情報のコーディネーター　　第111号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平成29年1月26日発行
　　　　　　　　　　　　　　　　　　窮すれば通ず。　情報こそ反転の力なり。　コトバで心の壁を破れ。

　　　　 　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　今回の目次
　　　　　　　　　　　　 　　　　　　□　トランプの大統領就任で思うこと

　 トランプが大統領になるなどと半年前、誰が予想したでしょうか。
メデイアや識者の大方の予想もヒラリーでしたが、なぜ予想が外れたかについての分析を未だにメディア
はしていないように見えます。

　 トランプが中西部の諸州で悉く勝利したのが直接の勝因ですが、中西部で勝ったのは現状に不満を持
つ白人労働者層がトランプに票を入れたからです。　　　
　中西部はドイツ系住民が約4割を占める地域で、ドイツからの移民を祖父に持つトランプとは親近性が
全然ない訳ではありません。
　　
　 しかし、メディアは8割がヒラリー支持のワシントンとニューヨークそして西海岸しか見ていなかったのです。 　
アメリカをリードするIT産業や金融業で栄え富裕層や支配階層が多く集まるこれらの地域だけを見て、
アメリカの全体が分かった気になっていたのです。

　メディアはアメリカ中西部の白人労働者層の不満など全く眼中になかったのです。
しかし、アメリカは人口が３億1千万人の大国であり、中西部だけでも6600万人の人口があります。

　 8年前、「チェンジ・チェンジ」と云って大統領になったオバマは、中西部の白人労働者層の生活をチェ
ンジすることはなかったのです。　　　オバマ時代にはニューヨークなどの富裕層がますます資産を増やし、
貧富の格差が拡大してしまったのです。

　 低所得・貧困層は大学の授業料が高すぎて子供を大学にやれず貧困の連鎖から抜け出せなかった
り、低賃金で働く移民に仕事を奪われたり、不法移民が犯罪を生み治安を悪化させていたり、医療を受け
られない無保険者が何千万人もいたりと、要するに、アメリカの陰の部分が何時までも変わらないという
現状があり、中西部にはそんな既存の政治に不満な白人労働者層が一番多く住んでいたのです。

　 中西部はかって東海岸のメガロポリスに劣らない工業地帯だったのですが、1970年代から空洞化が
起こり始めます。

　 産業が賃金の安い南のサンベルト諸州に移転され始め、シカゴやデトロイトなどの大都市の人口が
急速に減少し、デトロイトなどは全米で最も治安が悪い都市として有名になります。
　産業移転が起こった地域をラストベルト、スノーベルト、フロストペルトと呼ぶことがあります。


　 ところで、中西部は今でもそんなに衰退しているのでしょうか。　　

　 シンシナティの石炭産業、クリーブランドやゲーリーの製鉄業、デトロイトやフリントの自動車産業は
衰え人口が激減していますが、オフィスと住民が治安のいい郊外に移っただけで都市圏で見ると人口は
増えているのです。

　 今日では、市街地再開発、治安や公害の問題を改善した住環境の整備、新たな産業の育成などによ
り活況を取り戻していると云います。

　 クリーブランド、シンシナティは文化水準の高い住みよい都市になり、インデイアナポリスやコロンバス
は日系の自動車メーカーを誘致し、ロチェスターはIBMの工場を誘致して活況を呈しており、サンベルトと
同程度の成長率を続け、サンベルトに比べ貧富の格差が小さく、雇用率も高い地帯になっています。

　これらはネットからの情報ですが、これこそ既存の支配階級の発言なのかもしれません。

表面的には活況を呈していても、中に入って見ると低所得・貧困層がこれまでの政治から忘れられたよう
に存在しているのかもしれません。


　さて、トランプ大統領は就任演説の中でこんな言葉を散りばめています。

「ワシントンから権力を移し、国民に戻します。　わが国の首都のひと握りの集団が統治の恩恵にあず
かる一方、国民はその富を共有できませんでした」

「大切なことは政府が国民によってコントロールされているかなのです」
「国家は国民に奉仕するために存在します」

「この数十年間、米国の産業を犠牲にして外国の産業を潤わせて来ました」
「中間層の富は彼らの家から奪われ、世界中にばらまかれたのです」

「私たちは二つの簡単な原則に従います。　それは米国製品を購入し、米国人を雇うことです」


　トランプは支持層である中西部の白人労働者層を念頭に置いて富の共有を公約しているのです。
多分、トランプはこの公約に添ってやるだろうと思われます。

　かなり活況を取り戻しているように見える中西部も、トランプから見れば、中国や日本に対する大きな
貿易赤字により富を奪われている中間層が多くいて、彼らに富を取り戻すべく製造業の復活を考えてい
るのでしょう。　　　

　トランプは中西部の白人労働者層を見るとなりふり構っていられない気持ちなのでしょう。
具体策はまだ見えませんが、富の公平化を図ろうとしているようにも見えます。

既存の政治家が出来なかったことをどれだけ出来るか見てやろうという気持ちにさせます。


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