情報のコーディネーター 第47号
[ 旧タイトル 子孫への最大の贈り物 〜巻物家系図を残しませか ]
平成20年12月1日発行
窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。
今回の目次
□ いよいよ裁判員として司法参加
□ 評議・表決に法律知識は要らない
□ いよいよ裁判員として司法参加
平成21年5月からいよいよ裁判員制度が実施されます。
一般の社会人(選挙人名簿に載っている人)から裁判員が事件毎に籤で選ばれ、
殺人とか強盗といった重罪の刑事事件の審理(公判)に参加することになります。
これまで裁判というのは多くの普通の市民にとってまことに遠い存在でブラック
ボックスのようなものでした。 法学部を出たような人でもない限り裁判所で
どんな風に審理がなされて判決が下されるのか全く窺い知り得ず、
むしろ知りたくもないし関わりたくもないというのが本音だったかもしれません
しかし、これからは誰でも裁判員に選任される可能性があります。
最高裁のパンフレットには、「法律の専門家ではない人たちの感覚が、裁判の
内容に反映されることになります。 その結果、裁判が身近になり、国民のみなさん
の司法に対する理解と信頼が深まることが期待されています」と書かれています。
穿った見方をすれば、これまで裁判には一般の人の感覚があまり反映されず、
司法に対する理解と信頼も薄かったと取れなくもない表現です。
裁判員制度もまた司法制度改革に連動する動きなのです。
今日本はさまざまな規制を緩和して事後救済型社会に移行しようとしています。
事後救済型社会とは問題が起きたら自己責任で解決する社会であり、
最終的には裁判所を介して決着を付けることになります。
これまでの2割司法に比べたら司法の役割が格段に高まって来ますから、
それに対応させるべくロースクールが設立され弁護士を毎年3000人育てる
体制が既に出来上がっています。
司法の土台である法律の改正も少しずつ進んでいます。
最近では破産法、貸金業法、金融商品取引法(旧証券取引法)、割賦販売法、
特定商取引法などが改正されましたし、民法については条文が口語体に訂正
された他、時効制度が100年振りに改正される予定です。
□ 評議・表決に法律知識は要らない
さて、裁判員には選任される多くの人は法律の素人です。 有罪か無罪かを評議し
表決するのに法律知識は本当に要らないのかと素朴に思うところですが、
その心配は不要のようです。
最高裁のパンフレットには、「例えば、目撃者の証言などに基づいて、被告人が被害
者をナイフで刺したかどうかを判断することは、みなさんが日常生活におけるいろいろな
情報に基づいて、ある事実があったかなかったかを判断していることと基本的に同じで
あり、特に法律知識は必要ありません」とあります。
どういうことかと云いますと、義務教育以上を終了している人で普通に社会生活を送っ
ている人なら誰でも持っているような健全で常識的な判断力(換言すれば社会通念、
社会常識、経験則、コモンセンス)があればいいと言っているのです。
裁判官に刑法や判例その他豊富な法律知識があるのは当然として、一番核となる
被告人が被害者をナイフで刺したかどうかの判断はやはり一般人と同じ判断力に拠って
いるのです。
とはいえ、裁判官も生の人間であり現に冤罪が発生していますし、判決の中には
一般人のコモンセンスと少しずれていると批判されるものがままあります。
裁判員が裁判官と協働して裁判内容の決定に関与することで、司法が国民と同じ目線、
つまりコモンセンスを共有することになって「より利用しやすく、分かりやすく、頼りがいの
ある司法」になるだろうと期待しているようです。
ところで、今の刑事裁判には以下の問題を抱えていると云われます。
イ 代用監獄でむりやり自白をとって有罪にする自白偏重・調書主義が変わっていない。
→ これが冤罪を生む背景 例 鹿児島の志布志事件
→国連人権委員会から代用監獄や密室での取調べが勧告を受けている。
ロ 有罪率が99.9%で司法が検察の追認機関になっている。
ハ 刑事司法では推定無罪の原則が守られていない。
裁判員制度の本当の意義は、警察や検察の強い抵抗で旧態依然として変わらない
刑事司法の実態が裁判員を通じて国民に知らされることにあるのかもしれません。
参考資料 最高裁 裁判員制度
誰のための制度か 自由人権協会
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