職人型内容証明仕掛人の方法論 ! 第83号
平成22年10月11日発行
職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
今回の目次
□ 逆風の消費者金融
☆ 空文化した「みなし弁済」規定
☆ 金融ADRの活用
□ 逆風の消費者金融
☆ 空文化した「みなし弁済」規定
1990年(平成2年)のバブル崩壊以後、日本はずっと低成長が続き失われた20年
と云われています。 そんな中、右肩上がりで融資残高を拡大させて行ったのが
消費者金融でこの時期に大手5社は次々と東証1部に上場を果たします。
株価は一時1万円近くまでなったこともあり、武富士、アコム、プロミスの経常利益
はつい最近まで1000億を超えていました。
そんな高収益企業が2007年(平成19年)3月期決算で巨額の赤字を計上することに
なります。 大手4社の損益は合計で1兆7000億円の赤字でした。
この最大の要因は2006年(平成18年)の最高裁判決でした。
最高裁平成18年1月13日シティズ事件判決は、「利息制限法の上限を超える利息を
強制を受けて支払った場合、債務者の自由な意思により支払ったとは云えず、みなし
弁済規定の適用要件に欠ける」と判示したのです。 →判決全文
もう少し噛砕いて説明しますと、消費者金融業者は当時横並びで27%超の約定利息
を取っていました。 融資額が50万円なら利息制限法の上限金利は18%ですから
9%の部分は無効の筈ですが、業者は貸金業規制法第43条1項のみなし弁済規定を
盾に9%部分を任意の弁済として有効だと主張していたのです。
しかし、最高裁はこのみなし弁済を全否定したのです。 判決理由ではこう云って
います。
イ 約定利息の支払いを怠ると期限の利益を当然に喪失するとする特約条項がある
↓
ロ それがある為、支払義務を負わない制限超過部分の利息の支払いを事実上
強制することになる
↓
ハ このような特約の下で債務者が利息制限法の上限を超える利息を支払っても
債務者の自由な意思により支払ったとは云えない。
これにより、貸金業規制法第43条1項の「みなし弁済規定」は空文化されたとされます。
どういうことかと云いますと、債務者の支払いというのは殆どがATM又は銀行振込を
利用しています。 ATM又は銀行振込の場合、債務者が弁済をすると利息制限法の
上限を超える利息が自動的に利息に充当される仕組みになっていました。
このような天引による利息支払いがみなし弁済にならないという判決は2年前に
出ていました(最高裁平成16年2月20日第二小法廷判決)。
最高裁平成18年1月13日シティズ事件判決は期限の利益喪失特約の存在を理由に
特段の事情がない限り債務者の自由な意思による弁済ではないとすることで、完全に
止めを刺したのです。
ところで、特段の事情とはどうな事情なのでしょうか。
債務者が制限超過部分の利息を利息の支払いに充当させるという認識を持って
窓口に持参し支払ったという場合が考えられますが、そんな債務者は殆どいません。
ATM又は銀行振込による通常の弁済がみなし弁済にならず、期限の利益喪失特
約の故に自由な意思による弁済ではないとされれば、利息に充当された制限超過部
分の利息は不当利得となり返還義務を負うことになります。
つまり消費者金融業者は制限超過部分の利息を取れなくなったのです。
消費者金融大手は改正貸金業法の施行を待たずに平成19年4月〜平成20年1月に
掛けて金利を年18%まで引下げており、これが「みなし弁済規定」の空文化を何よりも
物語っています。
☆ 金融ADRの活用
金融ADR(平成22年10月1日施行)は金融分野における紛争又は苦情を指定紛争
解決機関の提示する和解案に基づき話合いで迅速に解決する裁判外紛争解決手続
きで、金融機関に指定紛争解決機関の利用が義務付けられています。
→詳しい解説
日本貸金業協会は指定紛争解決機関に指定されています。
上述の通り、旧貸金業規制法第43条1項のみなし弁済の規定は空文化されており、
過払い金を業者の不当利得として確定しています。
もはや業者がみなし弁済を主張することは許されなくなり、過払い金の返還請求或い
は返済条件の和解は金融ADRを利用して迅速に解決するに相応しい事案と云えます。
費用も5万円以内に収まるのですからこれを利用しない手はありません。
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