職人型内容証明仕掛人の方法論 !  第175号        
                 令和4年7月22日
     職人型内容証明仕掛人が一発解決を目差す合法的仕掛け作りのノウハウ。
 
                   今回の目次
           □
 意思能力と事理弁識能力について


  民法3条の2は、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しな
ったとき
は、その法律行為は、無効とする」(平成29年改正で新設)と規定しています。

  また、同法7条は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあ
る者について、家庭裁判所は・・・・・・後見開始の審判を為すことを得」と規定し
ています。

  この意思能力と事理弁識能力はどう違うのかを、以下で整理します。


  民法の基本理念である私的自治の原則は、当事者が行為の時に意思能力を有
することを大前提にする原則です。
 それは余りに自明なことであった為、平成29年までは明文化されておらず、
判例で次のような法理論として確立されていました。  

「自己の意思に基づいて構築された権利義務関係は法的に保護されるが、意思能
力(精神能力)が自己の行為の結果を判断出来ない程に低下していた時(つまり、意
思能力を有しない時)は、意思表示の法的効力は無効である」

 
  つまり、意思表示の時に意思能力を有することが、契約などの法律行為の有効要
件だということです。

  意思能力の有無は、事案ごとに個別に判断されますが、一般的には10歳未満の
幼児、泥酔者、重度の精神病や認知症の人は意思能力を有しないとされます。



  次に、事理弁識能力は、行為能力制度(制限行為能力者制度)の中で使用されて
いる概念で、私的自治の原則に基礎を置く意思能力とは別の概念です。

  行為能力制度は、判断力(事理弁識能力)が十分でない者(制限行為能力者)をそ
の原因や程度により予め類型化し、保護者(法定代理人)の同意なしにした法律行
為の取消を可能(成年被後見人の行為は同意があっても取消可能)とした制度です。


  つまり、行為能力制度とは、行為能力(単独で有効な法律行為をなし得る能力)が
不十分とされた者の法律行為を制限し、かつ事後における行為能力欠如の立証を
容易にして、本人と法定代理人の同意権・取消権により制限行為能力者の保護を
図った制度な
のです。

  民法が定める制限行為能力者は、未成年者(令和4年 4月 1日以降は18歳未満)、
成年被後見人、被保佐人、同意権付与の審判を受けた被補助人を云います。

  法定代理人になれる人は、未成年者の場合は親権者であり、、制限行為能力者
の場合は、成年後見制度に基づき家裁が選任する後見人、保佐人、補助人に限
られています。

 
  まとめますと、

  「意思能力」は、法律行為の結果を弁識するに足る能力、つまり意味理解能力の
ことで、裁判では意思能力の有無が実質的観点から判断されることになります。


  これに対して、「事理弁識能力」は、知的能力・日常的な事柄を理解する能力・
社会的適応能力を総合した判断能力、つまり合理的判断能力のことで、裁判では
取消し得る行為に該当するか否かが形式的観点から判断されることになります。

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