情報のコーディネーター  第110号
         
           平成28年12月13日発行
                  窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                          今回の目次
                     □ ヤルタ密約は無効

  ロシアはヤルタ密約(ヤルタ協定のうちの極東密約)が北方4島を占拠する法的根拠だと主張します。

  1945年2月11日にクリミア半島)のヤルタ(現ウクライナ領)でルーズベルトとチャーチルとスターリンが
会談して、ソ連は千島列島と南樺太の領有を条件に対日参戦(ドイツ降伏後2ヶ月~3ヶ月後)するという
密約に合意しそれに基づく占拠だと云うのです。

  しかし、アメリカ上院では1951年のサンフランシスコ講和条約批准の際、「ヤルタ密約の項目は含ま
ない」と決議しており、1956年になってアメリカのアイゼンハワー大統領は「ヤルタ協定はルーズベルト
個人の文書であり、アメリカ政府の公式文書ではなく無効である」と発表しています。

  一方、イギリスはどうかですが、チャーチル首相が1941年8月にルーズベルトと共に署名した大西洋
憲章では領土不拡大の原則がうたわれていました。

  最近になって、1946年2月にイギリス外務省が在外英公館54ヶ所に宛てた1945年2月9日付緊急かつ
極秘電報で、「ルーズベルト大統領が権限を超えて署名したことや、米上院の批准もない状況下で有効
性の議論が起こるかもしれない」との疑念を表明していたことが分かりました。

  これから、ヤルタ密約は当事国の国会の批准を受けていないという点で条約としての効力はなく、
単なる軍事協定であるとしても、当事国が関与しない領土の移転は無効とする国際法に違反しており、
領土不拡大の原則をうたった大西洋憲章にも違反しており、無効であることは明らかです。


  ロシアは第二次世界大戦の結果として千島列島の領有権を獲得したと主張しますが、この主張に法的
根拠があるのでしょうか。

  ソ連が北方4島を占拠した経緯はまことに正義に反するものです。

  まず抑えておくべきなのは、ソ連が北方4島を占拠したのは日本がポツダム宣言を受諾した1945年8月
14日からミズリー号上で降伏文書に調印した9月2日に掛けて、つまり日本の降伏が決定した後なのです。

  ソ連は8月8日にポツダム宣言に参加することを表明し8月14日から戦闘行為を中止している日本に対し
戦闘行為を開始しているのであり、これはポツダム宣言第9条と第10条に違反する行為です。


  次に、サンフランシスコ講和条約第25条では、「この条約はここに定義された連合国の一国でないいず
れの国に対しても、いかなる権利、権限又は利益を与えるものではない。 また、日本国のいかなる権利、
権限及び利益も・・・・連合国の一国でない国のために減損され又は害されるものではない」と規定してい
ます。

  ソ連はここの連合国にあたらず、本条約に署名した46ヶ国はソ連による南樺太と国後、択捉を含む
千島列島のソ連による領有を認めていないのです。

  しかし、ロシアはサンフランシスコ講和条約第2条で「日本は南樺太と千島列島を放棄する」と規定している
ことを以て北方4島の領有権を主張しますが、この主張はそもそも成り立たないものです。

  なぜかと云いますと、ロシアの主張はサンフランシスコ講和条約がロシアにも適用されると主張している
ことになりますが、そうすると同条約第25条の適用も認めざるを得ず、結局北方4島の領有を自ら否定する
ことになるからです。

 どのように考えても、ロシアが北方4島を占拠出来る如何なる法的根拠も存在せず、不法に占拠している
ことは明白です。
 

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