情報のコーディネーター  第142号
     
           令和3年10月14日発行
           窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                      今回の目次
              □  「エミシ」とは馬飼い集団だった


  奈良時代、東北北部に「エミシ」と呼ばれる異民族がいて、大和朝廷に反抗したので801
年に征夷大将軍坂上田村磨呂が征討したと、学校で習ったと思います。

  しかし、近年の考古学調査により、「エミシ」とは5世紀から7世紀に西日本や関東から
移住して行った馬飼い集団であって、大和朝廷が彼らを貶める為に「エミシ」と呼んだだけ
だとする説が有力になっています。

  「エミシ」は蝦夷とも書きます。  しかし、蝦夷(エゾ)は北海道のアイヌのことで、
5世紀頃までは東北北部にもいましたが、6~7世紀には住んでいなかったのです。

  また、アイヌには馬を飼う習慣がないのに対して、「エミシ」は騎馬と騎射が抜群に上手
く、「エミシ」がアイヌとは別の人々であることは明らかです。


  では、「エミシ」が馬飼い集団だとしても、なぜ東北北部に移住して行ったのでしょうか。

  馬は4世紀まで倭(日本)に存在せず、5世紀に朝鮮半島から渡来人により移入され、南
九州の日向国や畿内の河内国で大和朝廷が馬牧を運営して、やがて馬を百済に逆輸出
するまでになります。

  倭は鉄素材を半島に依存しており、馬の輸出は鉄利権確保の為だったのです。

  しかし、618年に成立した超大国の唐が百済と高句麗を滅ぼし、白村江の戦い(663年)
で倭の援軍が敗北すると、唐は倭に侵攻して来るのではとの危機感が高まります。

  結局、日本が騎馬民族国家のような軍事大国ではなく天皇中心の律令国家を目指した
こともあり、唐の侵攻はなく逆に友好的な関係を築くことになります。 

  その頃、東北北部に馬牧の適地があることが知られて、馬が生産過剰になっていた
河内国や日向国の馬牧から、馬飼い集団を東北北部に移住させたのです。

 
  さて、馬飼い集団の正体とは何かですが、百済系渡来人、高句麗系渡来人、海人系
隼人(倭人)などで構成されていたと考えられます。

  百済系渡来人は、古くから飛鳥地方に多く移り住んでおり、彼らは蘇我氏の配下に入り、
湿地帯だった飛鳥の開墾や馬匹文化の移入に務めた人々です。  河内国の讃良(ささら)
に馬牧を開拓したのも彼らです。

  高句麗系渡来人は、東アジア最強の騎馬民族国家高句麗の末裔ですから、騎馬や騎
射が上手く、馬具の高い製造技術を持っていました。  

  武蔵国の高麗郡(こまぐん)には多くの高句麗系渡来人が移り住んで須恵器(陶質土器)を
窯で焼いたり、多摩の山中でひっそりと後に鎌倉武士に好まれた鐙(あぶみ)という馬具を作
ったりしていました。

  海人系隼人(あまけいはやと)は、鉄の輸送や漁猟を生業としていた倭人で、丘に上がって
日向国の馬牧で騎馬と騎射を身に着け、その技が認められて河内国にも移住させられてい
ました。

  要するに、渡来系馬飼い集団とは、馬匹文化全般から馬具を製造する鍛冶までの先端
技術を身に着けたハイテク集団だったのです。

  彼らの首長層は、アイヌと毛皮(ヒグマ)の交易をしている頃から前方後円墳を築造する程
の地方豪族に成っていました。

 7世紀以降はここの馬牧が産する南部馬が最高の名馬として持て囃され、ヤマトの支配層
と高値で取引されますます力を付け始めていましたから、大和朝廷としては「エミシ」と
貶めて力を殺がねばならなかったのです。


  なお、以上は私が以下の文献を参考にして考えたことです。

      瀬川 拓郎著 『アイヌと縄文』
      菊池 明弘著 『「馬」が動かした日本史』
      松本 建速著 『つくられたエミシ』

 

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