職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第62号
         [ 旧タイトル  内容証明郵便でブレイク! ]
                平成20年11月25日発行
    職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。

              今回の目次
        □ 連帯保証契約と動機の錯誤 その1
        □ 泣く連帯保証人の伝統的見解



   □ 連帯保証契約と動機の錯誤

  最近、当事務所によく来る相談にこんなのがあります。
「債務者に懇願されて連帯保証人になったら、債務者が1年〜3年で自己破産した。 
私は債務者に騙されていた。 連帯保証契約の無効を主張出来ますか」

  こんな短期間で自己破産になるということは、債務者が連帯保証人を依頼して来た
当時から既に経済的に破綻寸前の状態(借金の返済の為にまた借りるという自転車
操業状態)にあったと考えるのが自然です。

  そうとも知らない連帯保証人は自己破産の一時的な先延ばしの為に利用されたよう
なものです。  債務者が最初から自己破産を計画して借金の肩代わりを連帯保証人
にさせようと考えていたのなら、債務者の行為には限りなく詐欺に近いものがあります。
                     
 債務者は連帯保証人を依頼する際、台所が火の車であることを一切包み隠して、
「迷惑は絶対掛けませんから大丈夫です」などと云って安心させるのが普通です。
                          
  そももそ連帯保証人になるということは、重い責任を負担するのみでそれから得る
利益は何もありません。 その意味では無償の慈善行為なのです。 

 連帯保証人を騙した債務者が自己破産・免責により債務を免れて、無償の慈善行為
をした連帯保証人に回収不能のリスクを被せるというのは、余りにも理不尽な話という
べきです。  一方、金融機関は調査義務を尽くしていればこんな融資は回避出来た
筈であり、その点で契約締結上の過失(注意義務違反)があったと云えます。
                          
  そんな連帯保証人を救済する判例がここにあります。
東京高裁平成17年8月10日判決がそれです。  

 判決では、「短期間で倒産に至る程の破綻状態にはないと信じたことに動機の錯誤
あり、動機は黙示的に表示されているとし、要素の錯誤により連帯保証契約は無効」と
判示しています。

  また、「信用金庫は債務者の破綻状態を容易に知り得る立場にあり、 2500万円を
融資したところで借入金の返済には追いつかず、早晩破綻必至の状況であることは
分かったはずである」としています。

     □ 泣く連帯保証人の伝統的見解

  東京高裁平成17年8月10日判決は有力な学者の賛同を得ており、泣く連帯保証人
に関する伝統的見解に風穴を開けたと云えます。

  これまで、連帯保証人が債務者の支払能力を誤信していた場合、連帯保証契約の
錯誤無効が裁判で通ることは殆どなく、いつしか裁判官の間で泣く連帯保証人と呼ば
れるようになっていたのです。
 泣く連帯保証人の問題については、私の下記サイトをご参照下さい。
              泣かない連帯保証人になる方法

  昔、我妻栄という有名な民法の大学者がいましたが、
その著書「新訂債権総論」(1964年)にはこう書かれています。

「・・・・保証人と主債務者との間の事情は保証債務の内容に直接の影響を及ぼすもの
ではない。 主債務者に請願されて保証人となる場合が多いとはいえ、委託が無効でも
当然には保証契約の効力に影響はない。 

  また、主債務者が保証人を委託する際に、主債務について虚偽の事実を告げ、保証人
がこれを信じて保証契約を締結した場合にも、一般には、詐欺としては第三者の詐欺と
なり、錯誤としては単なる動機の錯誤となり、保証契約の効力には影響を及ぼさない」
                         
  これこそ法曹界でずっと支配的だった伝統的見解です。 裁判官も大学教授も弁護士
も我妻さんの本で民法を勉強していますから、この見解を当たり前と思っていたのです。

  しかし、今やっと我妻民法の呪縛から解き放たれようとしています。
民法第96条2項の第三者の詐欺を補完するものとしてある消費者契約法第5条(受託者等)
を我妻さんが知ったらどう思うでしょうか・・・・・。

  債務者に騙されて無償の慈善行為をした泣く連帯保証人の救済を図るべく、
我妻説という伝統的見解を振り切る狼煙を高らかに上げたのが、
東京高裁平成17年8月10日判決だったのです。

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