情報のコーディネーター  第109号
         
           平成28年11月10日発行
                  窮すれば通ず。 情報こそ反転の力なり。 コトバで心の壁を破れ。

                          今回の目次
                  □ 北方領土問題の背景にあるもの


  1951年(昭和26年)のサンフランシスコ講和条約で日本は千島列島を放棄していますが、もし条文
で千島列島(国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島の4島を除いた得撫島以北の18島をいう)と明記して
おけば北方領土問題が発生する可能性はかなり低減したと思われます。

  なぜ条文に放棄した島の名称を明記しなかったのでしょうか。

  尤もらしい説の一つは、ソ連と冷戦状態にあったアメリカが日露間に領土問題を残すことで日露の
親密化を阻む為であったというものです。

  しかし、サンフランシスコ講和条約にロシア(当時はソ連)は参加していなかったのですから、そもそも
この条約の効力は法理論上日露間に及ばない筈です。

  ですから、日本が放棄した千島列島はどこに帰属するのか、ロシアに帰属することになるとしても
日本が放棄した千島列島とは得撫島以北の18島のことなのかなど不明確なところがあったのであり、
日本とロシアが協議してロシアに帰属することになる島を決定して平和条約(講和条約)を締結する
ことがサンフランシスコ講和条約締結後の課題として残されていたと考えるのが最も自然です。

  その後、冷戦の激化に伴いソ連が日本との間に領土問題はないという態度を取り続けた為、平和
条約を締結する機会がないまま時が過ぎて行きました。

  ソ連が崩壊してロシアになると、領土問題が存在すること及び1956年(昭和31年)の日ソ共同宣言
(平和条約締結後に歯舞諸島及び色丹島を引き渡す)の有効性を認めるロシア大統領が現れ、国後島、
択捉島、色丹島、歯舞諸島の4島の帰属を決定して平和条約を締結するという機運が高まったのです。



  さて、サンフランシスコ講和条約の条文に放棄した島の名称をなぜ明記しなかったに関連しますが、
放棄した島がどれか誰にも自明であると考えられていた場合には条文にわざわざ記載しないということ
もあり得ると思います。

  実は、千島列島の歴史を知れば放棄した島がどれかが自然に浮かび上がって来ます。

  江戸幕府は1799年(寛政11年)から択捉島以南を直轄地とし役人を派遣して実効支配を開始し、
1855年(安政元年)に締結した日魯通好条約では日露間の国境が得撫島と択捉島の間とされました。

  1875年(明治8年)には樺太千島交換条約が締結され、樺太と得撫島以北の18島が交換されて千島列
島の全てが日本の領土となりました。

  樺太千島交換条約の条文には18島の一つ一つの島名が明記されており、ここで云う「千島」とは得撫
島以北の18島のことを意味していたのです。

  得撫島以北の18島が平和的な協議により日本の領土となっても、日本人がこれらの島に移住すること
はなく、これらの島々の価値は漁業権にありました。

  一方、択捉島以南の4島には日本人が定住して最盛期の人口は17000人位にも達し、行政区画は
北海道に帰属していました。

  こおいう歴史的経緯から、国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島の4島については戦争などで他国から
奪ったり譲渡させたりした土地ではなく、日本の固有の領土であることは明白な事実なのです。

  ロシアから譲渡された得撫島以北の18島を北千島と呼び、日本の固有の領土である国後島、択捉島、
色丹島、歯舞諸島の4島を南千島と呼ぶのは、このような歴史的背景があるからです。

  日本がサンフランシスコ講和条約で放棄した千島列島とは、1875年(明治8年)にロシアから譲渡された
北千島(得撫島以北の18島)のことであり、固有の領土である南千島(国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島
の4島)が含まれていないというのが当時の日本政府の合理的な意思であることは歴史的に見て自明な
ことなのです。

  そもそもソ連は日ソ中立不可侵条約に違反して千島に侵攻して来て今日まで違法に占有していること、
日本にソ連と戦争する意思がなかったのに満州では侵攻したソ連軍により多くの日本兵が抑留された
ことなどを考え併せますと、国後島、択捉島、色丹島、歯舞諸島の4島の日本帰属が認められて初めて
プーチンの云う引き分けになると私は考えるのです。

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