職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第64号
         [ 旧タイトル  内容証明郵便でブレイク! ]
               平成20年12月10日発行
    職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

              今回の目次
          □ 解約と原状回復義務
            ☆ 解除と解約の違い
            ☆ 原状回復義務の法的根拠は何か
            ☆ 内職商法の場合



   □ 解約と原状回復義務

   ☆ 解除と解約の違い
  売買契約を解除すると契約締結時に遡及して契約の効力が失われます。
このような解除の効力を遡及効といいます。

  しかし、賃貸借契約のような継続的契約では、借りる権利と貸す義務が契約の終了
まで継続しています。  継続的契約を解除しても解除の効力は契約締結時まで遡及
しません。 「遡って家を出でくれ」とか「これまで行ったことをなかったことにしてくれ」と
云われても不可能だからです。

  そこで、遡及効がある本来の解除と区別する意味から、継続的契約の解除を
特に解約(別名を解約告知)と呼びます。


   ☆ 原状回復義務の法的根拠は何か
  さて、解約した場合に問題となるのが清算関係であり原状回復義務の範囲です。
尤も継続的契約の解約は遡及効がないのですから、契約を最初からなかったことにする
という意味での原状回復義務は発生しない筈です。

 民法の原状回復義務に関する条文としては、民法第545条があるのみです。
 <民法第545条>
  当事者の一方が其解除権を行使したる時は各当事者は其相手方を原状に復せし
  むる義務
を負う。 但第三者の権利を害することを得ず。
 2 前項の場合に於て返還すべき金銭には其受領の時より利息を附することを要す。
 3 解除権の行使は損害賠償の請求を妨けず。  

   解約の場合の原状回復義務というのは将来に向っての権利関係の清算であるとしても、
民法第545条は解除と解約の区別をせず、原状回復義務の具体的な範囲も全く規定して
いません。

  その結果、原状回復義務の範囲は当事者の合意に委ねていると解されています。
合意に委ねるとは契約書に記載しておくか又は事後に協議して決めることを意味します。
また民法第545条は任意規定ですから、当事者が合意すれば一切の原状回復義務を
放棄することも出来るということです。

  賃貸借契約の場合は、原状回復義務の範囲は賃貸借契約書に詳しく記載されていて、
大抵は大家に有利な内容になっているのが普通です。
敷金返還時に自然損耗分まで控除するケースが後を絶ちませんでしたが、
今では最高裁判決により自然損耗分の控除は違法とされています。

  このように、原状回復義務の範囲を当事者の合意に委ねつつも、著しく一方に不利な
事項については消費者契約法等に照らして無効とされるということです。

                        
  ☆ 内職商法の場合
  さて、特定商取引法第51条の業務提供誘引販売(いわゆる内職商法)も継続的契約
です。 パソコンと技能講習をセットにして販売し技能検定の合格を条件に業務を委託
するというもので、契約は業務委託が続く限り継続します。

  しかし、実際には検定に中々合格せず、合格しても契約通りの業務委託が履行されな
かったり、又は業務委託まで行かない内に業者が破産したというケースが多いのです。
大抵はクレジット契約を締結していますから、消費者から支払停止の抗弁を主張したい
という形で相談が持ち込まれます。
  
  消費者は業者の債務不履行(破産の場合は履行不能)を理由に契約を解除して
クレジット会社にはそれを支払停止の抗弁事由とすることが出来ます。  
契約の解除といっても継続的契約ですから、遡及効がない解約の意味になります。
                      
  内職商法の解約では、業者の責めに帰すべき債務不履行を理由に解約するのです
から、消費者主導の清算方法を仕掛けることが可能となります。
先の例で具体的に述べますと、パソコン教材は返還しない代わりに既払いクレジット
代金の返還もしないというものです。

  業者はパソコン教材を60万円前後の値段(クレジット総額では80万円位)で販売して
います。 既払いクレジット代金が30万円あったとしてその返還を求めないということは、
パソコン教材の代金とそれまで受けた技能講習の料金の合計を30万円と評価して
相殺したのと同じことになります。

  これが民法第505条の相殺に当たるかといえば微妙ですが、内職商法の清算方法
としてはこれ以上の方法が考えられません。
これまでクレジット会社から異議が出されたたこともありませんから、クレジット会社が
了承出来る範囲内の清算方法なのだろうと思っている次第です。


  ※ ご感想・ご意見をお寄せ下さい。
      →メールアドレス
::redume@jcom.home.ne.jp




    発行者  :  行政書士 田中 明 事務所
  〒239-0822  神奈川県横須賀市浦賀5丁目42番11号    
                   TEL・FAX   046−843−6976
    マガジン説明用Webページ : http://lantana.parfe.jp/break1.html
     内容証明郵便でブレイク! : http://lantana.parfe.jp/   
    インターネット法務支援室  : http://lantana.parfe.jp/seotope.html
-------------------------------------------------------------------
  このメールマガジンは、『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ を利用して発行
 しています。解除は http://www.mag2.com/m/0000113282.htm