職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第72号
         [ 旧タイトル  内容証明郵便でブレイク! ]
               平成21年10月7日発行
    職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

              今回の目次
          □ 競売と時効中断に関する最高裁判決
              ☆ 物上保証人に対する競売
              ☆ 競売後の代位弁済



  □ 競売と時効中断に関する最高裁判決
         
 最近、債務者が倒産して
信用保証協会の代位弁済から5年以上経過しているのに、
連帯保証人が一部弁済を続けさせられているケースが多く見受けます。
 連帯保証人による一部弁済は相対的効力しかなく、主債務の時効を中断しません。

 信用保証協会の求償権の消滅時効は、代位弁済日から5年です。
        参考 → 昭和42年10月6日最高裁判決


 連帯保証人による時効援用の成否は、時効中断事由の有無に尽きます。
今日は競売と時効中断に関する最高裁判例をまとめて見ました。

    ☆ 物上保証人に対する競売
 時効中断の効力は原則として相対的効力しかありません(民法148条)。
例外として、連帯保証人がいる場合には、連帯保証人に裁判上の請求をすると
主債務の時効を中断することになります。

 では、物上保証人に対し競売がなされた場合、主債務の時効は中断するのでしょうか。
民法第155条に拠れば、主債務者に通知した後でないと時効中断の効力は生じないと
しています。 

 この「通知した後でないと・・・・」の意味については、
「執行裁判所が競売開始決定をした上同決定正本を債務者に送達した場合には、
時効の利益を受けるべき債務者に差押えの通知がされたものとして、民法第155条により
債務者に対して消滅時効の効力を生じる」としています(最高裁昭和50年11月21日判決)。

 なお、時効中断の効力がいつ発生するかについては、
「主債務の消滅時効の中断は、民法第155条により競売開始決定正本が債務者に送達
された時に生じる」とされます(最高裁平成8年7月12日判決)

 しかし、連帯保証債務を被担保債権をとして物上保証人に設定されていた根抵当権に
基づき競売を申立てしても主債務の消滅時効の中断事由に該当しません。

抵当権の実行とての競売を申立て、その手続きが進行すること自体は、民法147条
の「請求」には
該当せず、・・・主債務者に対する「履行の請求」としての効力を生ずる
余地がないと解すべきである」 (最高裁平成8年9月27日判決)。


 

 そして、「競売が取り下げられた時は、差押えが権利者の請求によって取消された時
(民法第154条)に準じ、時効中断の効力は初めから生じなかったことになると解するの
が相当である」としています(最高裁平成11年9月9日判決)。
                         

     ☆ 競売後の代位弁済
 債権者が物上保証人の不動産の競売を申立た後、信用保証協会が代位弁済(平成9年
12月25日)して債権届出書を競売裁判所に提出し、競売は平成11年9月29日の配当期日
に終了したが、信用保証協会は平成16年9月9日になって連帯保証人に対して提訴したと
いう場合、 連帯保証人は代位弁済日から5年経過しているとして時効援用できるでしょうか。

 最高裁は求償権の消滅時効は配当日から改めて進行を開始したというべきであるとし、
提訴の時点で消滅時効はいまだ完成していないとしました。

「競売開始決定正本が主債務者に送達された後に、主債務者から保証の委託を受けていた
保証人が代位弁済した上、債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を
受け、差押債権者の承継を裁判所に申し出た場合、上記承継の申出について主債務者に
対し民法第155条所定の通知がされなくても、保証人が主債務者に対して取得する求償権の
消滅時効
は、上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで中断
する
と解するのが相当である」(最高裁平成18年11月14日判決)。
                          
  参考までに民法第147条の時効中断事由について、具体的に整理して見ました。
  ( )内は時効中断の効力が発生する時点です。

 1請求
  ・裁判上の請求(訴状を裁判所に提出した時、応訴の場合は →権利を主張した時)
  ・支払督促(債務者から異議の申出があった場合 →支払督促の申立時)
  ・和解・調停の申立(不調の場合に1ヶ月以内に訴を提起すると →申立時)
  ・破産開始決定の申立(債務者又は債権者が申立書を裁判所に提出した時)、
  ・破産手続参加(債権届出書を提出した時)
  ・内容証明郵便による催告( 6ヶ月以内に裁判上の請求その他上記の申立を
                     した場合 →内容証明郵便の送達時)

 2差押・仮差押・仮処分
  ・執行官が差押に着手した時 →時効中断の効力が生じます。 
  ・動産執行は申立した時に →時効中断の効力が生じます(最判昭和59年4月24日)。
       → 差押えるべき動産がない場合でも時効は中断する。
       → しかし、債務者が所在不明で執行不能の場合は着手したとは言えず
         時効の中断は生じない(大判明治42年4月30日)
      
  ・抵当権実行としての競売申立(競売不動産を差押した時、
    ただし、物上保証人に対する競売申立は→債務者に正本が送達された時)
          
 3承認
   支払猶予の懇請、手形書換の承諾、利息の支払、一部弁済、反対債権による相殺


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