情報のコーディネーター  第112号
         
           平成29年3月9日発行
                  窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                          今回の目次
                    □ ビタミンの歴史はまだ100年足らず


  ビタミンという物質が発見され、脚気がビタミンB1の不足で罹る病気であると分かってからまだせい
ぜい100年位のものです。

  江戸時代に地方から上京して江戸詰めになった上級武士が江戸滞在中にだけ罹る病気に「江戸わず
らい」がありました。

  地方で玄米や雑穀を食べていた武士が江戸に来て白米を食べることで罹る「脚気」でした。

  「脚気」は多発神経炎、浮腫、心不全の症状を呈し、重症になると死に至る病気で、将軍家定や家茂も
脚気が死因とされています。


  大航海時代に新鮮な野菜や果物を摂取しない水兵が罹った壊血病は、歯肉からの出血、歯の脱落、
創傷治癒の遅れ、貧血、抵抗力の低下などの症状を呈し、重症になると死に至ります。

  イギリス海軍では曲折を経てライムジュースを水兵に飲ませることで壊血病の予防をどの国よりも早く
達成し、その結果7つの海を支配することが出来たとされます。

  しかし、壊血病の原因がビタミンCの欠乏にあると分かってライムジュースを飲ませた訳ではないのです。


  脚気は日本独自の病気でした。  ヨーロッパで見られない病気であることから、明治時代に日本海軍は
パンと肉又は麦飯の食事に切り替えたところ激減しました。  しかし、陸軍では白米に拘った為、日露戦争
の時には脚気で死亡する兵士が戦死者の半数もいたという悲惨な結果を出しました。

  脚気の原因が中々判明せず、日本人の多くが白米を主食として食べるようになった大正時代には死者が
年間2万5千人も出ており、結核と並ぶ二大国民病だったのです。

  ビタミン発見の先鞭を付けたのは日本の鈴木梅太郎です。  米糠を食べると脚気が治ることから、米糠
から脚気に効く物質を抽出してオリザニン(ビタミンB1)と命名したのです。 1910年のことです。

  米糠は精米する過程で分離された米の果皮と種皮で、米を美味しくする為に精米した後の残りカスです。   

  尤も、一部の米糠はぬか漬けのぬかみそとして使われていましたが、まさかこの残りカスの中に脚気を治
す貴重な物質が含まれているとは誰も思わなかったのです。


  日本海軍は洋食、麦飯の導入により日清戦争の頃に脚気による死亡者を激減させていましたが、日本陸
軍は白米主義に拘泥した結果、日清戦争(1894~1895)と日露戦争(1904~1905)で脚気による多量の死亡者
を出すことになります。

  しかし、ビタミンB1の欠乏が脚気の原因であるとは1910年まで誰も分からなかったのです。

 日本陸軍の森鴎外(軍医総監)は、脚気が細菌の感染で起こる病気であるという考えを生涯変えなかったと
されます。

  ドイツでドイツ医学を学んだ鴎外は、ドイツ医学の主流であるコッホ以来の細菌学万能主義から一歩も出ら
れなかったのです。

  一方、日本海軍の高木兼寛(軍医総監)は、イギリス医学を学んでおり、イギリス海軍の実績も参考にして
脚気の原因は栄養素の欠乏にあるとの立場でした。

 
  このように19世紀末頃に病気の原因である細菌がコッホにより発見され、細菌学が最先端の医学になり
ますが、20世紀初頭に今度はビタミンという食物に含まれる栄養素の欠乏が病気の原因になっていること
が分かったのです。

  ビタミンA、ビタミンBは1913年に発見され、ビタミンCは1920年に発見され、その後次々と新しいビタミンが
発見されて行きます。
 
  しかし、脚気の原因がビタミンB1の不足にあると分かっても、昭和10年代で年間1万人から2万人の死亡者
が出ており、1950年代後半に入ってやっと千人を割りました。

  ビタミンは「生存に不可欠な微量成分」という意味です。 現代ではビタミン以外にも生存に不可欠な微量成
分の欠乏がさまざまな病気に関係しているとして、栄養医学という分野が最先端の分野になりつつあります。

  あらゆる病気と老化の原因は、活性酸素による細胞の酸化にあるとされます。
老齢者の殆どが罹る白内障も水晶体の酸化が原因です。

  ビタミンが持つ強い抗酸化力(活性酸素の発生を抑制)に注目が集まっており、第二のビタミンの時代が今来
ているのかもしれません。


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