内容証明郵便でブレイク !  第59号
              平成20年9月26日発行

              今回の目次
        □ 故意による不利益事実の不告知
        □ 不利益事実の判断基準



   □ 故意による不利益事実の不告知

 業者が消費者に契約の締結を勧誘する際、
消費者に有利な事実を告げ、かつ故意に不利益事実を告知しなかった場合、
消費者は契約を取消すことが出来ます(消費者契約法第4条第2項)。

 さて、これはどういうケースに一体当て嵌まるのでしょうか。
消費者契約法で取消権が発生する他の3つタイプ(不実の告知、判定的判断、
不退去)に比べて、一番分かりにくく判例の蓄積も進んでいないがこのタイプです。
                        
 どの本にも載っている例としては、次のマンション販売のケースがあります。
業者が「眺望・日当たりは良好です」とのみ説明し、隣接地に眺望や日照をほとんど
遮るビルが半年後に建設予定であることを認識しながら告げなかったケースです。
                      
 「眺望・日当たりは良好です」というのは消費者に有利な事実であり、
半年後に眺望や日照を遮るビルが建設予定は不利益な事実であり、 
業者はその不利益事実を知っていながら告げていないのですから、故意になります。
                      
 故意による不利益事実の不告知が成立する条件は、
それに先行して業者が先に有利な事実を告げていることです。

 では、一体どんなケースが他に当て嵌まるのでしょうか。
内閣府や経企庁などの資料に拠れば、次のケースが挙げられています。

・ 品質がよくないが故に価格が安い商品の販売時
  → 価格が安いことは告げたが、品質がよくないことは告げなかった場合
・ 自然環境のよさをアピールした住宅の売買契約時   
  → 当該消費者が杉花粉症のアレルギーをもっていた場合、自然環境がよく
    杉花粉が多く舞っている事実は不利益事実にあたる。 よって、
    当該消費者に杉花粉が多く舞う事実を告げないと不告知になる。
・ 健康食品の販売時
  →「この食品を毎日摂れば免疫力が数倍アップする」と告げて、含有され
   ている成分から胃腸障害などが出ることがあると知りながら説明しなかった場合
・ 生命保険の転換を勧誘する際
  →転換後の契約の有利性のみを強調して、転換後に保障額が減る場合が
   あることを知りながら告げない場合
・ 俳優等の養成所の入所契約締結時
  →3ヶ月後から月謝が値上げされることを知りながら告知しなかった場合
          (神戸簡裁平成14年3月12日判決)

    □ 不利益事実の判断基準

  消費者契約法第4条第2項には、「・・・当該重要事項について当該消費者
不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべき
ものに限る。)とあります。 

  ここは条文を幾ら眺めていてもよく分からないところだと思います。
立法当事者の解説によれば、次のようになります。

  まず、「当該消費者の不利益」ですが、この不利益とは経済的な不利益に限られず、
広く消費者が望まない状態が含まれるとされます。 
  そして、何が不利益かの判断基準は、当該消費者の主観になります。 
つまり、業者が今契約しようとしているその消費者が不利益と感じることです。
                       ж

  次に、(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに
限る。)の意味です。
 ここでは当該消費者ではなくて、ただの「消費者」となっていますから
一般消費者の判断を基準にしています。

  どういうことかと言いますと、その不利益は
先行行為として業者から利益となる事実を告知されることで、
一般消費者なら通常こんな不利益は存在しないと考えるような不利益に限ります
ということなのです。

  結局、当該消費者の主観を基準にすると範囲が広くなり過ぎる恐れがあるので
一般消費者の判断基準を入れて歯止めを懸けたです。
  なお、この括弧書については、消費者契約法の趣旨から制限的に解されるべきという
見解も有力です。
 
 実際どんな事例に適用されるのか、早く判例の蓄積を見たいと思うのは
私だけではないと思います。

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