職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第79号
         [ 旧タイトル  内容証明郵便でブレイク! ]
               平成22年4月30日発行
    職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

              今回の目次
          □ 単純承認となる処分 その2 
             ☆ 事例研究
             ☆ 家庭裁判所の審理と即時抗告



   □ 単純承認となる処分 その2 

        ☆ 事例研究〜家屋の解体
 「被相続人の家屋(築50年、ゴミ屋敷に近い、何か月も地代を延滞、固定資産税
も滞納)が借地の上に建っており、地主から延滞金は要らないから土地を明渡し
てくれと云われた。   家屋には抵当権が設定されていたが、知人が借金を
債権者に支払ってくれたので、家屋を自己費用で解体して滅失登記をし、土地
を明け渡した。  相続放棄をしないで1年経過してから連帯保証債務の請求が
来た。  もう相続放棄は出来ないのでしょうか」

  まず、地代や税金の延滞金は債務ですし、家屋の登記簿を取れば抵当権の設定
の有無その他債務の状況が分かります。  ですから、その時点で債務の存在を
認識したとされてその時点から考慮期間が起算されるのが通常と思います。

  しかし、地代の延滞金は免除され他の借金も知人により弁済されており(借金は
相続財産から弁済したのではない)、固定資産税の滞納金も相続人が立替えて支払
った場合(保存行為といえる)、相続人には相続債務がその時点でもう存在しないと
思って相続放棄をしなかったのだ考えてもいい事情があるようにも思えます。

  次に、起算点の問題をクリアーしたとしても家屋の解体が鬼門となります。 
裁判所は家屋の解体を「相続財産の一部を処分した時」に該当すると判断するのが
原則のようだからです。
  尤も、家屋の土台が腐食し立ち入るのに危険を感じる程で何時崩れておかしくない
という場合なら実質的に朽廃していると思われますから、「期限の到来した債務の
弁済、腐りやすい物の処分して金銭に換えて保管すること
は本人財産全体から
見て現状維持と認められるような処分行為であるので、保存行為に当る」(最高裁
昭和28年12月28日判決)という判例に照らして、保存行為となるのではないか。

  いずれにしても、処分になるどうかは最終的に裁判官の判断を待たねばならない
というものが多々ありますから、軽々しく自分で判断するのは禁物です。
 地代を延滞しているような一人暮らしの老人の場合、後で別な借金が発覚しても
おかしくありませんから、相続財産には手をつけないようにすることが肝要なのです。
  3ヶ月の考慮期間に法律家と相談しながら相続財産をよく調査し、積極財産が殆ど
ない場合には、家屋の解体前に相続放棄に持って行くというのが得策のようです。


      
☆ 家庭裁判所の審理と即時抗告
 
上の事例のケースで相続放棄申述を家庭裁判所に申立たとします。   
1ヶ月後位に審判がありますが、家屋の解体が処分と認定されれば却下されます。  
  しかし、不服の場合には2週間以内に即時抗告が出来ます。 即時抗告の申立は
審判を下した家庭裁判所に提出しますが、審理は高等裁判所で行います。
家庭裁判所の上級裁判所は高等裁判所になるからです。

  前回のメルマガに下記決定を掲載しましたが、この決定は即時抗告に対するもの
です。  「・・・・家庭裁判所が相続放棄の申述を受理するに当って、その要件を厳格
に審理し要件を満たすもののみを受理し、要件を欠くと判断するものを却下するのは相
当でない」(大阪高裁平成14
年7月3日決定)

  家庭裁判所の審理というのは、通常の裁判と違って口頭弁論がなく、申立人が呼出さ
れることもなく、審判官は申立書と証拠書類(場合によっては陳述書を提出することがあり
ます)と後は職権で収集した公的文書を見るだけです。

  ですから、先の事例のケースでは審判官に状況を分かって貰えるように具体的かつ
詳細に書かないと家屋の解体などは処分とされてしまう可能性が高くなります。
  もし、申立書に簡単に書いてしまって却下された場合には、即時抗告ではひっくり返る
可能性が残されていますから諦めず抗告してみるべきです。


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