も重要な判決は平成18年1月13日判決(シティズ事件)で、この判決で
貸金業規制法第43条1項の「みなし弁済」規定は空文化したとされます。
  
  この判決を受けて国会が「みなし弁済」規定を削除した改正貸金業法を成立させる
のは、平成18年12月13日のことです。


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