職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第78号
         [ 旧タイトル  内容証明郵便でブレイク! ]
               平成22年3月25日発行
    職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

              今回の目次
          □ 連帯保証債務の相続
             ☆ 考慮期間経過後の相続放棄
             ☆ 単純承認となる処分とは



    □ 連帯保証債務の相続

       ☆ 考慮期間経過後の相続放棄
  相続人が相続財産には僅かの現金だけしかないと思い相続放棄をしないでいたら、
被相続人が亡くなって1年以上も経った後に信用保証協会から催告書が届いて
初めて連帯保証債務(相続債務)の存在を知ったということはよくあることです。

  まず思い浮かぶのが時効援用です。   しかし、確定判決があって一部弁済
の最終弁済日から10年が経過していないとしたら、時効の援用は出来ません。

  さあ、どうするかですが、原則と例外があるというのが法律の世界です。
考慮期間つまり被相続人の死亡を知ってから3ヶ月がとっくに経過していても、
相続放棄が出来る場合がありますから全然諦める必要はありません。
                     
  最高裁は、「相続人が遺産がないと信じることに相当の理由があれば、例外
的に
相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常
これを認識しうべ
かりし時から起算するのが相当である

(昭和59年4月27日最高裁判決)と判示しています。

  また、相続債務があることを分からないまま、相続人が被相続人の預貯金を
利用して仏壇や墓石を購入していた場合でも相続財産の処分に当らないとして
相続放棄の申述を認めた決定があります。

「預貯金の他に積極財産はなかったのであるから、相続人が本件債務のように
多額の債務があることを知っておれば、相続開始後すぐに相続放棄をしたはず
であることは明らかである。 
・・・・・3ヶ月を経過した後に本件相続放の申述をしたのはやむを得ないもので
あり、
民法915条1項所定の期間は相続人が信用保証協会からの残高通
知書に接した時
から起算すべきものと解する余地がある

・・・・従って、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理するに当って、その要件を
厳格に審理し要件を満たすもののみを受理し、要件を欠くと判断するものを却下
するのは相当でない」(大阪高裁平成14
年7月3日決定)。
                     
  要するに、相続債務が存在しないと信じたことに相当な理由があれば、
相続放棄の申述を受理して貰える可能性が高いということです。

  先の大阪高裁決定ではこうも云っています。
「相続放棄申述書の受理は、家庭裁判所が後見的立場から行う公証的性質を
有する準裁判行為であって、
申述を受理したとしても相続放棄が有効である
ことを確定する
ものではない


  相続放棄の受理を巡って債権者に異議があるなら、裁判で解決するしかな
いと言っているのです。 そこまでやる債権者というのはまず少ないと思われます。


    ☆ 単純承認となる処分とは
  相続人が相続財産の処分をしますと、単純承認が擬制されます(民法第921条)。 
承認の取消は原則として出来ず、その後は相続放棄が出来なくなります。
ではどういう行為が相続財産の処分に当るのでしょうか。

  「処分」とは保存行為を除く財産の現状や性質を変える一切の行為をいいます。
判例に拠れば、経済的価値の高い美術品や衣類の形見分け、相続財産の不動産
を相続債務の代物弁済として譲渡すること、相続債権を取り立てて領収することなど
が単純承認とされる処分とされています。 

 また、家屋に放火したり、高価な美術品を故意に壊した場合も処分に該当します。
しかし、軽微な慣習上の形見分けや被相続人の預金を葬儀費用や仏壇・墓石の
購入費の一部に充てる行為は、該当しないとされます。

                     ж

 相続人は承認又は放棄をするまでの間、自分の固有財産を管理する場合
と同じ注意義務を持って相続財産を管理する義務があり(民法第918条1項)、
権限の定めのない代理人と同様に保存行為や管理行為が出来ます。
 民法第921条1項但書でも
保存行為や短期賃貸借契約の締結は処分に
当らないとされています。
     参考 →保存行為・管理行為    ж


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